見出し画像

論語と算盤 渋沢栄一

論語と算盤 渋沢栄一
.
さすが一万円札になる方だと思える1冊。
.
本書は渋沢栄一の口述筆記をテーマ別に編集した入門書なので、実際の渋沢氏の言葉でまとめられています。当時から現代を予見していたかのような発言や、現代にも通ずる考え方が書かれているので勉強になりました。
.
渋沢氏は「近代日本の設計者の一人」と呼ばれています。資本主義の制度を設計した人物で、設立に関わった会社は約470社、慈善事業は500以上に携わり、ノーベル平和賞の候補にもなった日本を代表する実力者です。
.
本書は、「論語」を元に話が進みます。「論語」は、人はどう生きるべきか、どのように振る舞うのが人としてかっこよいのかを学ぼうとする時に基礎的教科書になっていた古典で、中国の春秋時代末期に活躍した孔子とその弟子たちの言行録です。
.
ここからは、渋沢氏の発言で特に印象に残った部分をまとめていきます。
.
習慣は少年時代が最も大切なので、この時期を逃さず良い習慣を身に付けるとよいそうです。とはいえ、老人になってからも重視しなければならず、老人でも努力すれば改められるものです。
.
志がどれだけよくても、振舞いが人の害になっていては善行とはいえません。逆に、志が多少曲がっていたとしても、振舞いが機敏で忠実、人から信用されるのであればその人は成功するそうです。
.
お金はどんなものにも変わることができ、分けることもできるのでとても便利です。お金を大切にすることは正しいことですが、必要な場合にうまく使っていくことも同じくらい大切です。
.
お金の本質を本当に知っている人なら、よく集める一方で正しく支出しています。「正しく使う」がポイントです。しかし世間は大切にすると言う意味を間違いケチに徹してしまう人がいるので注意したほうがよいそうです。確かに、貯金が目的になっている人がよくいますが、銀行に預けているだけではただの紙切れです。物と交換してこそ始めて価値が生まれるし、正しく使うことによってお金がまた自分のところへ循環してくると思います。
.
社会に生きる人々の気持ちが利益重視の方向に流れるようになったのは、世間一般から人格を磨くことが失われてしまったからです。ここでいう利益とは、社会の利益ではなく個人の利益を指します。だから、渋沢氏は青年に対して人格を磨くことを勧めているそうです。青年はまじめで素直、しかも活力があるのでどんな脅しや圧力にも負けないような人格を養成した方がよいそう。そして、自分を経済的に豊かにするとともに、国を豊かにするよう努力する必要があります。
.
金持ちがいるから貧しい人々が生まれてしまうという人がいますが、社会から金持ちを追い出してしまうと国に豊かさや力強さがなくなってしまいます。
.
個人の豊かさとは国家の豊かさであり、個人が豊かになりたいと思わないで国が豊かになることはありません。自分が豊かになりたいと思い、国を豊かにしたいと思うからこそ人々は日夜努力をします。その結果格差が生まれるならば、それは逃れられない宿命です。しかし、思いやりをもって努力してほしいとのことでした。
.
つまり、現状に満足し、現状維持になってしまったら、国は豊かになっていかないということだと思います。良くも悪くも現状維持でも生活できてしまうほど日本は豊かなのかもしれません。
.
今の日本には、金持ちを批判する文化がありますが、金持ちはたくさん税金を納めて国を豊かにしてくれています。本来批判するのは間違っていて、金持ちが日本から居なくなると日本は貧しくなってしまうので、金持ちにを応援してどんどん稼いで貰い感謝したほうがよいと思います。

一個人が大富豪になっても、社会の多数が貧困に陥るような事業であるなら、幸福は繋がっていきません。だからこそ、国家多数の豊かさを実現できる方法が必要です。
.
人々が自己利益のために活動をすると国にとってはマイナスでしかありません。「人から欲しいものを奪わないと満足できなくなってしまう」という言葉があるように、他人から奪うことで稼いでいる人もいるので見極めが必要です。
.
しかし、一朝一夕に立派な人間にするのは難しいので、世界的にも影響のある「信用」の威力を宣伝していかなければなりません。また、「信用こそすべてのもと。わずか一つの信用も、その力はすべてに匹敵する」ということを理解させることに取り組まないといけません。
.
信用経済と言われる昨今ですが、まだまだ経済発展途中だった何十年も前から信用について言及している渋沢さんの目はすごいと思いました。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?