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新時代の“スター”を探して。

映画部の宮嶋です。

朝井リョウさんの新作長編『スター』を読みました。ぐいぐい読ませるし、今の時代性の切り取り方が鮮やかでした!

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(あ、U-NEXTの電子書籍にもあるのに、書店で紙の本を衝動買いしてしまった…。面白かったし若者たちの一人称で描かれていてとっても読みやすいので、小説好きのかたは、紙でも電子でも、お好みのほうで是非!)

大学生にして、新人監督の登竜門のひとつであるぴあフィルムフェスティバルでグランプリを獲った自主制作映画の監督ふたりが、大学卒業後、それぞれ「巨匠の弟子」と「YouTube動画クリエイター」というまったく別々の道を歩む姿を描く長編です。それぞれの道で待ち受ける壁と彼らの葛藤を対比させつつ、今という時代の「ものづくり」の在り方や「クリエイター」という存在の儚さ、曖昧さについて考えさせる展開。私個人的にも日ごろボンヤリと考えていながら答えを出せずにいる部分を、プスプスと刺されているかのようでした。

「いいものを作る作り手」や「本物であること」を受け手は求めてしまうけれど、それっていったい何なのか。どういう状態が「上質」で「本物」なのか。「スター」の輝きって何なんだろう。

周囲がどう言おうと、自分の心が揺さぶられなければ「上質」ではないし、作り手が心を傾けて注ぎきって作っていなければ「本物」ではない。でもそれって、誰もが発信者になれちゃう時代、唯一無二のスターが生まれにくくなった現代では、受け手がたくさんの「作品」にふれて、出会って、自分の“小さなスター”を自分で見つけていく時代なのだろうな、と思ったりしました。

ここ数年、U-NEXTの映画部メンバーは、国内の映画祭のコンペ作品を積極的に拝見してきました。コンペ作品というのは、基本的に自主制作映画。インディーズ映画、インディペンデント映画とも呼ばれます。劇場で上映されたり、DVD化されたり、どこかで配信されたりすることが決まっているわけでもなく、誰かの思いの強さと熱さによって作られる作品。多くはプロ未満のクリエイターたちによる、個性あふれる作品です。

作り手たちが心血を注いで、注いで、注ぎすぎてちょっとイビツになるくらいの、その人だけの世界観。綺麗にまとまっているわけではないけれど、作る人が何にも縛られずに心から作っていることが感じられて、だからなんだか心に響く作品。こういう人たちが、いつか、もしかしたら“スター”になるかもしれない。そんなクリエイターたちの作品に、映画を愛する人たちが、もっと出会いやすくなればいいなぁ。

そんな思いで、U-NEXTではいくつかの映画祭の皆さんと相談し、まずはこんな取り組みを始めました。

下北沢映画祭のコンペ作品はすでに配信中。バラエティ豊かな作品群で、すでにたくさんのかたに観て頂いています。初めて自主制作映画というものをご覧になったかたもいらっしゃるなら、そしてその自由さと面白みを知っていただけたなら、とても嬉しいです。

そして今日10月23日からは、東京学生映画祭のコンペ作品の配信が始まりました。大学生や映画学校などに通う現役の学生さんたちならではの、伸び伸びとした作家性の発露をご覧頂けたら、と思っています。

また、10月31日から六本木をメイン会場にしてリアルとオンラインの両方で開催される東京国際映画祭(TIFF)についても、U-NEXTはメディアパートナーとして盛り上げていきます。この映画祭では、世界中の素晴らしいインディーズ映画が紹介され、のちに日本で商業化されることもあります。映画祭で気になった作品に配給会社がついて改めて劇場公開されると「やっぱりね!」なんて、正直嬉しいですし(笑)、個人的には、劇場で観て感動した作品について調べてみたら日本でのお披露目が前年のTIFFだった…なんてことも多く、見逃せない映画祭です。

「スターが生まれにくい時代」と言いながら、わざわざそんな風に言ってしまうのは、きっとみんなスターを待ち望んでいるから。もしかしたら、今の自主映画のフィールドから、世界が熱狂するようなビッグスター・クリエイターが生まれるかもしれません!

自主制作映画・インディーズ映画の世界、ぜひ楽しんでみてください。