日本とドイツの手術室での違い
日本は猛暑のようですが、こちらはまだ30℃を超えることはほぼなく、比較的涼しいです。
暑がりとしては、とても過ごしやすく、助かっています。
写真は市内にあるナゾ日本食レストラン(ベトナム人経営)の寿司です。
今日は留学先と自分が今まで日本で経験してきた手術・手術室の違いを徒然なるままに書いてみようと思います。
まず真っ先に思いつくのは、とにかく放射線照射に敏感です。
どんなに長い手術でも、必ず甲状腺プロテクターをつけていますし、手の手術等では放射線防護手袋もよく目にします。
また、術者が放射線のフットスイッチを踏むことはほぼなく、技師がスイッチを押しています。連続で踏むことは稀で、大体ワンショットで照射します。そして、透視を使う頻度も少ないです。自分は皮切の位置から、整復位、仮固定、インプラント設置等々、事あるごとに透視を使っていますが、こちらでは、インプラントを設置してスクリューを何本か打つまで透視を確認しないことも多々あります。これに関しては良し悪しかなとも思います。
皮切の位置がズレて、切開が拡大したり、インプラントを設置した後に、整復からやり直したり、スクリューが長すぎて入れなおしたりといったことは間々あります。(インプラントに関しては後述します)
とは言え、自分は今まで放射線を使いすぎていたなと反省させられました。
コメディカルに関しては、メンバーが固定されているということが最も違うところと感じます。
看護師も放射線技師も同じメンバーのため、外傷手術に慣れており、器械の取り扱いや透視の操作に慣れており、術者の欲していることを概ね理解しています。慣れすぎているためか、術者がピリついていても、お構いなくおしゃべりしてたり、手術がいまいちだと、看護師が首を横に振っていたりするのが、傍から見ていると面白いです。
ただ、メンバーを固定しているデメリットもあります。特に病欠等が相次いだりすると、手術を遅らせたり、減らせなければならない状況が生じます。また、コアメンバーが急に辞めてしまうと、かなり困るようです。
患者に関しては、想像に難くないと思いますが、とにかく大きい人が多いです。日本の基準だと麻酔の加算は取り放題だと思います。
なので、とにかく術野が深いです。皮切をなるべく小さくしようなんて考えは微塵も生じないと思います。
足持ちのレジデントも大変だと思います。そのためか、レジデントはマッチョが多いです。
また、患者が重いためか、インプラントの折損もしょっちゅう目撃します。
ただ悪いことばかりではないかなとも思います。
まずちょっとやそっとの出血ではびくともしてなさそうです。また、神経や血管、軟部組織も日本人よりは強い印象を受けます。術中にガシガシ筋鈎で引っ張ってもびくともしないようです。
Pilon骨折で、anatomical plateを一期的に2枚入れても、余裕で皮膚が閉じていたのをみると、大分違うなと感じました。
清潔操作、感染対策に関しても違いがあります。
こちらでは、C-armによる術野汚染に非常に敏感です。
C-armを術野に入れる毎に、手前側に新しい覆布をかけます。
また、C-armを回転する際はその都度、反対側にも覆布をかけます。
なので、一度の手術で何枚も覆布を消費します。
また、前腕や手部の手術の場合、指先は全て清潔手袋で覆います。足関節や足部の手術の場合、足趾は同じく清潔手袋で覆います。
術者の手指消毒はアルコールで行い、レジデントは、タイマーで時間を計ってしっかり消毒しているのが印象的です。
術野消毒はアルコールではなく、イソジンで行っています。アルコールは飲みすぎて耐性でもあるのでしょうか。
一方、術野の洗浄は自分からみると、かなり淡白です。長時間の手術でもちゃちゃっと洗っておしまいです。感染症例なんかは、自分の場合、親のかたき位洗いますが、こちらでは、パルス洗浄でサッと洗っておわりのことが多いです。また、手術室の人の出入りが多く、ドアも開けっ放しのことが多いのが自分的にはかなり気になります。
なので、感染対策に対しては、重きを置いているところが少し違う印象です。
インプラントや骨補填材料、止血材料など、日本では保険請求等の問題で使えるものや、使える量に制限がかかることがありますが、こちらではそのあたりをまったく気にしてない(気にしなくてよい?)です。少し聞いてみた感じでは、全て患者の保険で賄われるとのことでした。そして保険の種類も関係ないようです。寛骨臼骨折の手術の時、出血する前からルーティーンで高い止血剤を開けてスタンバっているのは、衝撃的でした。見学している身としては、いろいろな製品をみられてうれしい反面、日本と違いいろいろな製品を制限なく試せる環境を羨ましく感じます。ただ、保険で賄われるということは、最終的には税金として降ってくるのでしょうか?
日本では認可されていない製品や未発売の製品も多々あるので、そのあたりは今後ぼちぼち紹介できればと思います。
そして、やはり一番大きい違いは、主要インプラントが院内に全て置いてあることです。これに関しては、良い面と悪い面があるなと感じました。
まず、良い面としては、おおよその不測の事態に対応できる点です。また、条件が整えば、初回手術で早急に確定的手術を行うことが可能です。
悪い面としては、術前計画をしなくてよくなる点があげられます。インプラントをオーダーする必要がなくなるためか、術前に綿密な計画が練られているのは特殊例のみです。前述の保険の状況や、透視をしょっちゅう確認しないこともあり、サイズや形状が合わず、別のインプラントを出しなおすことが間々あります。また、インプラントの在庫管理が大変なようで、一部サイズのインプラントが欠品している状態で手術を行うこともあります。最初はあらゆるインプラントが置いてあるなんていいな~と思っていましたが、これも実際は良し悪しかなと思うようになりました。
と言うわけで、引き続き、こちらのいいところを学んでいきつつ、日本の良いところも再確認できればいいなと思います。また、施設間での違いもあると思うので、チャンスがあればほかの病院も見学に行ってみたいなと思います。
それではまた。
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