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ちぐはぐ

朝靄もまだ晴れない早い朝、駅までの道を歩いていると、前を歩いていた男の子が突然くるりと振り返り、「こんにちは!」と大きな声で言うと律儀にも頭を下げた。

小学校4年生くらいの華奢な男の子だ。たまたま、同じ方向に向かって歩いていたため私が後ろに着いていくような形になっていた。後ろから近づく足音がどうしても気になったのだろう。緊張した様子でちらちらとこちらの様子を伺っていた。早足に遠ざかろうとするが、何分私の方が背が高い。しばらくすると堪忍したように足を止めた。

まだ白く霞んだ空気に響く「こんにちは!」という大きな声はちぐはくで可笑しかったが、友人たちが思いっきり突っ走って行った線路の前でも律儀に止まり、左右を確認する彼はきっと素敵な大人になるだろう。


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小説の連載再開までもう少しお待ちください🙏

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