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夢のフィアンセ

タイトル:夢のフィアンセ

▼登場人物
●岡田春樹(おかだ はるき):男性。45歳。独身サラリーマン。悩みあり。
●百合子(ゆりこ):女性。若く見える。とても可愛らしい人だけど…。
●小三瀬 夢美(こみせ ゆめみ):女性。春樹の理想と欲望から生まれた生霊。

▼場所設定
●カクテルバー:都内にあるお洒落なカクテルバー。春樹と夢美の行きつけ。
●街中:会社などを含め一般的なイメージでOKです。

▼アイテム
●Lovers of Dreams and Reality:夢美が春樹に勧める特製のサプリドリンク。

NAは岡田春樹でよろしくお願い致します。

ト書き〈ある日〉

俺の名前は岡田春樹(おかだ はるき)。
今年45歳になる独身サラリーマン。
俺は今、結婚のことで悩んでた。
どうあっても巡り逢いがなく、ずっと独り身で居るしかない…そんなふうに思ってたから。

そんなある日、行きつけのカクテルバーに来ていた。
その時、1人の女性に出会った。彼女の名前は小三瀬 夢美(こみせ ゆめみ)さん。
歳の頃、俺と同じ位で、結構美人だった。

でも不思議だったのは、彼女に対しては何の恋愛感情もわかなかったこと。

彼女のほうから声をかけてくれ、俺たちは談笑していた。
彼女は都内でライフヒーラーや恋愛コーチの仕事をしていたからか、
いつしか話題は悩み相談のようになり、俺は今の悩みを全部彼女に打ち明けていた。

夢美「なるほど。結婚できない自分の運命に悩んでるんですね。では、こちらをどうぞ?」

そう言って彼女が俺に勧めてきたのは「Lovers of Dreams and Reality」と言う変わった名前のサプリメント。

夢美「それを飲めばきっとあなたの運命に光が差し込みますわ」

と彼女は言う。

とても信じられるもんじゃないが、これまでのドツボの人生。とりあえず飲んでみた。

ト書き〈恋人と出会う〉

それから数日後。彼女が言った事が本当になったのだ。
いつものように朝起きて、会社に向かう途中、公園でその人と出会った。
名前は百合子さん。ヒールが折れたようで道端に転んでおり、
うずくまっていた彼女の元に駆け寄って、そこから出会いが生まれた。

まるでドラマのようなシナリオだが、現代人はそんなのに弱いのかもしれない。そんな出会いをどこかで待っているのだ。

とにかく俺と百合子はそれから付き合うようになり、毎日デートを繰り返していた。

途中でまた俺は1人であのカクテルバーに立ち寄り
夢美さんと会った。彼女にすべてのことを報告した時…

夢美「そうですか♪それはおめでとうございます。でもせっかく出会ったんですから、彼女をちゃんと大事にしてあげないとダメですよ?」

と結構真剣に俺に言ってきた。まぁアドバイスだろう。

百合子と2人でデートした後、必ずお互いの家に帰り、寝て、また朝起きて俺は会社へ行き、それから街中で落ち合ってまたデート。結構プラトニックな関係で、こんな日々がずっと続いてゆく。

でも1つだけ不思議があった。日頃、俺から電話をかけても「プー、プー」と百合子は決まって電話に出ない。
何故かなぁなんて思いながら少しだけ浮気も疑ってみたが、百合子にそんな節は無い。こうゆうのは直感でわかるものだ。

百合子は清廉潔白、俺だけをただ愛してくれていた。

ト書き〈転機〉

でもある時、そんな百合子の正体がはっきりわかったのだ。
百合子は夢の住人。そう、俺が眠って夢を見る時に、その夢の中にだけ登場する人。
これも直感で俺は悟ってしまい、それが分かった瞬間…

春樹「君は夢の中にしか出て来ない、架空の人物のようなもんだろ?やっぱりそんな人といつまでも付き合ってらんないよ。ごめん…。もう俺、他の人を愛せるようになりたいから…」

夢は夢でしかない。現実での結婚を望んでいた俺にとって夢の中にだけ登場する架空の人物など、やっぱり価値はない。

そんな夢想じみた事だけに幸せを感じるような、落ちたヤツにはどうしてもなりたくないからと、
俺は百合子の元から一方的に立ち去った。百合子はただ泣いていた。

ト書き〈軽いオチ〉

それから俺は百合子の夢を一切見る事がなくなった。
心が現実(そっち)に向いたからか。俺も真人間になれたのだ。

春樹「…よし、俺もこれからはちゃんと現実に生きて、夢の中に埋没するような、そんな奴にはならないように気をつけなくちゃ」

と新しい一歩を踏み出した。でもこれは俺の若い時の事。
俺はそれから結局、一生出会いなど無く、独身で生涯を貫き通す事になったのだ。

ト書き〈老いた春樹を遠くから眺めつつ〉

夢美「フフ、今日も庭で焼き芋を美味しそうに炊いて食べてるわね、独りで。私はあの時の、春樹の夢と理想の中から生まれた生霊。1つの試練を与え、その夢を叶える為だけに現れた」

夢美「その試練とは、特定の人をちゃんと愛せるかどうかと言う事。たとえそれが夢の中でも。もし夢に登場していたあの百合子を変わらずずっと愛する事が出来ていたなら、その夢を私が現実で引き出してあげていたのに…惜しい事をしたわね」

夢美「まぁ彼が百合子に電話をかけた時『この番号は現在使われておりません』ではなく呼び出し音にしてあげたのは、私の力によるもの。それに気づいたら良かったんだけど」

夢美「夢の中でさえ特定の人を愛せないような人が、現実でその1人を愛せるわけがない。あなたはやっぱり独身でずっと居るべきだったのよ。もう彼にも、自分と言う者がどんな人なのか。それが解ってるかしら」

動画はこちら(^^♪
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