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【はじめまして】UniCask、幕開けまでのストーリー vol.3

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https://note.com/unicask/n/n474d67b4cc7a

ポールジロー氏との出会い

マザーモルトからの原点探しで始まったモルトウイスキー探究ですが、本物を探し求める地道な旅路は、他のお酒においても同じでした。

代表的なのが、40年もの間共に歩みを続けてきたコニャック生産者、ポールジロー氏との仕事です。

グランシャンパーニュのコニャック生産者、ポールジロー氏

彼の一族は350年以上前からコニャック最良の産地・グランシャンパーニュのブットビル村に居を構え、ブドウの栽培を行っています。
そしてブドウの栽培・剪定・収穫・発酵・蒸留・熟成・瓶詰に至る全ての作業を自身の手で行っている数少ない生産者として知られています。

現在瓶詰されているポールジローのコニャックには現当主のジロー氏自身と先代による原酒が使われていますが、グランシャンパーニュは長期熟成することによってそのポテンシャルが大いに発揮されますので、このように数世代にわたって熟成が行われるのはよくあることです。

樽とデジタルのマッチング

しかし一般的なお酒においてそれを手にした消費者が得られる情報は、ボトルに貼られたラベル内のわずかな記載が主たるもの。これでは、幾世代にもわたる情熱がそのお酒に注ぎこまれていることを消費者に伝えることはできません。

こうした瓶詰済みのボトルに対しラベルのない「樽」は、それをデジタル化することで、数世代にわたる情報を余すところなくNFTに持たせることが可能になります。
さらにNFTの所有者は、樽を育てる “熟成”という大事な仕事にも共に関われるようになります。
将来的には樽を通して数世代の造り手と会話することも可能になるかもしれません。

「酒を通して海外の文化を日本に紹介していく」という目標を掲げ大海に漕ぎだしたJIS。
そしてUniCaskでは、新たにデジタルという巨洋の中でのお酒の楽しみ方を紹介していきたいと思っています。

「個人」に樽を売ってみては?

GMが休眠中のベンロマック蒸留所を1993年に買収し、5年の歳月をかけ蒸留再開に漕ぎつけたのは1998年のこと。
お祝いに訪れた際、GMの社長はこのように言っていました。

「再開はしたけれど、これからが大変。ウイスキーのビジネスは何よりも時間との戦いで、10年ものを造ろうとしてもその期間資金を寝かさねばならず、キャッシュフローに四苦八苦する。
そもそも10年後の景気など予測できず、売れるか売れないかその時になってみないと分からない。ウイスキーが好きで、しかも懐に余裕がないとできないビジネスだ」

一方その頃すでに、JISはジャパニーズ・ウイスキーの輸出を通して「イチローズモルト」の原点である羽生蒸溜所と懇意にさせて頂いていました。同蒸留所は経営難から2000年に一度閉鎖されたものの、2017年には新しい体制の下で再開の機運が高まり、操業を再開するにあたって相談を受けることになりました。

羽生蒸溜所 熟成庫の様子

そこでJISではキャッシュフロー改善の重要性と、樽の生産と所有とを分離することでリスクマネジメントが可能であることを説明し、最終的に羽生蒸溜所の樽を一手に引き受けることを決めました。
つまり、造られたばかりのウイスキーのかなり部分を「樽」の状態で販売することになったのです。

羽生蒸溜所の樽を託され最初に思ったのは、それまで卸売りしかなかった樽のビジネスを個人にまで広げてみたいということでした。

たとえば英国の樽取引は業者間の信用取引になり、一般的に手形や小切手と同様にDOを裏書きすることで所有権の移転がなされ、B to Cは想定されていません。

前例のない「個人との樽売買」――これは業界的には画期的な試みでしたが、紙の取引では改竄の恐れがあり、実現には高いハードルが存在していました。

クリスとの出会いと、UniCaskの誕生

そんなB to Cのシステム構築を模索していた時に、友人の谷家衛さんから紹介されたのが株式会社レシカの代表であるクリス・ダイ氏でした。

㈱UniCask 代表取締役社長 クリス・ダイ

クリスから個人の樽所有をブロックチェーンによって管理することが可能だと伝えられ、私は「これだ!」と膝を打ちました。
そこからとんとん拍子に話が進み、ウイスキー樽を初期段階から個人に販売するための管理システム「UniCask」が立ち上げられたのです。

まずは海外の業者のみを対象に羽生蒸溜所の原酒販売をスタートしましたが、香港のオークションでイチローズモルトのカードシリーズが高値で落札されるなど、もともと人気が高く知名度もあった同蒸溜所の樽は次々と買い手が現れ、結果として三年の熟成を待つことなく、蒸留されたばかりのウイスキーの速やかな現金化に成功したのです。

この「樽」の状態での売買、蒸留所は造り手としてより良いお酒を造ることに余裕を持って専念でき、購入者は早期に安価で樽の所有が叶えられ、全体的にWin-Winの取引となりました。

当初はブロックチェーンで樽の管理をすることだけを考えていましたが、その後打ち合わせを重ねるたびにNFTやその将来性、とりわけ「デジタル世界での酒の在り方」に興味が移っていき、私はUniCaskと共にさらなる事業展開に挑戦していこうと決意しました。

樽のNFT化がもたらすメリット

どんなにIT化が進んだとしても、コントロールできないことに「時間」の概念があります。
一般的に物の価値は時間の経過と共に劣化、棄損していき、逆に価値が増していく物は稀ですが、ウイスキー樽はその数少ないものの一つです。
たとえば5年物は3年物より高く、さらに10年物は5年物よりももっと高価になります。

ウイスキーは世界中で愛されており、また液体という性質上、分割しても価値を損なうことはありません。
対してビットコインの技術で生まれた仮想通貨には裏付けとなる資産がありません。
また、NFT化されたデジタルアートを実際に分割してしまったら、その価値も失われてしまいます。
仮想通貨もデジタルアートのNFTも「時間と共に値上がりする」という概念がないのです。

その意味からも、私はウイスキー樽こそが最もNFTにマッチしているアイテムではないかと考えます。
以前はアナログでの業者間取引しかなかった樽売買の世界ですが、NFT化することで一般の方々も投資することができるようになり、またこれらの樽はデジタル化によってお酒を嗜まない方にとっても身近なものに生まれ変わりました。
なお実際の樽については、英国で実績のあるキングスバリー社がマネジメントを担い、政府管轄の保税倉庫で熟成されアプリ内で所有権が管理されます。
もちろん不測の事態にも対処できるよう、損害保険で厳重な保証が為されています。

アプリ UniCask の使用画面:ブロックチェーンにより樽の所有権が管理される

樽のNFT化は所有権管理システムとして万全なだけではありません。
最終的に中身のお酒を美味しく飲んで心地よく酔いを楽しむことに変わりはありませんが、デジタルで樽を所有することで得られる別の楽しみがあります。
すなわち商品の最終形態である「瓶」でしか買えなかった時とは異なり、その中身を自分の好みに合わせ、熟成年数、度数、パッケージ等をカスタマイズすることができるのです。
さらに自分だけの樽を育てるというサラブレッドのオーナーさながらの楽しみ方や、アバターで生産者とも直接つながり会話を楽しむようなことができるかもしれません。

UniCaskが見据える世界

世の中には変わっていくものと変わらないものがあります。

UniCaskのスローガンは「デジタル世界での酒の在り方を問う」です。
樽熟成は銀行の利子のような存在で、NFTを持っているだけで時間がその価値を膨らませてくれます。

時間の概念を新たに持ち込み、小口化した樽にNFTを紐づけて発行する「Cask NFT」――これはNFT史上最高の発明だと思っています。

しかしそのNFTの在り方もWeb3.0の世界でどんどん進化し、変わっていくと思われます。
樽の取引からスタートしたUniCaskですが、その進化の中でさらなる驚きをもたらす発明品を作り上げていくつもりです。
もちろん仕事に対して誠実に向き合う姿勢、そしていつもワクワクするような楽しさを追い求めていくことに、何ら変わりはありません。

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