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コラム 「今まで知らなかった炭素循環の真実」

 環境ビジネスやその尻馬にのる大衆心理について、疑念を持っています。いわゆるカーボンサイクルについて勉強をして、なぜ植物を増やすことが大切なのかについて改めて知ったことがあります。


増えている大気中の二酸化炭素はどこにいくのか

 植物が地中の水分を蒸散して、雲ができて雨が降ります。そうするとその雨の中にCO2が溶けて炭酸になります。

 この炭酸を含んだ雨が、岩石(ケイ酸塩岩)にあたると風化を起こして、重炭酸塩が出て河川から海に流出していきます。これが、海で貝殻の原料になってCO2は固定され、海洋生物が死ぬとCaCO3(石灰)として海底に堆積していくわけです。(これが、農業でお馴染みの石灰です)

 この海底に堆積した石灰がどこに行くのかというと、なんとプレートの移動で地下深く沈んでいって、熱で溶けてマグマになる。つまり、大気中のCO2はマグマになり、火山活動で再び放出されるまで地底の奥底に行ってしまうんですね。

地球が温暖化するとどうなる?

 CO2濃度が高まって温室効果で温暖化が進むと、ケイ酸塩岩の風化が促進されて、大気中のCO2濃度が低下し、今度は寒冷化していく。これが長いサイクルで地球上で繰り返されているわけです。

 要は長い目で見れば、これまでも温暖化は解消されてきているということです。これは発表者のJames C.G. Walker氏の名前を取り、ウォーカー・フィードバックと言われています。

 この風化によるCO2吸収を人為的に促進しようというのが、岩石風化促進技術Enhanced Rock Weathering(ERW)で、David .J.Beerling氏の論文などを読むと興味深いです。最近、日本でもNEDOのムーンショット型研究開発事業で取り上げられています。

植物はどう二酸化炭素の削減に貢献してきたか

 4億年前と推定されていますが、植物が地上に進出した頃は大気中のCO2濃度は今の15倍あったようです。そして、気温も高かった。植物目線で見れば、CO2が増えるのは喜ばしいことなのかもしれません。

 こんな中で、植物がどう進化したかというと、ウォーカー・フィードバックでCO2濃度が低下してきた為、より多くのCO2を取り込むために気孔を増やす必要が生じ、葉枚数や面積を増やし、枝を伸ばし、光を求めんと大型化していくわけです。

 気温もまだ高く、葉を進化させることで水分を蒸散させ、大型化には暑さを和らげる効果もあった。やがて、植物が増えて蒸散が増えると、大気中の水分が増えて雨になり、今度は水が循環するようになります。

 植物が大型化すると水を吸う根も発達し、菌根菌が出す有機酸が増えて、水の循環と共に岩石の風化が促進され、ウォーカー・フィードバックが加速していく。

 こんな感じで森林が形成され、現在のCO2濃度になっていった歴史なんですね。
現在化石燃料となってCO2を増やす原因になっている、過去のような植物の大繁栄時代が再び訪れれば良いのです。

 森林破壊がダメとされているのは、大気中のCO2固定機能が損なわれるのもありますが、蒸散による水の循環機能が失われて、降水量が減ってしまうことで、さらに森林が減少し、最終的には砂漠化。結果的にウォーカー・フィードバックが減衰してしまうこともあると思います。

これからの栽培はどうすれば良い?

 DNAに刻まれた進化の歴史の結果、植物にはCO2濃度が高くなると、一生懸命CO2を取り込まなくても良くなり、気孔を減らす遺伝子があるようです。

 進化を巻き戻してみるように作るなら、まずは菜園に木を植え、次にソルゴーやトウモロコシのような大型の植物で日陰を作りながら育て、次に葉がコンパクトで気孔の数が少ない作物にシフトするといったような、植物の進化の逆をたどってCO2が多い環境に合うような栽培が必要になってくるのではないかと想像しています。

 乾燥砂漠化が進むのであれば、陸上に進出するにつれて乾燥に強いグラム陽性菌が進化した歴史を踏まえると、意図的に共生植物を植えるか、湿度を保つ環境を構築してグラム陰性菌でバランスをとる病害コントロールも必要になるかもしれません。

 最近は論文をキーワードでAI検索できるscite.aiのようなサイトもありますし、ブラウザに翻訳機能もついていますので、最先端の研究から栽培のヒントを探していくのも面白いと思います。

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