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更生の美酒

タイトル:更生の美酒

▼登場人物
●クラーク:男性。36歳。最近までムショに入ってた服役囚。保釈で出て来る。銃犯罪の前科あり。
●ダーバル:男性。35歳。クラークのムショ仲間。同じく銃犯罪で捕まり保釈。
●コルド:男性。28歳。クラークのムショ仲間。同じく銃犯罪で捕まり保釈。
●警察1~2:共に男性。30代。一般的な警察官のイメージでOK。
●スタン刑事とサム刑事:共に男性。共に40代。クラークを逮捕した2人。

▼場所設定
●街中:一般的なマンハッタンの街並みのイメージでOKです。墓は人目の無い場所。
●酒場:少し陰気な感じの漂うカクテルバー。場末感あり。クラークの行きつけ。

(※)ここで言う「保釈」とは仮釈放の事)

メインシナリオ~

ト書き〈酒場〉

俺の名前はクラーク。
つい最近までムショに入ってて、保釈が認められ、やっと出てきたばかり。
保釈中と言うのも厄介なもの。
自分の居場所は必ず担当の警察官に報告し、常に奴らの目が見張ってる中で生活しなきゃならない。

これも運命だと諦める奴らも居るだろうが、俺はどうにも我慢できない。
自分がしでかした事への罪悪感は確かにあるが、どうにもこうにも…。

俺が捕まったのは銃犯罪。アメリカでは日常茶飯事のように起こってるこの銃犯罪だが、
捕まればそれなりの刑期を科され、ツライところを通って来なきゃならない。
服役囚にとっては当たり前の事。

「1番ツライのはお前らに殺された被害者だ!」と散々警官や被害者遺族・身内の奴らからも罵倒されるが、まぁその通りだろう。

それがわかってやってんだから、本来、
俺たちのような人種は救いようのない奴らばかりだ。

ト書き〈奇妙?〉

でも最近になり、ここ界隈で奇妙な事が起き始めた。
俺と同じような保釈中の奴らが、どんどん再犯で同じ罪を繰り返していくのだ。
つまり自分が捕まったのと同じ犯罪を繰り返し、
シャバとムショを出たり入ったりしてやがる。

奴らの犯罪はみんな銃犯罪。
つまり俺と同じで、一瞬で人を殺せることから逃れる余地なく、
証拠を突き付けられたらそれでお手上げに近い。

(取り調べ)

ダーバル「いや、ほんとに分からないんです!眠ってたようで、起きたら横に銃があって、そして目の前に死体が…」

警察1「飲んでたそうだな?」

ダーバル「え、ええ。でもほんの2杯か3杯軽く引っかけただけなんですよ!」

警察2「2杯や3杯でも度がキツければ立派に酔える。それにその日の調子によって体質の問題もある」

ダーバル「だ、だけど…」

俺のムショ仲間だったダーバルって奴も
保釈中に同じ犯罪を繰り返し、捕まっちまった。
あいつは更生を夢見ていたのにちょっと信じられなかったが、
まぁもともと罪人の人間。そういう事もあるんだろう。

でもそれからどんどんその奇妙な再犯事件が繰り返された。
僅か2週間で10件に上る程、更生を願って釈放された奴らが同じ犯罪を繰り返すとはどうも奇妙だ。

コルド「スタン刑事、助けて下さい。俺は本当にやってないんだ!その記憶がまるで無くて」

スタン刑事「犯人は誰でもそう言うからなぁ」

コルド「違いますよ!」

サム刑事「どうしてあんな事やったんだ。お前はムショの中でも模範囚として認められ、更生をあれほど願い、将来に夢まで持っていたのに」

また捕まった。僅かこの5日で今度は11件に上る。

ト書き〈転機〉

まぁそれでも俺は俺で自分の生活を守らなきゃならねぇと、
保釈中のこの期間を大事に過ごし、めったな事で自分のボロを出さねぇように気をつけていた。

俺はその日、ショッピングモールに居た。
するとスタン刑事とサム刑事が揃ってやって来た。
奴らにとりあえず俺の行き場所を教えておいたから、その俺の様子を見にこいつらは来たんだ。全く暇な奴らだぜ。

スタン刑事「今日の晩飯はローストビーフかい?結構買い込んでるな」

クラーク「ええ、まぁ」

サム刑事「お前だけはあんな事してくれるなよ?せっかく我々が更生に導こうと努力したって、同じこと繰り返されたんじゃ元の木阿弥だ」

クラーク「ハハ、大丈夫ですよ。俺には自分の酒場を開くって夢があるんだから」

スタン刑事「少し前に銃犯罪で捕まった奴のセリフとは思えんな」

クラーク「やめてくださいよw人は成長するもんなんです」

スタン刑事「ああ、そうらしい」

そこで一旦別れて俺は最寄りの酒場へ飲みに行った。行きつけの場所だ。

するとその日の仕事を終えたサム刑事がそこへやって来た。

クラーク「(チッ、どこまでも追い駆けて来やがって。本当に鬱陶しい奴らだ)」

そんな事をブツブツ思ってると奴は俺のほうに気づき…

サム刑事「やぁここに居たのかい?やっと長らくのパトロールから解放されて至福の時だよ」

とニコやかに話しかけてきやがる。

クラーク「悪いが俺1人で飲みたいんだ。プライベートにまで土足でサツに入られちゃかなわん」

そう言ってやるとヤツは…

サム刑事「おぉ、こりゃ失敬。そうだ、お前はもう服役囚じゃないんだからな。悪かった。どうもいつもの癖が出ちまうんだろう。でもまぁせっかく来たんだから、一杯ぐらい奢らせてくれよ。お前の更生を祈ってな」

ト書き〈再犯〉

俺もやられちまった。
次に気づくと俺は墓場の前に寝ており、目の前には銃、
そしてズタズタに引き裂かれた死体が置かれてあった。どうも女の死体だ。

そう言えば思い出した。
同じようにして捕まった保釈中だったあいつらは、
「こんな人の体を切り刻むような趣味は持ち合わせてねえよ!」
とどいつもこいつも叫んでやがった。
そこに何かあると思うべきだったんだ。

確かに奴らは銃犯罪を起こしたが、ジャック・ザ・リッパーのような性質を持ち合わせた奴は1人も居なかった。

この状況は、俺が犯罪を起こしたあの時と同じ光景。
俺の場合は復讐劇で、俺をハメようとした奴を逆に返り討ちにしてやったもの。

俺がやった奴も同じく犯罪者であり、マフィアの手先共。
1人は男で1人は女。
あの事件を模倣するなら、その女1人の死体はもう目の前にある。
次はきっと、見ず知らずのどこかから連れてきた男の死体がやって来る。

と思って居たら案の定。

眠る振りをしていた俺の目の前で、
見慣れた男が男の死体を引きずって来て目の前に置き、
懐から取り出したサバイバルナイフのような物でズタズタ引き裂き出した。

「アイツが奢る酒など誰が飲んでやるか!」と、
アイツの目に隠れて床にこぼしていたのが幸いだった。
おそらく酒に、睡眠薬でも入れて居たんだろう。
これで全ての辻褄が合ってきた。犯人は奴だ。
更生の美酒を、全部飲み干して居たらヤバかった。

動画はこちら(^^♪
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