人類が滅亡する確率を求める研究 リスクは核や気候変動のほかにも

核戦争や気候変動への警鐘を鳴らすために、強い言葉や数字が使われるようになった。米国の科学者らはロシアのウクライナ侵攻を受け、「地球滅亡まで残り90秒」と発表。冷戦期よりもリスクが高まっていると指摘した。国連のグテーレス事務総長は、観測史上最も暑い7月となる見込みを受け、「地球沸騰」と表現した。

 背景には、危機が迫っているにもかかわらず、対策が進まない現実があるだろう。将来のリスクをわがことととらえ、対策を立てるには、どうすればいいか。気候変動をはじめとする世代にまたがる問題を「正義」の概念を用いて論じてきた法哲学者の宇佐美誠・京都大学教授に聞いた。

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 ――核戦争や気候変動のリスクが強い表現で指摘されますが、危機意識は高まっているでしょうか。

 若い世代の一部で危機意識が高まっているものの、日本では総じて、危機意識は高いとは言えないでしょう。もともと人間はリスクを認識することが苦手です。たとえば飛行機事故の確率は自動車事故に比べればはるかに低いのに、飛行機に乗るのが怖い人はいますよね。どんな数字や言葉を用いて警告されても、危険を具体的にイメージできないことはあります。まして安全保障や気候変動は、メカニズムが大規模で複雑です。研究が進むほど、専門家ではない人には理解が難しくなっていくことでしょう。

核戦争や気候変動などの大規模で複雑なリスクを、わたしたちはどう認識し、どのように対策を立てていけばいいのか。宇佐美教授はその手がかりとして、欧米で先行する「存亡リスク研究」に注目していると言います。人類が滅亡する確率を求めるそうですが、どんな研究なのでしょうか。

 危機意識を高めることは難し…

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