横田英博

京都市立北野中学校三年中退。 詩と批評に興味をもっています。

横田英博

京都市立北野中学校三年中退。 詩と批評に興味をもっています。

最近の記事

みんないってしまったのかい

みずいろと蔓草のはざまに 夜の酒瓶のかけらのように散って 反復する波のリズムを聴いていた あまりにものんびり屋の きみたち ユキゾラホトトギス ハグルマケボリ リュウキュウアオイ ニッポンオトメヒメゴコロ ケッショウツノオリイレ イチゴナツモモ アデヤカイモ サツマアサリ テマリカノコ テンニョノカムリ 電信柱が水平線の彼方までのびて よこたわる仕切り線ごとに空は 色を失い 遠くでは雷雲がひしめいている きみたちの結界は もう 十分に荒らし尽くされた 一握の砂をにぎれば

    • 葦原にて

      ホタルが光ることをあきらめたかつての葦原には 鋭い葉先をもつ堅草がおい茂っている もうだれも ことばを信じなくなった かつてオレは水になることができたし 泥鰌(どぜう)になることもできた 雲にも そのはるか彼方を飛ぶイヌワシにもなって空を飛んだ それが遠い昔のようにもついさいぜんのようにも感じる 流れ着いた葦原の岸辺に枕飯を添えて 箸を立て こうべを垂れる ここがどんつきだが 静かな川の流れと青空は むかしのままだ おそらく追放と私刑はこれからもつづくだろう 地の底に眠ってい

      • 再生

        童話

                童話    今朝(2024/06/16)、いつもスケボーをする坂道で   ふと気になる蔦(つた)をみつけた。   その蔓(つる)の形状に心を寄せて一遍の詩をつく   ってみました。 木になりたかった でも木に なれなかったわたしは わたしの全身を使って 木を描いた わたしの腕は枝だ 脚を閉じて 両腕をうんと伸ばすと 鳩がやってきた わたしは鳩と語らった 木について 空について 野について わたしの頭の上を電車が ガタゴトと 走り抜け 鳩の羽の下を自動車が 排煙をあげて 走り去った わたしの言葉は青葉だ わたしは山のように言葉を吐き出し 緑を深くした 鳩たちは わたしの腕の下で 萌黄(もえぎ)をついばんでいた まるで ほんとうの樹の下に いるように 安心して

      みんないってしまったのかい