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昼下がり

タイトル:(仮)昼下がり

▼登場人物
●メアリー・チャンドラー:女性。36歳。クリスチャン。一般的な専業主婦。本編では「メアリー」と記載。
●デビット・チャンドラー:男性。40歳。メアリーの夫。真面目な人物。
●マチルダ:女性。36歳。メアリーの友達。一般的なイメージでOK。
●ゴリオン・ペーシー:男性。40歳。メアリーの幼馴染。エルマと浮気する。
●ピーター牧師:男性。50歳。カトリックキリスト教会の牧師。善良を絵に描いた様な人物。
●エルマ:女性。44歳。ピーター牧師の妻(のちに失踪)。ゴリオンと浮気する。
●警察1:男性。50代。一般的な警察のイメージで。
●警察2:男性。40代。一般的な警察のイメージで。
●ゼラフ:男性。48歳。強盗の常習犯。野蛮な印象で。

▼場所設定
●メアリー宅:一般的な民家のイメージでOKです。
●町中:教会を含め何となく西部劇にある様な舞台を想定してます。

NAはメアリー・チャンドラーでよろしくお願い致します。

イントロ〜

あなたは、誰かに罪の告白をした事がありますか?
キリスト教区でよく聞かれる懺悔の事ですが、
それをした人はおそらく少ないのではないでしょうか。
もちろん自分の心の中で悔い改め、
自分がどれほど罪深い生き物なのか?
それについて吟味する事はあると思います。
でもその罪を他人に告白すると言うその事は
まるで中世の書物に収められた
1つの幻想のように思ってないでしょうか?
まぁ戯れです。
今回はその事で悩み、越えてはならない一線を踏み越えてしまった
或る人にまつわる自然のエピソード。

メインシナリオ〜

私の名前はメアリー。
この町にもう長く住んでいる、36歳になる専業主婦。

夫のデビットは家計を支える為に一生懸命働き、
私も愛するその夫の為家事を毎日こなす。
そんな日常の生活に、ある日、事件が起きた。

メアリー「え?それホントなの?」

デビット「ああ。よくは知らないが、周りの噂でね」

メアリー「まさかゴリオンさんがそんな…」

ゴリオン・ペーシーとは、
子供の頃からずっと一緒に育ってきた幼馴染のような人。
彼はこれまで真面目に生きてきて、
ただ堅実で信仰の厚い人だと称えられていた。
その彼が良からぬ事…いわゆる不倫をしていたと夫は言う。

メアリー「…そんな事、信じられないわ」

デビット「ああ、俺もまだ信じてないよ。彼がそんな事をするなんてね」

でも私とデビットの期待とは裏腹に、
その噂はだんだん現実味を帯び始めて来た。

ト書き〈別日〉

メアリー「本当に彼がそんな事を…」

マチルダ「ええ、そうらしいわ。エルマさんと一緒によく居るところを沢山の人に見られてるみたい」

メアリー「私は見た事がないのに…?」

マチルダ「そりゃあなたはずっと家に居るからよ。一歩外に出たらいろんな事が起きてるわ」

メアリー「…まさに、家の外では剣(つるぎ)の勢い漲り溢れ…か」

私の知らない所でいろんな事が起きている。
その言葉は心に刺さった。

そして事件は起きた。

ト書き〈警察の捜査〉

警察1「はい下がって、入らないように」

幼馴染で育ったあのゴリオンが殺されたのだ。

メアリー「私、彼の友達なんです!」

警察1「駄目です!まだ捜査が終わってません。下がって下さい」

メアリー「ゴリオン…」

デビット「今の俺達にはどうする事もできないんだ。帰ろう」

なんで殺されたのか?
やっぱりあの噂が引き金になっているのか?
まだよく分からない。
でもその殺され方で、男の仕業ではないか?
…と言う見立てだけは立てられていた。

ト書き〈教会〉

毎週日曜日、私達は教会へ行く。
そんなある日の日曜日の昼。
夫は先に帰ったが私は教会に残り、
それからゴリオンの事で神様にお祈りをした。

メアリー「…彼がどうか今、安らかでありますように…」

していると背後に人の気配がし…

ピーター牧師「やぁメアリーさん、お邪魔だったかな?」

メアリー「あ、いえ、大丈夫です」

ピーター牧師が私のそばに来てくれて一緒に祈ってくれた。

ピーター牧師「ゴリオンさん。彼は本当に気の毒でした。あんな事になってしまうなんて」

小さな町ながら、事件の噂が広まるのも早い。

メアリー「ええ」

ピーター牧師「大丈夫ですか?」

メアリー「ええ、大丈夫です。…でもやっぱり、彼のような人が居なくなると…」

ピーター牧師「お気持ちはよく分かりますよ。…私も昔に近しい友人を亡くした事があります。その時もおそらく今のあなたと同じような気持ちで神に祈って居たでしょう。彼の魂がいま神の御許に帰り、安らかである事を祈っております」

メアリー「…有難うございます」

やっぱり幾らお祈りしても気分は晴れない。
悲しみと寂しさが私の心を苛んだ。

ト書き〈第2の事件〉

そして、それから僅か数日後の事。
また新しい事件がこの町に起きた。

ベラフ「イイからありったけの食料を持って来い!それから逃走用の車もだ!」

警察「ベラフ!お前は既に包囲されている!諦めて人質を解放し大人しく出てこい!」

ベラフ「うるせえ!なんでテメエの指図なんか受けなきゃならねえんだ!?テメエは黙って俺の言う通りにすりゃイイんだよ!さもなくばコイツを殺すぞ!」

ベラフという盗賊の男が教会に立て篭もり、
ピーター牧師を人質に取って私達を脅した。
ベラフはデリンジャーと呼ばれる隠し易い拳銃と、
ゴルフバッグに忍ばせた散弾銃を持って居た。

メアリー「あんなバッグを持っていた時点で怪しむべきだったのに…」

全ては後の祭り。

教会は既に警察に包囲されている。
ゼラフに逃げる余地はない。
でも盗賊である彼はそれでも諦めず、
必ずこの窮地を脱すると奮闘していた。

その奮闘が警察を更に煽る形で状況はヒートしてゆく。
警察は絶対ゼラフを許さない。逃さない。
でもその真面目かつ健気な努力が裏目に出た。

銃声「バアン!!」

メアリー「きゃあ!」

ピーター牧師「ぐふっ!」

ゼラフは遂にピーター牧師を撃ってしまった。

警察1「クソッ!」

警察2「もう時間がありません!一か八かで踏み込みましょう!」

撃たれた場所は太腿辺りだったが出血がひどく、
遠目から見てもその惨状の有り様はよく分かった。

メアリー「ピ、ピーター牧師…!」

警察は遂に踏み込んだ。

ゼラフ「クソウッ!テメエら正気なのか!?」

ゼラフは次にピーター牧師をまた撃とうとしたが
一瞬の隙を突かれ警察の銃声のほうが早く、
「グハッ!」といった感じにゼラフはその場に倒れた。

その直後、ピーター牧師は何を思ったか、
まだ拳銃を持ってるゼラフのそばへ駆け寄り、
床に倒れたゼラフの上半身を優しく抱え、抱き締めるように抱擁した。

警察「ピーター牧師!危ないですから早く逃げて!彼はまだ銃を持ってます!」

でも牧師は逃げず、ゼラフの顔をじっと見つめてその場に留まる。

ゼラフ「ク…クソ、胸をやられちまった…」

ピーター牧師「動かないで。応急手当てをすれば助かる」

ゼラフ「おい…俺はまだ諦めた訳じゃないぜ…。銃だってまだ俺の右手にちゃんとある…」

警察「下がって!!牧師、逃げるんだ!!」

ピーター牧師「…」

ゼラフ「…フ、フフ…なんだオメェ、逃げねぇのか?…お利口さんだな。今から俺は起き上がってもう1度お前を人質に取る、そして逃げる算段を奴らにつけて、ここから見事立ち去ってやる…そう考えてるかもしれねえんだぜ?」

ピーター牧師「…」

ゼラフ「おい、何とか言ったらどうなんだ!ハァハァ…クソ、苦しくなってきやがった…」

その時もう1度銃声が鳴り、ゼラフの脇腹をとらえた。
警察には凄腕の狙撃手でも居たんだろう。

その様子を見ているとゼラフは更に窮地に陥り、
その場で即死寸前の状態になっていた。
彼の右手からはもう銃が散らばったように向こうに落ちて、丸腰状態。
その様子を見て警察も野次馬達も2人のそばに少し寄った。

その日は静かな日曜日であり、
そうして近づいたから2人の会話も聞き取れた。

ゼラフ「ハァハァ、ぼ、牧師さん…お、俺はきっと地獄に落ちるんだろう…でも嫌だ…俺の人生、本当に何もイイ事がなかった…ハァハァ…こんな馬鹿な事をしたのもそのせいなんだ…今日の生活、明日の生活が苦しくて…」

警察1「ピーター牧師!そいつから離れるんだ!」

警察2「ゼラフ!牧師から手を放せ!!」

その言葉が少しゼラフを活気づけ…

ゼラフ「グ…グフフ…!おい牧師、俺はまたお前を撃つぜ…!」

と言った。
でもそれを聞いた牧師は…

ピーター牧師「いや、君は撃たないよ…」

と言った。

ゼラフ「ハァハァ…ハァハァ…な…ぜだ…?俺がお前の隣人だからか…?」

そう言って亡くなった。

撃たれているのに「君は撃たない」と言う。
牧師という職業に就く人の愛情の深さが分かった。
改めて思い知らされた形だ。

ト書き〈数ヶ月後〉

それから数ヶ月後。
ピーター牧師はあれから回復し、
今では又ちゃんと牧師の仕事を全うする事ができている。

メアリー「よかった」

私は心の中で彼の生還を本当にお祝いしていた。
無事でよかった…この時ほどそう思った事は無いかもしれない。

(礼拝メッセージ)

ピーター牧師「…人は皆、罪人です。神の前では皆全てが等しく、同じ兄弟姉妹として愛し合い、その生活を支え合っていかなければなりません…」

いつもの無難なピーター牧師のメッセージだが、
その日は有難く思えた。

でもそうしていた時、
あのゴリオンが殺された事件の捜査が私達の身近に迫ってきたのだ。

ゴリオンが殺されたのはかなり前の事のように思える。
でも人の罪が消えないのと同じく、
その事件が無くなる事は絶対にない。

(逮捕)

警察1「ピーター牧師、あなたを逮捕します。殺人容疑です」

ピーター牧師「…」

警察2「…我々は悲しい。まさかあなたが…」

メアリー「どうして…」

デビット「ピーター牧師…」

それから後日、その真相が私達にも伝えられた。

ゴリオンが浮気していたその相手はエルマ。
そのエルマはあのピーター牧師の妻だった。

それからゴリオンは罪の意識にどうでも苛まれ、
懺悔せずには居れなくなり、ピーター牧師の元へ行ったのだ。

ゴリオン「わ…私は、本当に欲深い罪人です。いっときの過ち…あれがこんなに罪深いものだったとは…本当にいつも、あとになってから気づくんです。私の人生は、これまで人には言いませんでしたが、実はそんな事の繰り返しだったんです…」

おそらくゴリオンはその時そう言って、
自分の浮気相手がエルマだった事、その彼女とどんな事をしてきたか…
それを時系列に沿って事細かく告白したのだろうか。

実はゴリオンは1度この街を出て、遠くの地方で暮らしていた。
それから数年が経ち、事業の失敗で又この街へ戻り、
新しく第2の人生を始めようとしていたところ。

でもその間に奥さんは子供を連れて逃げてしまい、
彼もそれなりに辛い目に遭っていた。
その過ちが起きたのは、おそらくそんな土台があったから…?

そしてピーター牧師がこの街を教区として赴任したのは
丁度ゴリオンが居ない時だった。
だからエルマがピーター牧師の妻だった事を
おそらく越して来たばかりのゴリオンは知らなかったんだろう。

それをどうでも許せない恨みに持ってしまったピーターは、
エルマがそうして失踪した後、それなりの虚無にもおそらく駆られ、
訳が分からなくなって彼を殺した。

でも、何がどうあっても罪は罪。

ピーター牧師はそれから法に裁かれ、服役囚になってしまった。

エルマが失踪した理由もおそらく、
元夫の前には戻れないとした罪の意識。
きっと神様の下(もと)で過ちに身を染めた自分は
牧師夫人で居られる資格は無いと自分で決めてしまい、
既に彼女の中では離婚を決意していたのだろう。
そう決めた以上、もうそこに留まる必要もないと。

動画はこちら(^^♪
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