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【掌編小説】猫々と犬々

最近、猫をお散歩させている紳士とよくすれ違う。深いグレーの毛並みの猫は、首に赤いリボンを結び付けられ、少し太めの赤いリールで繋がれていた。

あれ、猫ってこういう犬らしいお散歩なんて嫌いじゃなかったかしら。

そう思っていたある日、猫の方から話しかけてきた。

「そんなに意外?猫だってお散歩好きなのよ。」

なるほど、と猫の顔をまじまじ見ると確かにいたって楽しそうだ。

よくよく考えてみると、猫と犬どっちが好き?なんて構図は人間が考え出したものだし、本人たちからしてみれば、猫にとって犬は犬国の犬々だし、犬にとって猫は猫国の猫々なのだろう。

お散歩という趣味が同じであれば話が合うだろうし、お互い老猫老犬であれば、「もう私たち、お散歩なんてねえ。」なんて話していそうなものである。

私に話しかけてくれた猫は今朝もご機嫌でお散歩をしていた。久々に晴れたので、とてもうれしそうだ。


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