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日用品のデザインにおける民藝の影響


日用品とは、私たちの生活に欠かせないものである。食器や衣服、家具や文房具など、さまざまな日用品が私たちの暮らしを豊かにしてくれる。しかし、日用品は単に便利であるだけではなく、美しさや個性も持っている。その美しさや個性は、デザインによって表現される。デザインとは、形や色、模様や素材など、物の見た目や使い心地を決める要素のことである。デザインは、人間の感性や文化を反映するものでもある。


日本の日用品のデザインには、民藝運動という歴史的な流れが大きな影響を与えている。民藝運動とは、1920年代から始まった、日本の伝統的な工芸品を再評価し、現代の生活に適応させようとする運動である。民藝運動の主唱者であった柳宗悦は、朝鮮や沖縄などの地域で見つけた民衆の手仕事に感銘を受けた。彼は、無名の職人が作った日用品に見られる美しさを「民藝」と呼び、その美しさは健康で自然で無心で伝統的であると説いた。

柳宗悦は、民藝品の美しさを広めるために、1936年に日本民藝館を設立した。そこには、陶磁器や木工品、染織品や漆器など、さまざまな民藝品が展示されている。また、柳宗悦は、民藝品を参考にして新しい日用品を作ろうとする作家や職人たちを支援した。その中には、陶芸家の 河井寛次郎 や 濱田庄司 、染織家の 杉浦非水 や 遠山正雄 などがいた。彼らは、民藝品から学んだ美意識や技法を生かして、現代的な感覚やニーズに応える日用品を創造した。


民藝運動は、戦後も続いていった。柳宗悦の息子である 柳宗理 は、1950年 柳インダストリアルデザイン研究所設立。 1953年 財団法人柳工業デザイン研究会開設。 「シンプル・イズ・ベスト」をモットーにした洗練されたデザインの食器を作った 。また、「グッドデザイン賞」や「ロングライフデザイン賞」などの制度が設けられて、優れた日用品のデザインが表彰されるようになった 。これらの賞を受賞した日用品には、民藝運動の影響が見られるものが多い。


例えば、バタフライ・スツールは、1954年に柳宗理によってデザインされ、日本の天童木工から登場した名作椅子です。この椅子は、蝶のような形状から名前を得たと言われています。このスツールは、成形合板2枚をシンプルに組み合わせ、金属棒で結合する構造を持っていますが、実際には多くの試行錯誤があったそうです。柳宗理は成形合板技術に興味を持ち、チャールズ・イームズのもとで学び、その後日本でこの特殊な構造を生み出すことに成功しました。

このように、日用品のデザインに大きな影響を与えてきた。民藝運動は、日用品に見られる美しさを見出し、その美しさを現代の生活に適応させようとする運動であった。その運動は、日本の伝統的な工芸品や民衆の手仕事に敬意を払いながらも、新しい感性やニーズに応える創造性も持っていた。その結果、日用品のデザインは、シンプルで機能的で美しいものが多く生まれた。私たちは、そうした日用品のデザインから、民藝運動の精神や思想を感じ取ることができるだろう。

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