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「2030年を生きるためのキャリア教育」を目指して:仕事を選ぶ、組み合わせる、そして創る(大宮国際プロジェクト活動報告)

こんにちは!Unicul Laboratory 共同代表理事の永野です。

6月末に、さいたま市立大宮国際中等教育学校にて、新たなキャリア教育プログラムを開発・実践することを、リリースさせていただきました。

このたび、第1回のワークショップを、オンラインにて、7月11日・8月1日の2日程に分けて実施しました。

この記事では、第1回ワークショップの実施報告の前編としての位置付けで、このプロジェクトが立ち上がった背景やプロジェクトに込めた思い、またオンラインでの実施に至るまでの経緯について、お話しさせていただきます。

なお、後日公開の記事では、Unicul初の学校現場での本格的なオンラインワークショップとなった当日の様子について、レポートする予定です。

1.ビジョンに基づいて、「仕事を選ぶ、組み合わせる、創る」

さて、上記でご紹介した6月末のプレスリリースには、こんなことが書いてあります。

・これまで様々な学校や自治体のニーズにあわせて提供してきた<Queque>のワークショップをよりアップデートして、日頃から探究的な学習に親しみ、将来国際的に活躍することを期待されている大宮国際中等教育学校の生徒の皆さんと実践します。
・長期的なビジョンの描き方・考え方を身につけること、また長期的なビジョンを実現するために人生の各ステップで取るアクションの描き方・考え方を身につけることを目指しています。

…これだけだと、「んー、難しい!結局なんやねん!」とお叱りを受けそうです(笑)

シンプルに言えば、「2030年を生きていく中高生に向けて、<Queque>をアップデートし、提供する」というのが、大宮国際中等教育学校でのプロジェクト(以下、大宮国際プロジェクト)の目標です。

現在の<Queque>は、社会を知り、人を知り、自分を知り、そして将来のビジョンやそこまでの道のりを描いてみる、というプログラムです。
わたしにとって、大学時代を費やしてつくり、育てた、かけがえのないプログラムであることは間違いないのですが、一方で無意識的に「将来の選択肢をかき集めること、そしてそこから選ぶこと」が目標になっているような気がしていました。

つまり、<Queque>は「そもそも、自らの抱える課題感に見合った将来の選択肢がない場合、どうすれば良いのか」ということには、答えを提供してくれないのでした。

「VUCA」というワードを最近耳にするようになりましたが、現代社会は、変化が激しく、複雑であり、将来は不確実で、曖昧です。
そのような中では、志を持つ人にとっては、進路選択の指針の一つとなる「解決したい社会課題」も同時に複雑化することとなり、既存の選択肢から1つを選ぶだけでは、アプローチをすることが難しいという場合が多いのではないでしょうか。

たとえば、「都市と地方の教育格差を解決したい」と志した子がいるとします。
きっと大人は「学校の先生になればいい」「格差の問題を解決するなら行政だろう」「行政や学校現場だけではなく、NPOという選択肢もあるよ」といったアドバイスをするでしょう。
ところが、その子にはどれもなんとなくしっくりこない。どこからでも課題にアプローチはできるけど、どれも決定的ではない。でも、1つ選ばなくてはいけないーー。

そのときに、わたしは「1つを選ぶ必要はない」というメッセージを伝えてあげたいな、と思っています。
仕事は選ぶだけではない。組み合わせても、創ってもいい。志やビジョンがあるのなら、人生の時間をトータルでデザインして、そこに迫っていけばいい。もちろん、途中で志やビジョンが全然違うものになってもいい

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Uniculのビジョンは「誰もが、自分の人生に納得感とオーナーシップを持って、それぞれの未来を歩んでいける社会」です。
進路選択において、対応する将来の選択肢が存在しなければ、納得感もオーナーシップも持てないのは当然のこと。
その「将来の選択肢」に関する無意識の前提 ーー既存の選択肢から、1つを選ぶことーー をひっくり返してみたいな、というのが、<Queque>をアップデートしたいと思ったきっかけです。

自分自身、教育に対する興味関心や課題意識はありつつも、仕事としてはそれらを満たすぴったりの選択肢は見つけられず、結果として教育と直接は関係ない仕事を本業として選び、教育には「パラレルキャリア」として取り組んでいくことを決めました。
様々な理由はありますが、教育だけに携わっても、自分の解決したい社会課題には十分にアプローチできない、と思ったことも、一つ挙げられるかもしれません。

2.「2030年」に、社会へ飛び出すということ

その上で、「2030年」をテーマに設定しました。
未来をイメージさせたいということが1つの理由ですが、なぜ、2025年でもなく2050年でもなく、2030年としたのでしょうか。

2030年は、いまの中学生がちょうど社会へ飛び出すころです。

つまり、進路やキャリアを考えていくにあたり、2030年はどんな社会になっているのか、常に想像力を働かせていくことが、非常に重要だと考えています。
とくに、個人的な感触でしかないのですが、「働く」を取り巻く環境は、2030年に向けて、これまで以上に激しく変化していくのではないかと思っています。

というのも、またもや自分自身の経験となりますが、Uniculの活動とは別に、2050年までの日本をシミュレーションするというプロジェクトに参加したことをきっかけに、AIやロボット技術の進展と社会・労働の変化といったトピックに関心を持ちました。

変化の時期や度合いについてはいろいろな見解はありますが、たとえば事務労働は、早ければ2030年頃にはAIやロボットに代替されていく、とも言われています。(そして、この変化はこのコロナ禍で、ますます加速していくものと思います)
並行して、頭を使う仕事や身体を使う仕事への労働移動が生じ、さらにその中でもクリエイティブ系の仕事やマネジメントに関する仕事、ホスピタリティ系の仕事が残っていく、とも言われています。

もちろん、その過程で新しく生まれる仕事(AIやロボットを監督する仕事であったり、あるいはこれまでにはまったくなかった領域の仕事)もあるでしょう。
他方で、もしかしたら「人口の1割しか働かなくても良い社会」なんかが実現するかもしれません。

2030年には、なくなっている仕事もあれば、新しく生まれている仕事もある。また、ひょっとしたら「働く」ことの価値が、いまとはまったく違ってくるかもしれない

そしてそれは、わたしたちも、いまの中学生も、そんな激動の中で進路やキャリアを選択していく、ということを意味しています。

だからこそ、大変ではあるけれどもワクワクする時代を、どのように捉え、どのように切り拓いていけばよいか、一緒に考えてみたい。
プログラムに参加してくれる中学生のみなさんの柔軟な発想と、大学生・社会人スタッフのこれまでを掛け合わせたときに、どんな方向性が見えてくるか、いまからとても楽しみです。

まとめれば、2030年に向けた社会の変化もうまく見据えながら、仕事は選ぶだけではなく、組み合わせる・創ることもありなんだと、自由な発想で「納得感とオーナーシップのある」進路やキャリアを考えていって欲しいという、そんな願いを込めながら、大宮国際プロジェクトスタッフ一同、企画・運営を進めています。

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3.オンラインでの実施に至るまで

と、だいぶ壮大な話を書いてしまいましたが、実はこういったことを考え、実現に漕ぎ着けていくきっかけとなったのが、まさに今回のプロジェクトの舞台となる、大宮国際中等教育学校との出会いでした。

大宮国際中等教育学校(以下、大宮国際)は、埼玉県内初の中等教育学校として2019年に開校しました。探求学習やICTの活用が進んでおり、さらに国際バカロレアの認定を受けることも視野に入れているという、大変先進的でグローバルな学校です。

当時のスタッフが「すごい学校がある!」と教えてくれて、「何かできませんか?」とはじめてお伺いさせていただいたのが2019年7月
他方で、予想通り「すごい学校」で、こちらとしてもどういったことが提供できるかを改めて整理する必要があり、年末までの半年近くにわたり、先生方ともご相談をしつつ、検討を重ねていったのでした。

その過程で、テーマである「2030年」や「ビジョンに基づいて、仕事を選ぶ、組み合わせる、創る」といったコンセプトが固まっていきました。
最終的に、わたしたちにとっても挑戦といえるこのプロジェクトを、「ぜひやってみましょう」と受け入れてくださった先生方には、感謝この上ありません。

ところが、2020年に入り、満を持してプロジェクトを正式にキックオフさせ、本格的にプログラム開発にとりかかったところで、「コロナ禍」がやってきました
本来は、4月から月1回、半年程度という構想でしたが、3月から学校は休校になり、再開のめどは立たず、仮に学校が再開したとしても、「3密」の象徴(!)のような対面でのワークショップはいつ再開できるか見通せない、といった状況になってしまいました。

以前の記事でも書いた通り、そこからUniculではワークショップのオンライン化に舵を切ることになったのですが、実はその背景には「うまくいったら、まずは大宮国際で実施できたらいいね」という話もあったのです。

上記記事の通り、結果は大成功。その後、他のワークショップもどんどんオンライン化を進めていく中で、6月には「そろそろ、大宮国際の生徒に届けたいね!」という段階になりました。

そこで、先生方に改めてご相談させていただき、7月からオンラインで実施できる運びとなりました。

4.そして本番へ

オンラインでの実施が決まったとき、初回のワークショップまでは既に1ヶ月を切るような状況でした。

団体内での実践は十分に重ねてはいたものの、中学校での本格的なオンラインワークショップは初めてであり、身の引き締まるような思いでした。
いつも通りにタイムラインとスライドをつくりながらも、対面とはだいぶ勝手が違うので、連絡調整に漏れはないかと、緊張の続く日々でした。

そして無事に迎えた(?)本番の様子は…次の記事にてレポートさせていただきます。お楽しみに!


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