ハシゴの上のひとりとふたり。 【短い小説 #5】
俺の彼女は、ハシゴの上で寝る。
上、といっても登った方の上ではない。部屋の隅に置かれたヨックモックのシガールの空き缶と、平置きした広辞苑の上に渡したハシゴの上で寝るのである。
ハシゴの上には薄いが密度が高そうなマット、その上に布団が敷かれている。どちらも幅70センチくらいの激狭サイズだが、ハシゴの幅よりはやや広い。
うちに引っ越してきた彼女が持ち込んだその寝床を見て、俺は何も言わなかった。単につっこみどころがありすぎたからだ。
なんでハシゴ?
なんでシガールと広辞苑? その