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働きアリ

タイトル:(仮)働きアリ

▼登場人物
●畑利(はたり)アキラ:男性。45歳。独身サラリーマン。仕事が生き甲斐。でも休みたかった。
●上司:男性。60代。アキラの会社の上司。少し強面のイメージで。
●横田敏夫(よこた としお):男性。45歳。アキラの同僚でライバル。本編では「横田」と記載。
●主治医:男性。60歳。アキラの精神病院での主治医。少し怪しいイメージでOKです。
●宗理佳奈恵(そうり かなえ):女性。30~40代。アキラの本能と欲望から生まれた生霊。

▼場所設定
●某金融業者:アキラ達が働いている。いわゆる貸付がメインの仕事。営業に厳しいイメージ。
●カクテルバー:会社帰りにあるお洒落なカクテルバー。アキラと佳奈恵の行きつけ。
●精神病院:都内から少し外れた郊外にある一般的なイメージで。

▼アイテム
●Worker Ant Drink:佳奈恵がアキラに勧める特製の液体薬。これを飲むとその人の本能が活性化され、本当にやりたい事だけをして自分の幸せだけを求めるようになる(この辺りはニュアンスで描いてます)。

NAは畑利アキラでよろしくお願い致します。

イントロ〜

あなたは働く事が好きですか?
それともずっと休む事が好きですか?
まぁ人間どちらもバランスが取れてなければ
精神を病んでしまうこともあり、やがては元あるべき道へ戻ろう…
なんてそれまでの生活を改める事になり、
そんな時に又「自分らしさを取り戻す」という言葉も生まれてくるのでしょう。
でもこの現実は、人間には不向きに出来ているかもしれません。
今回はそんな事で密かに悩み続けた
ある男性にまつわる不思議なお話。

メインシナリオ〜

ト書き〈会社〉

上司「おぉ〜畑利くん!君の今月の営業成績は抜群だったなぁ!すばらしい!その調子で今後もどんどん頼むよ!」

アキラ「はっ、有難うございます!お褒めに預かり恐縮です!」

俺の名前は畑利(はたり)アキラ。
今年45歳になる独身サラリーマン。
仕事は営業で、今月も月間最優秀賞を取ったばかり。

そう、俺は仕事に燃える男で、働く事こそ生き甲斐をモットーにした、
サラリーマンの鑑のようなヤツだった。

横田「チッ、今月もお前うまくやりやがったなぁ。一体どうやって契約とってきてんだよ?」

アキラ「ふっ、まぁ実力だよ実力。お前も努力してるみたいだけど、お前と俺とじゃ結局腕が違うんだよ」

横田「ったくよぉ、働きアリってのはホント、お前の為にあるような言葉だなぁ」

こいつは横田と言って俺の会社の同僚。
こいつも結構仕事ができたがまぁ俺には敵わない。
今月も散々こいつに俺の実力を自慢し、嫌味も言ってやり、
なかなか充実した毎日だった。

ト書き〈カクテルバー〉

そんなある日の帰り道。
俺は久しぶりに飲みに行くことにして、
いつもの飲み屋街、そこにあったカクテルバーに駆け込んだ。

アキラ「ふぅ。ちょっと疲れたなぁ。今日はゆっくり1人で飲むか」

いつになく少し疲れていた俺。
まぁ働きづめで働いて、こうなるのも無理は無い。

そうして暫くすると…

佳奈恵「フフ、こんばんは。お1人ですか?もしよければご一緒しませんか?」

と1人の女性が声をかけてきた。
見ると結構な美人で、
俺は別に断る理由もなかったので隣の席をあけ、彼女を迎えた。

彼女の名前は宗理佳奈恵(そうり かなえ)さんと言って、
都内で就職コンサルタントやメンタルヒーラーの仕事をしていると言う。

そのせいでか、彼女の周りには何となく
独特のオーラのようなものがあり、一緒に居ると心が和み始め、
なんだか俺は自分の悩みを彼女に打ち明けたくなってしまった。

それだけじゃなく、
「昔どこかでいちど会った事のある人?」
のような印象も漂ってきて、身内感覚になり、
かなり美人な彼女だったのに
不思議と恋愛感情が1つも湧かないのである。

佳奈恵「なるほど。今の仕事に少し疲れているんですね?」

アキラ「え、ええ。まぁ『仕事が生き甲斐』とこれまでやってきて、働いてる時こそ本来の自分だ!なんて思って一生懸命努力してきたんですけど、やっぱり少し疲れました」

佳奈恵「フフ、働きづめに働けば疲れるのが当たり前です。分かりました。ここでこうしてお会いできたのも何かのご縁です。私が少しご協力差し上げましょうか?」

アキラ「え?」

そう言って彼女は持っていたバッグの中から
栄養ドリンクのようなものを1本取り出し、
それを俺に勧めてきてこう言った。

佳奈恵「こちらをどうぞ。ぜひお飲み下さい」

アキラ「『Worker Ant Drink』??」

佳奈恵「ええ。その『Worker Ant Drink』というのは特にサラリーマンの方にとって特別な効果を発揮するお薬で、それを飲めばあなたは疲れを知らず、更に仕事の成果をあげる事もでき、夜はぐっすり快眠できて日々の生活にまたメリハリが返ってくる事でしょう」

佳奈恵「あなたは確かさっき45歳と言われてましたが、そんな仕事仕事の毎日で疲れ込んでしまうより、プライベートもちゃんと充実させて、お嫁さんの1人でも貰うのがホントの幸せじゃないですか?」

アキラ「え?ま、まぁ…そりゃあ…」

佳奈恵「フフ、まぁ騙されたと思って、いちど試してみて下さい。私の言った事が本当だと分かるでしょう。あなたは仕事の成果を上げる事ができ、疲れを知らず、毎日の生活をもっと快適に過ごす事ができる…必ずそうなります…」

やはり彼女は不思議な人だった。

他の人に言われても絶対信じない事でも、
彼女に言われるとその気にさせられ信じてしまう。
俺はその場でドリンクを一気に飲み干し、店を出た。

ト書き〈翌日から数日間〉

そしてその翌日から数日間。
俺は本当に変わっていた。

彼女が言った通り仕事は更にバリバリできて、
夜はぐっすり休む事もでき、毎日が本当に快適だった。

アキラ「それじゃあ行ってきま〜す!」

上司「おうおう、元気だなあ今日も!…全くあいつはほんとサラリーマンの鑑のようなやつだなぁ。おい、皆も畑利くんを見習ってくれたまえよ!」

社員「はい!」

横田「ったくアイツ、ますます調子に乗っちゃって」(憎まれ口を叩く感じで)

俺はその日も契約をバンバン取ってきて、
その度に上司からも褒められ、更にやる気が出てきて、
そんな感じのルーティンが数日間続く。

そして夜はぐっすり快眠でき、
また次の日、同じように仕事を繰り返す。
本当に楽しさと生き甲斐ばかりの毎日だった。

アキラ「ぐふふ♪これもあの佳奈恵さんのお陰だなぁ〜♪あのドリンクの効果、本当にあったんだ!」

俺は心から彼女に感謝していた。

ト書き〈トラブル〉

でもそれからまた数日して会社に行った時、トラブルが起きた。

上司「おい!畑利くん!」

アキラ「あ、はい!?な、何でしょう!?」

上司「何でしょうじゃないよ!君が契約を取った顧客、全員が金を入れてこないじゃないか!!まったくどうなっとるんだね!」

アキラ「え…ええ?!」

上司「利息の入金はおろか、元金返済なんて1つも無いんだよ!!それで顧客の1人1人に電話して確認してみたところ!みんなお金はちゃんと振り込んだ、利息もちゃんと返してる、みたいな事を言ってくるじゃないか!まさかお前、この会社の金を横領してるんじゃないだろうな!!もしそれが本当ならお前を横領罪で警察につき渡すからそのつもりで居ろ!」

信じられない事になっていた。
俺が取ってきた契約の対象顧客が皆、
全く貸し付けた金を入金して居ないと言う。

そう、俺の仕事は金融業で金の貸し付けがメイン。

こんな事はこれまで1度もなかったのもあり、
全く何がどうなってるのか?…それが本当に分からない。

ト書き〈カクテルバー〉

俺も1人1人顧客の所を回ってもう1度確認してみたが、
やっぱり皆「金は払った」「返した」と言う。
その証拠もちゃんとあり、金だけが行方不明になっていた。

これじゃ俺が横領したと疑われるのも無理は無い。
でも俺はそんな事をしていない。
なんとかこのトラブルを解決しなければ!
そんなふうに焦るだけで時間はどんどん過ぎていく。

そんなこんなで俺は少し現実逃避したくなってしまい
またあのカクテルバーへ駆け込んでいた。

すると前と同じ席に座って飲んでる佳奈恵さんを見つけ、
俺はすぐ彼女のもとに駆け寄り、今の悩みを打ち明けていた。
なんだか彼女を見るとそんな衝動が湧くのである。

するとそこで驚くべき事が分かった。

アキラ「ええっ!?そ、それどう言う事です!?」

佳奈恵「ですから言った通りです。あなたが契約を取りに1人1人の所を回っていた時、私も密かにあなたのあとをつけて、その顧客の住所を確認しておきました。そして後日にその顧客のもとへ改めて行き、あなたの会社の社員を装い、私がその利息や元金を頂いたのです。新しい口座を開きましてね。全てはあなたの為。今後のあなたが快適に過ごせるように、その資金を集めさせて頂いたのです」

アキラ「…な、何を言って…」

本当に訳が分からない。
でも今彼女が言った事を確認するとその通りだった。

アキラ「あ、あんたはなんて事してくれたんだ!どう言うつもりでそんな事を!お陰で僕は犯罪者扱いされてるんですよ!!今すぐ、あなたが盗んだお金を返して下さい!いや、返せ!!」

すると彼女は…

佳奈恵「いえ、それは出来ません。言った筈です。今後のあなたの為に私はそのお金を集めておいたのです。言えばこれはあなたの将来の為の積み立て貯金。今後のあなたの事を思えば、これだけの貯金は必ず必要になります」

佳奈恵「それともう1つ。私があなたに約束したのは、仕事での生き甲斐と、その成果を上げる事。2つ共ちゃんと叶えて差し上げたでしょ?あなたはいつも以上に契約を取る事ができ、会社でも上司の人から沢山褒められました。周りの同僚の方もあなたを『サラリーマンの鑑』と崇めたのではないでしょうか?」

アキラ「ふ、ふざけるなあ!!ゴチャゴチャ言ってねえですぐに金を返せ!!今すぐ返さなきゃ、俺がヤバいんだよお!!」(佳奈恵を揺さぶりながら)

佳奈恵「フフフ、いいえ。こうする事があなたにとっての休養と、今後の人生を自分の足で歩き、誰にも邪魔されない牙城を築き上げる事になるのです」

そう言って佳奈恵は俺に揺さぶられながらも、
スッとあげた右手をゆっくり俺の前に持ってきて、
その指をパチンと鳴らした瞬間、俺の意識は飛んでしまった。

ト書き〈精神病院〉

佳奈恵「先生、アキラさんの調子はいかがですか?」

主治医「おお、これは佳奈恵さん。ええ、ええ、いつものように四つん這いになって、部屋中をこそこそ歩き回っておりますよ」

ゴキブリか働きアリのように
病室の床を四つん這いになって這い回っている俺。

主治医「全く彼はずいぶん前から、精神をどうかしてしまってたんでしょうねぇ。何の目的も無いのに、ただ部屋を駆けずり回ってちゃって」

佳奈恵「…いいえ、目的はきっと彼にちゃんとあるのでしょう。こうする事が彼にとっての生き甲斐で、その瞬間ずつの満足を得る為、彼は走り回っている。どれだけ一生懸命働き充実感を手にしても、人はいつどうなるかわからない。その不安を抱えながら生きている内、永遠の住処のようなものを求めます」

佳奈恵「彼がそれまで感じてこなかった不安を覚えたのはその為。これだけ働いて自分が本当に満足できるか?その事を思えば、永遠に安心できる空間を手にしたくなる。それがとりあえず、この場所だった」

佳奈恵「…先生、今月分の治療費、これでお願いします」

主治医「おお、すまんね。まぁ任せときたまえ」

佳奈恵はあのとき横領した金の中から、
俺の今月分の治療費を払ってくれた。
きっとその金が尽きた頃、俺の心も体も治っているんだろう。
今はそう信じるしかない。

ト書き〈精神病院を外から眺めながら〉

佳奈恵「フフ、私はアキラの本能と欲望から生まれた生霊。その本当の夢を叶える為だけに現れた」

佳奈恵「仕事こそが自分の生き甲斐…なんて彼は言ってたけど本当はそうじゃない。心の奥底では自分のしたい事だけをして、もっとのほほんとのんびり生きたい…そう考えていた。でなければ、仕事上の事であんな風な悩み方はしなかった」

佳奈恵「仕事に追い込まれた生活なんか本来の人間の生き方ではない。それを見失いがちになるのが現代人。生きる為に生活する為にと盲目になり、正直な自分を封印したまま切り売りしてゆく。やがてその自分が無くなった時『自分らしさを取り戻す』なんて改めて生活し直す。それがマンネリ化して、現代人の生活そのものになってしまった」

佳奈恵「その窮地から脱出したかったのよね、アキラ?あなたの願いは叶えてあげた。そして、そう、あなたの思惑通り、このお金を全部払い終えた後、あなたの心と体は治っているでしょう。その時のあなたはこれまでのあなたじゃなく、別の何かになっていると思うわ…」

動画はこちら(^^♪
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