見出し画像

【夢日記】#23 おぞましい

赤ちゃんが産まれるということで、母と友人が手伝いに来てくれている。私は実家の和室にひとり横たわり、ナースコールを片手に時を待った。

産み落とした。そしてすぐにその新しい生命体を抱き上げ、存在を確認した。
なんとおぞましい見た目。頭が異常に大きく血管が浮き出て、胴体はホルマリン漬けにされたようなビニールのような質感の白すぎる肌色。まさか命がそこに宿っているとは到底信じがたい歪な存在感だった。気色が悪くて直視できない。まるでこの世のありとあらゆる恐怖をひとまとめにしたような、ものすごい嫌なエネルギーを保有している。
私は悪魔を産み落としてしまったのかもしれない。この子を育てたら大変なことになるかもしれない。この先が恐ろしくなった。しかし、産まれてきてくれたということ自体は不思議と嬉しく思えていた。殺すわけにはいかない。気持ちを切り替えた。

さて、まず産んだ後あとはどうすればいいのだろうか?はじめての出産育児で右も左もわからない。助けを求めて母と友人を呼んでみた。が、まるで他人事。
たぶん母乳あげるんだよね?と私がひとりでぼやいてると、赤ちゃんが私の乳房を目指して手を伸ばしてきた。すごい本能だなと驚いた。しかし母乳は出なかったようだ。
そうか、母乳が出るように出産数時間前から母乳マッサージをしなければいけなかったのに忘れていた。困ったな。そういえば段ボールに搾乳機などがあったはずだ。
慌てて段ボールを開けた。しかし産後で説明書を読む体力がない。母と友人は相変わらず隣の部屋でのんびりごはんを食べている。
手伝ってくれないなら何のためにいるんだ。私は全てが嫌になって赤ちゃんごと放棄した。

しばらく経つと、やはり気になって赤ちゃんを探した。だがどこにもいない。ゴミ屋敷と化したこの家の中から探し出すのはかなり困難だ。私はナースステーションに行って助けを求めた。
ナースとの面談は予約制らしいが、奇跡的に1人だけ空いてると言われた。20代じゃないけどいいですか?と確認されたが、逆にベテランの方がいいですと答えた。50歳くらいのほがらかなナースがやってきた。
事情を説明し、赤ちゃんを私の代わりに探してもらった。探す体力などなかった。
私はもしかしたら餓死しているのではと不安になって「母乳が出なくて産まれてから8時間なにもあげてないんです。大丈夫ですかね?」と恐る恐る尋ねた。
すると、ナースは「大丈夫よ。赤ちゃんは、母乳を飲んで初めて血が流れて命がはじまるの。まずは探しましょう。」と、よくあることのように答えてくれ、心から安堵した。ついでに親も友達も何も手伝わずテレビをみながら過ごしていることへの不満をナースにぶちまけた。ナースは真剣に同情してくれ、少し救われた気がした。

赤ちゃんが見つかったようだ。急いで姿を確認しにいった。しかし、私はあまりの不気味さにすぐに目を覆った。
赤ちゃんの手の甲に星とハートとクローバーのマークがついた細い小さな短剣が3本ずつ整列して刺さっていたのだ。顔にもどうやら何か針のようなものが刺さっている。私は声を振り絞って「え、い、生きてますか?」と尋ねてた。すると、ナースはまたこれもよくあることだというような冷静さで「大丈夫生きてる。まずはこの短剣を抜かないとね。」と、淡々と作業に入った。おぞましい姿の我が子に吐き気がした。


2022/6/29

この記事が参加している募集

#眠れない夜に

69,412件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?