タナベキミコ

プランナー/ナラティブデザイナー。ゲームシナリオを書いたりディレクションしたり、世界観…

タナベキミコ

プランナー/ナラティブデザイナー。ゲームシナリオを書いたりディレクションしたり、世界観やキャラクターをつくったりする仕事をしています。noteでは現在、時間がある時になんらかテキスト更新中。だいぶ前に書いたものですが、オリジナル長編小説もあります。

マガジン

  • 短い小説、あります。

    短編の小説を格納しているマガジンです。

  • 考えて書いているのか書いて考えてるのかマガジン。

    小説以外の散文を格納しているマガジンです。

  • 【長編猫小説】こちら側のハイイロ

    連載していた猫ロードムービー小説、「こちら側のハイイロ」をまとめたマガジンです。(完結してます)

最近の記事

アウトプット2021。

仕事しかしてなかったような2021年が終わります。 (しかし2020年はさらに仕事しかしていなかった気がするわはは) 今年は2月に運営開始したタイトル、「日向坂46とふしぎな図書室」のシナリオをひたすら書いてました。作ってました。書きました。 「ぎゃー! 書き終わったよかったー!」って言ったそばから次のシナリオのプロットを作るという、武者修行をさせていただきました。 それならわたしは武者になる。なっててくれ。頼む。 振り返ってみれば、17のイベントストーリー、2冊のメイン

    • ループもの人気を考えてみる。

      ループものって、どうしてこんなに人気があるんだろう。 と、ふと真面目に思った。今までも猫と遊びながら「は〜なんでこんなに人気あるんだろね〜」とか真面目じゃなく思ったことはあるけど、今回は真面目に考えてみようと思った。きっかけは、この記事。 AAAタイトルを制作する世界に名だたるスタジオ、ベセスダの新作のモチーフが「タイムループ」そのものらしいから。 そりゃAAAクラスのゲーム開発は数年単位のプロジェクトだから、企画が立ち上がったのも何年も前だろうと思う。というか、ベセス

      • 訃報と梨と明日。

        知人の訃報が飛び込んできた。 「かなり昔にお世話になった人」「家族がお世話になった人」で、こういう関係性だとお通夜に行ってもいいものか……とちょっと迷ってしまう。 迷ってすぐに「よくない癖だな」と思い、行くことに決める。 袖すり合うも他生の縁。 その人はその「かなり昔」から、すでにキレキレのクリエイティブ職の人で、当時も忙しいところを小娘(わたし)に時間を割いてくれたのに、その時分完全にテンパってたわたしは相当にアタマ悪い質問ばかりしてしまって、いやあれは絶対に呆れたと思

        • テキストCEO。

          なんやそれって思いますよね。わたしも思いました。 わたし「なんか最近、あらゆるところのテキスト調整が入って来すぎなんですけど……」 CD「仕方ないよ。テキストCEOなんだから」 わたし「なんですかその弱そうなCEO」 (CD=クリエイティブディレクター) という会話がありまして。 できればもっと強そうで、高給とりそうなCEOにしてほしいです。 ところで、そんなCEOが必要なくらい、ゲームの中にはいろいろなテキストが入っています。入り乱れています。 ①シナリオ、ストー

        アウトプット2021。

        マガジン

        • 短い小説、あります。
          タナベキミコ
        • 考えて書いているのか書いて考えてるのかマガジン。
          タナベキミコ
        • 【長編猫小説】こちら側のハイイロ
          タナベキミコ

        記事

          「鬼滅の刃」の斬新さ。

          「ヒットコンテンツは必ず目を通す、自分が興味なかったとしても」 というのは、わたしがまだコピーライターを目標にしていたパリパリのとんがりコーンのような10代だった頃、同じように広告業を目指していた友人の上野くんが、 「“こんなの売れちゃうのかよ”って自分が思うような作品も、見たり読んだりしたほうがいいと思うんだよ。だって売れてるんだから。俺はそういうの、あんたにはちゃんと見ておいてほしいと思うんだよ」 と言ってくれて以来、その時目からウロコがばりっと音を立てて落ちて以来、キモ

          「鬼滅の刃」の斬新さ。

          鎖骨も引きこもる日々。

          びっくりするくらい更新してなかったことに、びっくりしています。 ヒトは余裕がなくなると、ともにいろいろなものを無くしていきますね。例えばわたし、鎖骨なくしてました。 ある日、夜中に仕事を終えて顔を洗っていた時に鏡を見てぼんやりと 「……あれ? わたし鎖骨無くない?」って思ったんです。 鎖骨のでっぱりが有るべきところがなんか平らで、凹凸がないんです。この、首の下から胸にかけての部分が、ぺたっとつるっと真っ平ら。 (? わたしって昔から鎖骨無かったっけ?) (いや、あった。確

          鎖骨も引きこもる日々。

          わたしたちは本当の「悪」について知らない。【Netflixドキュメンタリー3選】

          4月から完全にテレワークになり、はや5ヵ月あまり。この間、一番なかよくなったヤツ…と言えばそれはやっぱり「Netflix」なのです。 とは言え、そんなに毎日毎日リッチな作品を見続けるのには、結構なカロリーが必要なわけで。 もともと結構使い倒してたのもあって、はやばやと「いやドラマはもうお腹いっぱいです」みたいになり、点けてるけど見てない人。になってました。 で、すでに見終わってる「ブラックリスト」とか、流しとく。 あ、ブラックリストはおもしろいだけじゃなくて、使ってる楽曲

          わたしたちは本当の「悪」について知らない。【Netflixドキュメンタリー3選】

          浅草異界:ハイテクサブカルサンダル 【短い小説 #9】

           オレは浅草とか、全然好きじゃない。っていうか興味ない。  普通だろ? 遊びに行くならフツーに渋谷か池袋か、そういうところでいいし。なに浅草って。なにがあんの浅草って。それがフツーの感覚じゃん。  だから「浅草が好き」とか言う女なんかも、フツーに何なの? とか思う。なんで浅草なのよと。サブカル気取りにしても、ちょっと過ぎるだろうと。下北吉祥寺、清澄白河くらいにしとけよと。  ……ああごめん、清澄白河についてはオレも実際よくわかってないけど。なんかこの前、自称カフェマニアとか

          浅草異界:ハイテクサブカルサンダル 【短い小説 #9】

          密林に、異常あり。 【短い小説 #8】

           わたしのジャングルは、白い。  白々と重なる何万枚もの葉を見上げる。みっちり頭上を覆う葉の輪郭線の数を想像すると圧倒されるが、白いので明るいし、閉塞感はない。  風景を区切るように何本も垂れ下がる蔓も白。見下ろした足元の腐った落ち葉も白。その積もった葉の合間を巨大なムカデが通り過ぎる、それも白。反射的に踏みつけて自由を奪ったムカデに顔を近づけ、観察する。  もぞもぞと動くたびに、その足や節々の陰影の斜線も動いた。何度見てもこの緻密で間違いのない線の動きには見とれてしまう。

          密林に、異常あり。 【短い小説 #8】

          「The Last of Us Part II」が傑作でありながらも、「最高のナラティブゲーム」にはならなかった理由。

          北米には「ナラティブゲーム」と呼ばれるジャンルがある。 「映画やテレビドラマのストーリーに似た構造を持つ」「物語体験を主体にした」ゲームを指す言葉で、とても人気があるジャンルと言える。 そして「The Last of Us」は、2013年(もうそんなに前なのか…)にリリースされ、ナラティブゲームの最高傑作となった作品である。 その続編「The Last of Us Part II(以下ラスアス2)」が、ついにリリースされた。 前作「The Last of Us(以下ラスア

          「The Last of Us Part II」が傑作でありながらも、「最高のナラティブゲーム」にはならなかった理由。

          ミニマリストのミルク皿。 【短い小説 #7】

           ヒトシは「ミニマリストらしい哲学を持たない、ミニマリスト」だ。  “最小限主義”。“シンプルな暮らし”。“モノを持たずに暮らす”。“日常感の排除”……といった理想のようなものは、ヒトシの頭の中にはない。  モノが無いほうが心が安らぐようになったのはいつからだったろう。ヒトシは8畳のワンルームに備え付けられた小さなキッチンの、天袋の棚を手探りしながら考える。彼にとってモノが無いということはただひたすら「不確定要素が無い」ということだった。  モノが無い。  無いから、何か

          ミニマリストのミルク皿。 【短い小説 #7】

          猫は流れる。 【短い小説 #6】

          「あ、あなた。それはイケマセン。おやめなさい」  人通りの少ない青山通りを歩いているとそんな声が聞こえたような気がして、思わず足を止める。 「です。あなたです。ちょっとおいでなさい」  右、左、とあたりを見回すと、歩道橋の影に半分ほど隠れて、オリーブ色のサファリハットっぽいものを被った小柄なおじさんがちょいちょい、と手招きしていた。小さな折りたたみの椅子に座ったおじさん、横に置かれている古びた革の旅行鞄には「占」の一文字が貼られている。  以前だったら完全にスルーする場面

          猫は流れる。 【短い小説 #6】

          ハシゴの上のひとりとふたり。 【短い小説 #5】

          俺の彼女は、ハシゴの上で寝る。 上、といっても登った方の上ではない。部屋の隅に置かれたヨックモックのシガールの空き缶と、平置きした広辞苑の上に渡したハシゴの上で寝るのである。 ハシゴの上には薄いが密度が高そうなマット、その上に布団が敷かれている。どちらも幅70センチくらいの激狭サイズだが、ハシゴの幅よりはやや広い。 うちに引っ越してきた彼女が持ち込んだその寝床を見て、俺は何も言わなかった。単につっこみどころがありすぎたからだ。 なんでハシゴ? なんでシガールと広辞苑? その

          ハシゴの上のひとりとふたり。 【短い小説 #5】

          ちょっとした遠距離恋愛。 【短い小説 #4】

          あのね。ちょっと考えてみて。 わたしの彼氏が例えば、地底人だったとするじゃん。 そうすると、彼の住んでるところは地底な訳だよね。地底人っていうくらいだから、地上にはそうそう出てこれなくって。やっぱ、陽にあたったら焦げたりするんじゃない? その前に「目が!目がぁ!」とかなったりするんじゃない? 夜? 夜は夜で出てこられない理由があるんでしょ。知らないけど。なんにせよ、地上には出てこれないわけ。地底人だから。 そしたらわたしが地底に会いに行くしかないよね。でもそれ、絶対ムリ。

          ちょっとした遠距離恋愛。 【短い小説 #4】

          黄ワニさんの電話相談。 【短い小説 #3】

          隣の部屋で電話が鳴る。 もっと正しく言うとskypeの呼び出し音だ。それがふっと消える。 「はい」 「もしもし……黄ワニさんの電話相談ですか?」 「はい、こちら黄ワニです。相談をうけます」 黄ワニさんの最近の仕事は、skypeで相談にのることらしい。部屋の片隅に放っておいた古いipadを興味深げにしげしげと眺めていたので「使ってみるかい?」と与えたら、いつの間にかそんなことを始めていた。何回も呼び出し音が鳴る日もあれば、一度も鳴らない日もある。が、鳴らない日は珍しい方なの

          黄ワニさんの電話相談。 【短い小説 #3】

          生かすか死なすか、それが缶詰だ。 【短い小説 #2】

          「お父さん!」  入り口のムシロを剥ぎ取る勢いで、ミスミが飛び込んでくる。 「……そのムシロ、最後のやつなんだぞ。もう少し大切に扱え」 「そんなのどうだっていい、コタが死んだ!」  コタはミスミの弟で、俺の息子である。人でなしの穀潰しで、“地道”や“真面目”のような言葉はその存在も知らないであろう、じつにどうしようもない男だ。  だが、息子だ。  そして俺たち家族3人のうちのひとりだ。  いや、だった。となるのか。今は。  俺は鼻の奥がきゅっと痛くなるのを忌々しく思いながら、

          生かすか死なすか、それが缶詰だ。 【短い小説 #2】