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わが心のキアヌ・リーヴス(ただただキアヌの思い出を語る回)

最近の新作映画の公開状況といったら、私の食指は動かされまくっておりまして、観たら観たで心の琴線をガシガシかき鳴らしてきて、さらに言うとまだまだそういう予感のある作品が控えているので、いまだ「今年のベスト」が決まる気配がありません映画部の宮嶋です。(ちなみに直近ヤバかったのは『GUNDA』と『偶然と想像』。ぜひ!ぜひ!!)

先日、「大掃除の準備をしなきゃなぁ」と思って普段触らない引き出しを開けてみたところ、大学時代のサークルの自己紹介入り名簿がきっかり4年分、なかなか良い保存状態で出てきました。北海道から東京に出てきて都会に染まるまでの4年間。はしゃぎ過ぎだし、調子に乗りすぎだし、時代性ありすぎだし、「うわー恥ずかしい」と思いながらニヤニヤ読んでいたのですが、「好きな俳優・芸能人」の欄には一貫して「キアヌ・リーヴス」と書いてありました。そうそう、私あの頃、キアヌが大好きで大好きで、大好きだったのです!

私とキアヌの出会いは(注:一方的な出会いは)、ガス・ヴァン・サント監督の『マイ・プライベート・アイダホ』。

『マイ・プライベート・アイダホ』からの1枚。パパは市長さんという“育ちの良い悪い子”という役柄が10代の私にぶっ刺さり。でも今見てもきゅんと来る素敵さ!!
© New Line Productions, Inc.

北海道の田舎の子だった私。映画館はそんなにたくさんないし、母がわりと厳しくて、実家にいる頃は友だちとの映画館通いが許されていなかったんです。しかもお小遣いも少なくて…だから、当時はよく新聞の文化欄にあった「劇場鑑賞券プレゼント」のコーナーにコツコツ応募して、親に内緒で映画を観に行っていました。(たぶん親は「熱心に新聞を読んでるな、よしよし」と思ってたと思うのですが…ごめん違ったんだよ…)それでたまたま当選したのが『マイ・プライベート・アイダホ』。

主演のリバー・フェニックスをお目当てに観に行って、リバーももちろん素晴らしかった(代表作ですよね!)のですが、相手役だったキアヌに夢中になったわけなのです。もちろん、自分の知らないギリギリの世界で生きる若者たちの痛切さに心打たれたことは言うまでもありません。独特の手触りのある映像にも感動。それまで観ていた映画とは全然違ってました。

初めて観たインディペンデント映画で、ガス・ヴァン・サントという監督を認識し、当時近所に出来たばかりだった巨大レンタルビデオ店“ブロックバスター”に通い、彼の出世作『ドラッグストア・カウボーイ』から始まって、ハリウッド大作ではない小粒な映画も借りるようになったりして。『マイ・プライベート・アイダホ』は、私の映画鑑賞史のマイルストーン的な作品になりました。そして当時のキアヌは私にとって、そういうインディペンデント映画の世界の象徴でした。

その後、キャサリン・ビグローの『ハートブルー』をまたこっそり一人で映画館に観に行ったら回りが全員男性で、だんじり状態の席取り合戦に巻き込まれたり(当時、田舎の映画館は自由席だったのです)…ちょっとびっくりしたけど、映画自体は最高にエキサイティングだったなぁ。

サーフ&スカイダイブ&潜入捜査!『ハートブルー』監督はのちに女性初のオスカー監督賞を獲るK・ビグロー。実は配信、出来てないんですよ…。必ずや!
写真:Everett Collection/アフロ


それから、好きな男の子の部屋でDVDを観ることになった時に、張り切って一番最初に持って行ったのが『ビルとテッドの大冒険』だったり…。「女の子はラブコメとか持ってくるものかと…」って言われましたが、男兄弟の長男だった彼の「女の子とは」という先入観を若いうちにしっかり壊しておけて、我ながらいい仕事をしました笑

キャリア的には『マイ・プライベート・アイダホ』よりも前。お調子者でノリノリのキアヌのキュートさよ…。『ビルとテッドの地獄旅行』もセットで観ました。
© 1987 STUDIOCANAL

ちなみに、その男の子とはその後、一緒に新宿に『スピード』を観に行った記憶があるので、このDVDセレクトは大正解だったのでは!と思っております。『スピード』のハリウッド大作感に、キアヌの成長と自分の成長を重ねてみたりして。


さてさて、そしてその後の『マトリックス』。この頃私は人生最大の大忙しテンパリ期で映画館に行くことがあまり出来ていなかったのですが、DVDになった時に母と(かつて私に映画館を禁じていた母と!感慨深い)一緒に観まして、これはもう使い古された表現ですが、斬新な演出と、形而上的な設定。自分の足元まで揺らぐような、今までの常識を覆されるような感覚でした。

アクションも、哲学的要素ももちろんですが、強いトリニティがネオを導きつつ意外なほどしっかりラブストーリーになってくとこも好きでした。あとは純粋にキアヌが美青年で見惚れる!
(C)1999 Village Roadshow Films (BVI) Limited. (C)1999 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.


しかしその後、私の興味の対象がアクションやSFから離れて、重めのサスペンスや人間ドラマ、お仕事ドラマのほうにシフトしまったこともあり、アクション志向のキアヌからはだんだん距離が…。時々思い出したように出演するドラマ作品は観ていたんですが。

それよりも、定期的に流出する「めっちゃいい人」なエピソードとか、来日した時にどこのラーメン屋さんにふらっと表れて、どこの喫茶店がお気に入りか、というような話とか、「ぼっちキアヌ」ミーム化とか、そういう文脈でキアヌの人間性に触れていたりはしました。

でもね、私、思い出したのです。去年。『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』を映画館で観ていて、「そうだ、私、キアヌのこと大好きだったんだった!」と。

あのおポンチっぷりのまま音楽好きなオジサンになっていて、感激でした!楽しかったな~。
(C) 2020 Bill & Ted FTM, LLC. All rights reserved.

ええ、まんまとあの作品のターゲットであり、マーケティングに乗せられているわけなのですが。それがもう、大変に気持ちよかったのです。「私みたいなのに見せるために作ってくれたんでしょう?観ますよ、観ますとも!むしろありがとう!!」と。そして、最高の大団円に胸を熱くしました。まぁ、内容は極めてゴキゲンハッピー系もので、そんなに胸をアツくして観る映画ではないんですけどね。アツくなっちゃいますよね。だって、わが青春のキアヌですもの。


…というわけで、こちらも待ってたんです『マトリックス レザレクションズ』!初日に行ったんです『マトリックス レザレクションズ』!!

私、口コミを結構重視するので、初日に観に行くことってあんまりないんですが。それでも『マトリックス レザレクションズ』は行きました!だって、わが青春のキアヌ(2回目)。

これからご覧になる方もたくさんいらっしゃると思うので、多くを語るつもりはありません。が、リアルタイム世代にとっては「うんうん、だよねだよね、ありがとうありがとう(感涙)」という感じでした。

ちゃんとマトリックスしてる!ネオがおじさんになって、トリニティが驚くほど変わっていなくて、かつての「見出された若者と、年上のお姉さま」のイメージから逆転していて、そして今のお互いの立ち位置もちょっと面白い!そして、アレとアレ(ネタバレ回避)、ちゃんと現代性を入れてる!

もちろんあります、この演出。「出た!」って言っちゃうやつ!
(C)2021 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED


あー、観て良かったなぁ。ありがとう、ラナ・ウォシャウスキー。

『マトリックス』(1作目)以降のSFで育った世代にどんな風に映るのかはわかりません。でも、あの頃キアヌが大好きで、その後もつかず離れずで彼の活躍を見てきた私としては、感極まるものがありました。これを機会に、来年からは、昔好きだったアクションとかSFとかも、ちゃんと観ていこうかなって思わされました。

おかえり、キアヌ・リーヴス。おかえり、私。

キアヌがラナからオファーを受けた時に思わず「えっ、僕…死んでるよね?」って答えたっていうエピソードも、キアヌらしくて好き。
(C)2021 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED



なお、そんな私がいまだに観られていないのが『ジョン・ウィック』シリーズ。だって、犬が可哀想って聞いちゃったから(涙)

次回はそんな私の愛犬家っぷりを炸裂させる映画について書こうと思っております。たぶん、きっと。予定は未定ですが。

そんなわけで、私の担当回は今年が最後です。どうぞよいクリスマスと新年をお迎えください!


最後に「Sad Kianu(ぼっちキアヌ)」、置いときますね。じわじわ。好き。

最近のご本人のテレビ番組での発言によると、「おなかが空いていたし、考えることもあったし…」なのだそうです。ハリウッドスター的自意識皆無。そんなとこも好き。




© New Line Productions, Inc.