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心を安定にする喜贈(DāNA)が循環する、新しい生態系を作る

不安と恐れがうずまく時代の中で、私たちはどうすれば安定した心を持つことができるのでしょうか? 私たち一般社団法人 日本仏教徒協会では、心の安寧を説いてきた日本仏教を再定義して日本中の資産を生かし直し、新たな可能性を提示することがその答えだと考えています。日本人が今までに全く見たことがないスタイルのお寺とそのポテンシャルを、京都に作った実験寺院・寳幢寺を使って、皆さんにお届けしていきたいと思います。

ここでは、その活動の中心となる新しい概念や取り組みについて、今後丁寧に皆さんにご紹介していきたいと思います。

喜贈(DāNA)という古くて新しい概念

私たちの活動は、「喜贈」(DāNA ダーナ)という言葉を軸に運営しています。この言葉のことを、ガンジーの右腕となった思想家ビノーバ・バーべと、その弟子であり平和思想家であるサティシュ・クマールが書いた「怖れるなかれ」という本では以下のように伝えています。

経済の基本はダーナ、つまりギフトであるということです。
自然を見ればすぐにわかります。
自然界の経済はすべてギフトによって成り立ち、維持されているからです。
太陽の光、雨、土…、これらはみんな純粋な贈与です。
すべてギフトにより成りたっている自然の経済学には、
商品というものが存在しません。
なぜなら、売ることも買うこともないからです。
ただただ与える、与える、与える、与える。
これが自然界の経済です。

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「喜贈」は、サンスクリット語のDāNAから作った造語で、今の経済概念の対極にあります。この哲学を社会システムとして表現して、京都市内でモデルケースとして運営しているのが実験寺院・寳幢寺です。

ちなみに、団体のロゴもDāNAがモチーフに取り入れられています。

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DāNAという言葉には、DNA(=ヒトの遺伝子)という文字が入っていますね。

実は私たち人類は、食べ物を分け合ったり助け合うことで、直立二足歩行を行う性質を獲得していった、という生物学の有力な説があります。つまり私たちの遺伝子には、自発的に利他的な行為をすることがプログラムされているというのです。それを表現したくて、こういう大文字表記に工夫してみました。

ヒトは、与えることで幸せを感じる生き物である科学実験

2008年にカナダのブリティッシュ・コロンビア大学の心理学者エリザベス・ダン博士の研究チームが、以下のような発表を行いました。

お金で幸せを買うことはできる。
ただし、他人のためや社会のために使う場合に限られる。

これは収入にかかわらず、「自分のためにお金を使った」グループよりも、贈り物や寄付など「他人のためにお金を使った」グループの方が、幸せ指数が上回ったことが実験で立証されたそうです。

また、2012年にカナダのサイモン・フレーザー大学のラーラ・アクニン博士らが行った実験によれば、2歳未満の幼児であっても、お菓子をもらうことより、与えることのほうに喜びを感じることがわかりました。

人類はそもそも、与えることに喜びを感じるようにプログラムされているのです。

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世界一の寄付大国ミャンマーの喜贈文化の秘密

イギリスの慈善団体「Charities Aid Foundation」が行った世界寄付指数では、2014年から2018年まで、ミャンマーは4年連続で世界1位となり、「世界で一番優しい国」として有名になりました。この調査では、
・寄付金の額
・ボランティアへの参加
・見知らぬ人を助ける
という3つの項目で、他者への寛大さを測定したものです。

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このミャンマーの人々の根底にあるのは、仏教の教えです。ミャンマー人たちは、「自分がお布施できたことが、嬉しくてしょうがない」という感覚なのです。ミャンマー人が寄付やボランティア(これも、日本人とはかなり感覚が異なっていて、本当に自分の自発性から行動している)を行うのは、自分の功徳のためでもあり、来世の自分のために徳を積むのです。

私たちが「喜贈」という言葉を作り、「喜」という文字を当てたのはその理由からです。誰かのためにお金を払う、寄付をするという行為そのものがすでに喜びである、という感覚を日本にも紹介していきたいのです。

お金を払う時、あなたはどこに意識を向けるか

日本人の感覚からすれば、お金を払う時にどんな気持ちを持っているでしょうか。「お金が減る」とか「出費」というと、少しネガティブな感覚があります。少なくとも喜びの感覚を持っている方は少ない気がします。

なぜこのようなことが起きるかと言うと、私たちの経済社会が等価交換の仕組みで成り立っているからです。例えば、お店で800円のラーメンを注文する時、あくまで商品やサービスを「受け取る」という目的に意識が向けられていて、それを受け取る期待があるから800円を支払うわけです。「受け取る」ことを期待するから、それに見合うだけの価値があるかどうかにシビアになるし、その価値以上のコスパの高さをより多く取りあうマインドセットになります。

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喜贈やDāNAのマインドセットは、その逆です。見返りなく「お金を払うこと」に意識が向けられるのです。そして、お金を出すときの意識が「受け取る」ではなく「与える」に置かれている方が、ヒトは精神的な満足度を覚えるのです。

私たちは、あまりにもこの等価交換の習慣が身に染み付いていますし、まだまだ日本の社会の中では、なかなかこの喜贈の感覚を実践できる場所が少ないのが現状です。そこで、意識的に実践できる場所として、私たちは「喜贈コミュニティ」というオンラインの場を実験的に作って、「贈ること」や「与える」に意識を向けています。

あなたも豊かさを与える旦那になってみよう

「与える」ことに意識を向けるという行為は、「自分の中にあるものを探す訓練」であり、「自分が何を与えられるか」に意識が向いて行きます。そうやって、見返りを求めずに豊かさを与える経験を重ねていくことで、自尊心や心の豊かさが深まって行きます。それは、昨今のような未来への恐れや不安を強く感じる閉塞した時代にこそ必要なマインドセットであると感じています。

そんな風に、人々に対して見返りを求めずに豊かさを与えることができる人徳を持った人を、日本では古くから「旦那」と呼んできました。これは、DāNAが語源になっています。そんな旦那たちが世界中に増えていけば、心の豊かさはもっと増えていくだろうと思い、私たちは活動しております。みなさんも、ぜひ「与える」ということに意識を向け、喜びをともに感じて行きましょう。

日本仏教徒協会では、完全に寄付だけで運営するというチャレンジを続けています。

ご賛同頂けます方は、こちらからご寄付をお願いします。




文章: 淺田 雅人一般社団法人 日本仏教徒協会 事務局長)

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社会実験家。大手旅行代理店を経て、NPO法人場とつながりラボhome’s vi を創業。京都市上京区まちづくりアドバイザーでの経験から、京都市上京区を未来の社会実験都市と位置づけ活動。海外100拠点の社会起業家コミュニティImpact Hub Kyotoに従事。従来の社会活動の限界を感じて、無期限の活動停止と主夫生活を経て現職に復帰。「幸福度を高める地域システム構築」と「家族の持続可能性」と「人類の意識の進化」を研究している。

ご一読いただき、本当にありがとうございます。この文章やビジョンに共感いただければ、よろしければサポートをお願いします。 頂いたお金は、寄付のみで運営されている実験寺院・寳幢寺ならびに、仏教によって新しい社会を創造するための研究・実践活動に使わせて頂きます。