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【いざ、三連覇へ】2022年東京ヤクルトスワローズのオフの動きを網羅的に振り返る

こんにちは、シュバルベです( ͡° ͜ʖ ͡°)

今回のnoteでは東京ヤクルトスワローズの2022年レギュラーシーズン終了時点での課題から、10月20日に行われたドラフト会議の結果およびその後の補強の動きについてまとめと考察を行っていこうと思います。

これまでドラフト会議が終わった時点でnoteを出し、戦力分析を行ったこともありました。

しかし、自分でも「ドラフトは未来への投資」と常々言っておきながら、ドラフト後のより現実的な補強である外国籍選手の獲得・NPB間のトレードまで含めたストーブリーグの動きをまとめることをしていなかったなと思い至りました。

本noteではスワローズの
①レギュラーシーズン終了時の課題
②ドラフト会議の結果
③11月~12月にかけての人事

の3つを取り上げていきたいと思います。

長くなりますが、目次も付けているので興味のある範囲でお読みいただければ幸いです。


1.スワローズ2022年シーズン終了時点の課題

早速ベースとなるチームの現状を把握していきましょう。先日、DELTA社の【このFA選手を狙え!】シリーズコラムである程度、現在のチーム状況を数字踏まえて記載されているので軽めに書いていきます。

・投手の課題

まずは投手から。2022年のレギュラーシーズン終了時点の年齢構成は次の通りです。

※赤字は22年加入選手、グレーの網掛けは育成契約選手。分数は複数年契約。

スワローズは22年の前半戦は「ゆとりローテ」を組み、先発投手を上手く運用してきましたが、7月のコロナウィルス禍の影響を受け8月~9月にかけて先発投手が思うようにゲームを作れない試合が続いてしまいました。

前掲のコラムで紹介されている通り、先発投手WAR12.2はリーグ最下位。救援投手WARはリーグ2位とはいえ、先発投手に苦しんだシーズンだったと言えます。イニング×QS率で先発投手をプロットした表がこちら。

小川・サイスニード・高橋・高梨・原・石川の6人を中心にしたローテーションでしたが、高橋投手(25歳)と原投手(29歳)以外は全員30歳を超えており一般的にはピークを迎えているか終えている状態です。

スポットで一軍先発登板機会を得た山下投手・市川投手ら20代前半の投手や、育成契約ながらともに二軍で10先発以上を果たした下投手・丸山翔大投手ら期待を持てる投手はいますが、来年~再来年の一軍ローテーションを考慮すると即戦力に近い投手の獲得は必要です。

以前、即戦力投手の基準について考察しましたが、まさに来年から10先発または70イニングを果たすような投手がドラフト上位で獲得したい状況で、今年同様の先発投手の運用を来年以降行っていくなら新外国籍選手獲得も含めて先発型は必須でしょう。

リリーフ投手については重要度が先発投手に比べて下がりますが、イニング数×防御率でプロットした表を作りました。

多くの投手がリーグ平均より好成績でシーズンを戦えており、特に右のリリーバーに関しては戦力外からの獲得選手含めて育成を得意としているカテゴリーとなっています。クローザー候補もマクガフ・石山の経験者2人に清水投手もいるためドラフトでの獲得優先順位は低い状態です。

ただ、石山投手は34歳のシーズンで、清水投手は3年続けてフル稼働しています。登板過多によるパフォーマンスの低下リスクを防ぐために、リリーフの枚数増加は戦力外~外国籍選手の獲得で果たすべきでしょう。

特にオリックスとの日本シリーズを経験し、宇田川投手や山﨑颯投手に抑え込まれた経験は記憶に新しく、同様の速球派リリーフは当然いればありがたい存在です。

ただ、高津監督はある種冷静に、リリーフの厚みを増やす方法を振り返っています。

こうしたこと(筆者注:先発を任されていた投手が中継ぎに転向し、最新版の「勝利の方程式」が確立した)が可能になるのは、やっぱり先発がしっかりしているからですよね。
極端な言い方をすれば、「先発が余ってしまっているのだったら、1イニングを全力で投げなさい」と、本来の先発ピッチャーを後ろに回す。それも、技巧派ではなくて、パワーピッチャーがリリーフに回っていく。短いイニングを全力でいかれると、なかなか1イニング、スリーアウトの間に得点するっていうのはすごく難しくなります。

2022東京ヤクルトスワローズ髙津流 熱燕マネジメント 第16回

この発言は本当にその通りだと感じています。2021年スワローズが日本一を取った時、シーズン前半に先発をしていたスアレス・田口の2投手が後半戦で中継ぎに回ったことも経験としてあります。

これを考えても、このオフの課題は先発の枚数をきちんと揃えることに重点が置かれるべきでしょう。

唯一、左の中継ぎは手薄なカテゴリーで、今季一軍で稼働できたのは田口投手と久保投手の2人。ドラフトでの指名は市場を鑑みても必要度が薄いと考えていますが、戦力外からの獲得含めて枚数の追加が出来れば望ましいでしょう。

投手についてまとめると、
①一軍で23年シーズンから稼働できる即戦力の先発投手獲得は急務
②リリーフ投手の優先順位は低いが、左を中心に枚数の追加は必要
と言えるでしょう。


・野手の課題

続いては野手です。各ポジションのドラフト前の年齢マップはこちら。

※赤字は22年加入選手、グレーの網掛けは育成契約選手。分数は複数年契約。

ひと昔前は右打内野手や左打外野手がスカスカでしたが、ここ3年程のドラフト・編成で少しずつ各年齢にバランスよく選手がプロットできるようになってきました。

スワローズの一軍野手陣の最大の強みは、リーグでも屈指の打って守れるセンターラインです。

キャッチャー中村、セカンド山田哲人、ショート長岡、センター塩見。そらんじて言える彼ら4人で形成されるセンターラインのWARは+13.7。中村・長岡・塩見の3選手はゴールデングラブ賞を獲得するなど、いずれの選手も打撃と守備が両立しており、彼らの存在故に一三塁・両翼のコーナーポジションに心置きなく打撃に特化した選手を配置できます

既に長岡選手はレギュラーを今年獲得してしまいましたが、内山壮真選手・丸山和郁選手の20~21年ドラフト獲得選手が長い期間一軍に帯同し攻守に結果を残しつつある点も希望が持てる点です。

各ポジションごとに軽く見ていきましょう。各ポジションのwRAAについては以下記事にて補足してください。

捕手に関しては中村選手が3年契約の2年目を迎え、24年に流出のリスクはありますが、内山選手に台頭の兆しがあるため緊急度は低いです。ドラフトで獲得したところで、中村・内山・古賀の3名で一軍レギュラーの芽はほぼなく、二軍で松本直樹選手と競争すると考えると出場機会も少ないのが現実です。

二遊間は7年契約のセカンド山田選手が不動のレギュラーで、ショート長岡選手も守備面で非常にアドを獲得できることから一軍の座は空きづらい状態です。

二軍では西浦・元山・武岡の3選手が二遊間を中心にポジション争いを繰り広げており、更にシーズン終盤では小森選手もその中に加わってフェニックスリーグでは本塁打も放ちました。彼らと差別化できるような打力と一定以上の守備力を持った二遊間の選手はドラフト上位指名を割かない限り獲得は難しいでしょう。

一・三塁に関しては三冠王村上選手と3年契約のオスナ選手がおり、オスナ選手を押し退けて一軍出場しようと思うと20本塁打以上が求められます。

二軍の一・三塁は本塁打13本の松本友選手、11本の西田選手、8本の赤羽選手がいますが、彼らと競争して二軍の一三塁を勝ち取れるような若いパワーヒッターはオスナ選手の契約満了後および村上選手のMLB挑戦を考えると獲得を検討すべきでしょう。

内野に関しては、村上選手のMLB挑戦志向が強く、25歳シーズン=2025年オフの流出は現実的な脅威となっています。また、山田選手も長年センターラインを担い日本代表としてもフル稼働しているため将来的なリスクヘッジは必要です。

外野手は攻守に高い成績を残せる塩見選手はレギュラー確定ですが、両翼は40歳の青木選手・怪我明けのサンタナ選手・OPS.643と打撃面でアドの少ない山崎選手らで主に回しており、現在のスワローズ一軍の中では数少ない新規参入の余地のあるポジションです。

丸山選手・並木選手はともに俊足タイプで、濱田選手は故障もあって現状突き抜けられていないことを考えると、ある程度守備に目を瞑っても打撃に優れた外野手はドラフトで優先的に獲得したいポジションです。

野手についてまとめると、
①捕手は優先順位が低い
②二遊間の選手はドラフトで獲得するなら打力に優れた選手を上位指名
③一三塁の次世代パワーヒッター候補は獲得を検討すべき
④外野手は打撃に優れた選手を獲得し競争激化を狙う
となります。

では実際のドラフトはどうなったのか。次章で見て行きましょう。


2.ドラフト会議の結果

スワローズは次の5人の支配下選手と1人の育成選手と交渉権を獲得しました。

1位 吉村貢司郎 投手 東芝
2位 西村瑠伊斗 外野手 京都外大西
3位 澤井廉 外野手 中京大
4位 坂本拓己 投手 知内
5位 北村恵吾 内野手 中央大
育成1位 橋本星哉 捕手 中央学院大

既にスワローズ公式サイトにて寸評は出ていますが、軽く各選手を補強ポイントに照らしつつ紹介していきましょう。


・1位 吉村貢司郎

経歴:日大豊山→國學院大学→東芝
投打:右投右打
来年期待される役割:一軍先発ローテーション

1位吉村投手は日大豊山→國學院大→東芝と都下で多くの野球人生を過ごしてきた投手で、今年のドラフトにおいて即戦力のNo.1右腕です。

昨年から指名解禁でしたが東芝のチーム事情もあって名前は呼ばれず、今年悲願のNPB指名となりました。

私見ですが、今年の投手の候補の中で1年目から10先発または70イニングを投げられる可能性があると思う投手は吉村投手と荘司投手(楽天1位)の2人で、早期に一軍ローテーションに入って稼働してほしいという編成の強い思いを感じる指名となりました。

先に挙げた投手の課題①にまさにピンズドと言える形でしょう。

公言の上での単独一位指名となりましたが、橿渕聡スカウトグループデスクは次のように語っています。

「たとえ吉村を公言する他球団があったとしても、ウチは競合覚悟でいくつもりでした。」
「総合的に見て、今年のピッチャーの中で完成度はナンバーワンです。台所事情や現場の意見も踏まえ、将来性よりも来季を見据えました。」

(『野球太郎No.045 2022ドラフト総決算&2023大展望号』P.65)

高校~大学時代で神宮球場は何度も経験しており、今年に入っても3月のスポニチ大会ならびに指名に大きく影響を与えたであろう10月の練習試合で好投を見せていることから、適応に時間のかかる神宮球場のマウンドにも早くからパフォーマンスを発揮できる可能性が高い投手です。

左足を揺らしながら反動をつける「振り子投法」はNPBで珍しいですが、今年のアマチュア野球ではこのフォームに近しいものに変える投手も数名見られ、今後のトレンドになる可能性はあります。

フォーシームは150km/h前後をコンスタントに計測し、決め球の落差の大きなフォーク、キレのある140km/h前半のツーシームなど投げているボールは素晴らしく、先日の社会人野球日本選手権ではリリーフとして3試合8イニングに登板。自責点・失点共に0で、13奪三振3四球。最後のトヨタ自動車戦では本調子ではなかったですが、それでも圧巻のピッチングを見せました。

スワローズとの仮契約で発表された背番号は21。現一軍ピッチングコーチの伊藤智仁氏も現役時代着用した番号を背負います。

チームに加わる時点で25歳のシーズンということもあり、やはり先発ローテーション入りを期待したいと思います。目標値としては一軍10先発

逆に吉村投手が怪我無く10先発程度にとどまり、なおかつチームが優勝出来たらスワローズは本当に強いチームになったと言えるのではないでしょうか。新人王目指して奮闘を期待しています。


・2位 西村瑠伊斗

経歴:京都外大西
投打:右投左打
来年期待される役割:二軍中軸打者

2位で指名した西村投手は投手としてもMAX147km/hを投げ、夏の京都府大会では背番号1を背負い、実際にピンチの場面では火消しの登板も果たしています。

179cm78kgとアスリート体系で、投手も出来る身体能力の高さは他球団からも評価されていました。

アピールポイントは打撃で、京都府大会記録の4本塁打を記録。打率は6割越えで大当たりでした。同予選も中継を通して見ていたのですが、引っ張り方向に強い当たりかつ打球角度をつけることに優れている好打者で非常に注目していたバッターの一人です。

プロでは野手一本に絞ることもドラフト指名日に明言しており、将来の中軸打者候補と言えるでしょう。

実際、ソフトバンクの永井智浩編成育成本部長兼スカウト部部長も「外野手の西村瑠伊斗君(京都外大西高、ヤクルト2位)は打撃に関してのスカウトの評価が(全体でも)一番高かった」(10月25日付西日本スポーツ)と語っています。

西村選手は外野手として指名されましたが、先日仮契約を結んだ際に背番号36を付けることと、内野手登録になることが発表されました

背番号36はヤクルトスワローズにとって出世番号の一つ。池山隆寛現2軍監督や、川端慎吾選手がかつては背負った番号です。内野挑戦について、日刊スポーツの記事にはさらに突っ込んで書かれているので引用しましょう。

同デスク(筆者注:橿渕スカウトグループデスク)は「内野手登録です。三塁か二塁か、これから西村くんの一番いい方向性を考えていく。内野手にチャレンジして、将来はクリーンアップを打ってほしい。当球団には村上、山田と強打者がいるが、まだ外国人に依存している。将来を考えると野球人としての幅も広がるかなと。まず打撃を伸ばすのを先決で、守備も頑張ってもらう」と説明した。

11月13日付日刊スポーツ

西村選手は中学二年生までは二塁・三塁の守備位置についたこともあったものの、高校時代は投手・外野手の2ポジションに専念。

プロの打球にどこまでついていけるかという疑念は多少あるものの、投手としても十分投げられるだけの身体性を持った西村選手が内野手に挑戦することは基本的にはプラスの要素が大きいと考えられます。

スワローズでは内外野両方の守備位置に就く一軍メンバーは宮本丈選手が二塁・左翼・右翼に就くぐらいですが、阪神の佐藤輝明選手は三塁・右翼、大山選手は一塁・三塁・左翼と複数の守備位置に就いています。

西村選手は高卒の段階で両翼のみが守備位置となるとオプションが少なく、内野も守れることで出場機会の増加とチーム構想への入れやすさが出てきますね。最もうまくいったプランとして、セカンド山田哲人選手の後または併用が出来れば、野手の課題の②と④の2つを一気に解決できる可能性を秘めています。

ルーキーイヤーは二軍の中軸打者として打席を積み、内野守備に取り組んで1年間完走出来れば大成功です。高校3年生の春から肩を故障しているので球団としてもあまり無理はさせず、じっくりと育成をしてほしいなと思います。

今や遊撃レギュラーの長岡選手は高卒1年目シーズンに二軍成績はそこまで残せなかったものの1年間完走し、2年目に一気に打撃成績を上げて3年目に一軍レギュラーに定着しました。

これぐらいのスパンで出て来てくれれば本当に最高だと思いますし、期待したいですね。


・3位 澤井廉

経歴:中京大中京→中京大
投打:左投左打
来年期待される役割:外野レギュラー争いを熾烈にする開幕一軍入り

3位で180cm90kgの大砲候補、澤井廉選手を指名しました。

中日ドラゴンズ時代は同級生の根尾選手と共にプレーし、名門中京大中京に進学すると高校通算31本塁打。大学進学後はリーグ戦通算10本塁打、四度のベストナインにも輝きました。

芯に当たった時の飛距離は今年の大学生野手の中でもトップクラスの選手の一人です。

大学入学後に20kg近い増量を果たし、栄養学や先進的なトレーニングにも積極的に取り組むことで掴んだ上位指名。豪快な見た目とは異なり、しっかりと先の目標に向かって努力を重ねるタイプで、スワローズのチームカラーにマッチしそうです。

スワローズには澤井選手と同様に両翼をメインポジションとする右の長距離砲候補の濱田選手がおり、この二人が同い年というのは競争意識を煽るものになるでしょう。

20ドラフトで並木選手、21ドラフトで丸山和郁選手と俊足の外野手を指名しており、3年続けての大卒外野手指名となりましたが、この2人とは全く異なるタイプの打撃型選手のため補強ポイントとも合っています。

11月16日に仮契約を行い、背番号は42。今年引退した坂口智隆選手が背負った番号です。

既に身体は出来上がっているので、2月のキャンプから両翼のレギュラー争いに加わって欲しいですね。両翼は同じ左投左打の山崎選手がレギュラーで頑張りましたが、やはりOPS7割台は欲しいポジションです。

山崎・青木・サンタナ・宮本・丸山・濱田と両翼の候補は多く熾烈なレギュラー争いになりますが、この戦いはチーム全体の戦力底上げに繋がりますし、コロナ禍でいつだれが離脱するか分からないご時世もあって候補は何人いても困らない状況です。

まずは怪我無くキャンプを完走、OP戦で目の覚めるような本塁打を放って開幕一軍。これが澤井選手にまず求めたいところになります。

その後の1年間の結果は競争に伴う打席などによって大きく変動してくると思うので、キャンプ完走×開幕一軍+年間怪我無くシーズン完走。これですかね。


・4位 坂本拓己

経歴:知内
投打:左投左打
来年期待される役割:身体づくりの上で、夏頃から二軍先発チャレンジ

北海道の奥尻島出身NPB入り選手は佐藤義則氏以来46年ぶりということで話題にもなった坂本投手。

180cm85kgと高卒ながらがっしりした体格の左腕で、今夏の南北海道予選ではチームを初の決勝まで導きました。

この南北海道予選は阪神2位の門別投手、甲子園でも活躍を果たした森谷投手と好左腕が多く、私も予選から多くの試合を中継で観ていました。坂本投手は片脚立位の状態の姿勢が良く、フォームも安定して制球力に非常に優れており、右打者に対しても外のボールで三振を取れていました。

打者としても準決勝で逆転ホームランを放つなど随所にセンスを感じます。

スワローズの斉藤スカウトが早くから視察を繰り返しており、幹部からのコメントも多く出ていた投手で、まさに意中の選手だったと言えるでしょう。

スワローズの22歳以下の左腕は育成の下投手だけで、坂本投手にとっては登板のチャンスが多いチームです。その下投手は183cm86kgと体格が似ており、またピッチングスタイルとしても近しいものがあるので切磋琢磨して欲しいなと思いますね。

下選手は2年間怪我も少なく結果も出しているので、来年キャンプ前後に育成から支配下への昇格も十分あり得ることも考えると、近くにいいお手本がいる状態を作りたいところです。

仮契約で、背番号は56に決まりました。昨年まで鈴木裕太投手が着けていた番号です。

1年目の役割としてはまず身体づくり。1年間投げられるだけの体力がつけば十分で、夏ごろから二軍のマウンドに立てれば順調でしょう。

先発左腕は高橋投手以降、育成が上手く出来ていないカテゴリーなので、成功例を蓄えていきたいタームです。


・5位 北村恵吾

経歴:近江→中央大
投打:右投右打
来年期待される役割:一軍右の代打〜二軍中軸打者

支配下では最後の指名となった5位は中央大キャプテンの北村恵吾選手。182cm87kgのがっしりとした体格で、今年阪神一位指名の森下翔太選手とともにクリーンアップを担いました。

ストロングポイントは、西村選手・澤井選手同様にバッティング。低めのボールをかち上げてライナー性の打球を飛ばす技術を持ち、東都通算6本塁打のパワーが持ち味です。

守備位置としては一塁をメインとしていますが、中央大OBの小川淳司GMは「将来的にサード、セカンドでレギュラーのポジションがとれる選手になってほしい」(10月24日付サンスポ)と話すように、高校時代はこれらのポジションにも就いてきました。

中央大出身の選手をスワローズが獲得したのは現二軍サブマネージャーの中澤雅人投手(2009年ドラフト一位)以来。近年、DeNA牧選手を筆頭にドラフト上位候補を多数擁し、来年も西舘勇陽投手や中前祐也選手ら候補を抱えている中での名門大ルートの再コネクション作りみたいな点も勘ぐりたくなるところです。

来年の役割として、一つは長打力を活かした右の代打

今年のスワローズを見ても右打代打は内山壮真選手がシーズン途中から一番手となりましたが、捕手というポジションもあり、試合の中盤に投手の代打でワンポイントとして入る選手は需要が高くなっています。

もう一つは二軍の中軸打者

今年内川聖一選手・坂口智隆選手が引退したことで、二軍の上位打線は大きく入れ替わることが必至です。現実的なところだとポジションも右の強打者という点が被る赤羽選手が競争相手で、しかも年齢も同じ同級生です。

チームとしては北村選手と赤羽選手を競わせ、より結果が出た方を一軍に上げるという競争文化を作ることを目的としているのでしょう。

仮契約が行われ、背番号は50に決まりました。この記事の中で、次のように書かれています。

球団との話し合いの中で、入団後は近江高時代から経験のある三塁手に加え、二塁手にも挑戦することが決定し「しっかりとそこを対応できるようにやっていかなくちゃいけないなと思います」と決意を示した。

ドラフト2位の西村選手同様、北村選手も二塁・三塁に取り組むとのこと。

NPBの現在のトレンドとして、複数ポジションを守れる打の選手という流れがありますが、スワローズも本格的に乗り出そうとしている姿勢が見えます。

このコメントを鑑みると、二軍中軸打者かつ守備面のトライアル➡結果を残せば一軍昇格し右の代打、というレールになりそうです。

澤井選手の加入で一軍外野枠、北村選手の加入で一軍右の代打枠、それぞれの競争を熾烈化させてチームとしての戦力底上げを狙った指名になったのかなと思います。


・育成1位 橋本星哉

経歴:興国→中央学院大
投打:右投左打
来年期待される役割:二軍捕手の底上げ

今年育成指名はこの橋本星哉選手のみとなりました。

指名後に行われた横浜市長杯では4番キャッチャーとして出場、初戦の横浜商大戦で4打数3安打2打点と結果を残しました。続く試合では左足の負傷で2打席で退いてしまいましたが、目指す「打てる捕手」としての片鱗を見せました。

来年の期待される役割としては二軍の捕手の競争激化になるでしょう。

内山太嗣選手が戦力外となりチームとして育成捕手は±0ですが、過去10年のスワローズのドラフトで育成捕手はいずれも独立リーグから獲得してきた(大村孟選手・内山太嗣選手・松井聖選手)中で、関東の主要リーグに所属しているかつ2021年神宮大会優勝チームである中央学院大学からの育成指名は目立ちます。

二軍では外野の守備位置にも就いている松井聖選手は、捕手登録で同じく右投左打とほぼ同カテゴリーと言える存在で、どちらが打力や守備力で頭一つ抜きんでて先に支配下を掴むか、そんな競争が来年待っているでしょう。

背番号は赤羽選手が育成時代に着用していた「023」。

攻守に存在感を出して支配下を掴めるか、注目ですね。


3.ドラフト後の選手の入れ替わり

スワローズはドラフト後、ポストシーズンを戦い抜きました。長いオフの始まりです。

NPBは支配下70人と限られた枠の争い。ストーブリーグともいわれるこの時期は、チームの編成部にとってはシーズン中以上の戦いとなります。

まずはその流れをおさらいしましょう。


・チームを去る選手

スワローズを終の棲家としてくれた3選手(内川聖一選手・坂口智隆選手・嶋基宏選手)が引退したほか、11月末にクローザーのマクガフ投手がMLB再挑戦を表明。チームとしては想定外でしたが、最後は「本人の希望を後押し」する形で円満退団。

計12人の選手がスワローズを退団し、近藤・山野・鈴木の3投手が自由契約のち育成契約を結びました。

主な流れは以下の通りです。

①引退試合:嶋基宏選手、内川聖一選手、坂口智隆選手

②第一次戦力外:吉田大成選手、中山翔太選手、寺島成輝選手

③育成再契約:近藤弘樹選手、山野太一選手

④第二次戦力外:宮台康平選手、内山太嗣選手、鈴木裕太選手(※鈴木選手のみ育成再契約)

⑤保留者名簿外:S.マクガフ選手、A.スアレス選手、A.J.コール選手、P.キブレハン選手


・チームに加わる選手

去る者あれば来る者あり。続いては来る選手たちを。

①戦力外からの獲得:三ツ俣大樹選手、尾仲裕哉選手、沼田翔平選手

②現役ドラフト:渡邉大樹選手OUT、成田翔選手IN

③新外国籍選手の獲得:R.エスピナル選手、D.ピーターズ選手、K.ケラ選手


・2022年オフの選手の入れ替わりまとめ

ここまでの年内の動きをすべてまとめると次のようになります。

現在、スワローズは総勢75名。支配下は66名で、内訳は投手35名、野手31名です。

上記の表のとおり、支配下の野手の選手が4名加わったものの7名去っているため昨年に対しー3名の状況で、現在育成契約を結んでいる松井聖選手、岩田幸宏選手、新たにドラフトで加わった橋本星哉選手の3名には支配下昇格のチャンスが1枠は見えています。

逆に6名いる育成投手の支配下昇格は激戦で、来春のキャンプで浦添に誰が呼ばれるかは大きなターニングポイントになりそうです。


4.適切な補強のできたオフシーズンだったのか

ここまでシーズン終了時の課題、ドラフト会議での選手の指名、シーズン終了後の選手の入替の3つを見てきました。

改めて原点に立ち返り、スワローズはシーズン終了時の課題に対して適切な補強の手を打てたのか、検証していきましょう。

1章で投手/野手の課題は次のように書きました。

<投手の課題>
①一軍で23年シーズンから稼働できる即戦力の先発投手獲得は急務
②リリーフ投手の優先順位は低いが、左を中心に枚数の追加は必要

<野手の課題>
①捕手はドラフトでの優先順位が低い
②二遊間の選手をドラフトで獲得するなら打力に優れた選手を上位指名
③一三塁の次世代パワーヒッター候補は獲得を検討すべき
④外野手は打撃に優れた選手の獲得が必須

これらを挙げたのはシーズン終了時で、そこからスワローズにとって予定外の事態が2つ発生しました。マクガフ投手のMLB挑戦に伴う退団と、宮台投手の引退です。ともに残留見込みであった分、フロントは慌てたことでしょう。

投手の課題②ではリリーフの優先順位は低いと書きましたが、マクガフ投手の流出でクローザーが不在となり、一軍のリリーフ枠に1つ空きが出来てしまいました。また、宮台投手の退団で左腕リリーフの追加は必要度を増すことになります。

さて、それぞれの課題に対処が出来たのか。一つずつみていきましょう。


・投手の課題①→対処◎

「一軍で23年シーズンから稼働できる即戦力の先発投手」について、ドラフト1位で吉村投手を指名し、今回ドラフトで最も即戦力度が高いと謳われる選手の獲得に成功。

さらに新外国籍投手として、2年続けてマイナーリーグ100イニング登板しているヘルシーなスターターのエスピナル投手と、離脱は多いが持っているスペックは高くMLB通算34試合先発のピーターズ投手を獲得しました。

FA市場でも一時は阪神岩貞投手の獲得調査報道も出ましたが、最終的に投手はFA市場に出ず各球団に残留したためこれは仕方ありません。

今年のオフの動きとしてこれ以上の動きはないぐらい、しっかりと即戦力の先発候補を獲得できたと言って良いでしょう。


・投手の課題②→対処△

「リリーフ投手の優先順位は低いが、左を中心に枚数の追加は必要」については最低限の対処は出来たオフになりました。

前向きに送り出したものの、戦力として考えるとマクガフ投手の流出はチームにとって非常に痛いものです。安定したクオリティで年間50試合出場できるリリーバーはそう簡単に穴埋めできるポジションではありません。

ドラフト会議ではリリーフタイプの投手は獲得せず。これで良かったと思います。

逆にシーズンオフは活発に動きました。新外国籍選手としてMLB実績が豊富なリリーバーのケラ投手を獲得。さらに戦力外となっていた右のリリーバー尾仲投手と、現役ドラフトで左サイドスローの成田投手を獲得しました。

以上のような動きでやれることはやりましたが、やはりマクガフ投手の穴を埋めるのは簡単ではないと思います。既存投手のレベルアップが求められる2023年になるでしょう。


・野手の課題①→対処○

ドラフトでの優先順位が低い捕手は、育成指名で橋本選手の獲得のみ。既に書きましたが、獲得しても二軍でさえ出場機会の薄い現状ではやはり支配下での追加は余剰に繋がっていたでしょう。


・野手の課題②・③→対処○

「二遊間の選手をドラフトで獲得するなら打力に優れた選手を上位指名」「一三塁の次世代パワーヒッター候補は獲得を検討すべき」の2点については、ドラフトで一定の対処を行いました。

ドラフト2位で指名した西村選手は高校時代のポジションが投手と外野手で、ドラフト指名後に内野手登録となることが発表されました。どこまで内野の守備に就けるかによってこの評価は変わってきますが、まず打撃を磨くところからのスタートです。

5位で獲得した北村選手も二・三塁のポジションに改めて取り組むことが発表されました。彼を一三塁の次世代パワーヒッター候補として考えることは可能でしょう。

課題とはズレますが、二遊間の選手として戦力外から三ツ俣選手を獲得したのは悪くないムーブでした。守備面で安定し、打撃面でも田口投手からのサヨナラタイムリーのような読み打ちする勘の良いバッターなので、二軍プロスペクトを無理に一軍に上げることを防ぐ「壁」としての役割に期待しています。


・野手の課題④→対処◎

「外野手は打撃に優れた選手の獲得が必須」について、ドラフト3位で澤井選手を獲得した動きは非常に良かったですね。

2章で書いた通り、直近2年で獲得した並木・丸山の両外野手と差別化の出来る強打の外野手で、右の濱田選手と一軍の枠を争う形となります。澤井選手の獲得により一気に一軍両翼のポジション争いが激化しており、良い意味で開幕一軍が誰になるか読みづらい状態です。

並木ー丸山の左右の俊足タイプ、そして濱田ー澤井の左右のパワータイプと綺麗な対称性でよく考えられた編成だと思います。



私が挙げた6つの課題に対して、スワローズはこのオフシーズンしっかりと適切な対処をしてきたと言って良いでしょう。

特に先発投手と外野手という顕在化していた課題に対し手厚く補強の手を打つことが出来ました。

これでチームが優勝出来るかは相手があることなので分かりませんが、少なくともスワローズというチームが出来ることはやり切った2022年のオフになつたのではないでしょうか。


5.さいごに

ここまで12,000字かかりました。最後まで読んでくださった読者の皆様は本当に野球好きだと思います笑。

今までやりたかった、ドラフトの後の動きも含めて編成の働きは評価すべきという持論をスワローズで試してみた形となります。2022年オフシーズン、スワローズは課題に対して様々な形で補強を行ってきたことが良く分かります。

小川GM体制になってから現場とフロントがまさに同じ方向に向き、チーム作りとして非常に良いモデルケースを作ろうとしているヤクルトスワローズ。願わくばそれが実を結び、球団初となる三連覇を2023年に飾って欲しいですね。

私たちファンも応援し続けましょう。


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