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クリエイティブの作用点

デザインには力がある。

あるパン屋さんが看板を変えただけで劇的に売り上げが伸びたり、営業マンが名刺を変えるだけで成績がよ良くなったという事例もあります。もちろん、商品のパッケージが訴求性の高いものであればよく売れる。

デザインを依頼するクライアントも、そういった「効果のある」デザインを求めている場合が殆どです。それはデザイナーとクライアントが同じ会社内の人間であれ、別の会社の人間であれ、同じことです。

これを読んでいるあなたが、もし上達を求めているデザイナーであるなら、今一度自分に質問してみてはいかがでしょうか。

このデザインは誰の為のものだろうか

または

この商品は誰を幸せにするものだろうか

ずいぶん初歩的で当然のことのようで、ついつい見落としてはいませんか?

私が会社に勤めている頃もフリーになってからも、舞い込んでくる仕事でよく疑問に思うことがあります。

「この商品は誰が幸せになるんだろう」

すなわちクライアントが売り上げを立てることだけを目的に出来上がった商品・サービスです。

・毎年新作を出さないと埋もれてしまう

・上に顔向けできるように、なんとか新作を作らないといけない

その商品・サービスを手にした顧客の満足は二の次で、営業の勢いあるいは製造の事情だけで出来上がるモノというのはたくさんあります。

本来なら、消費者の生活の質を上げることを第一目的として、逆算して出来上がっているのが理想のモノづくりだとは思いますが、まぁそんなことも言っていられない事情があります。

そこまで企画を煮詰める時間的余裕がないとか、新たな試みにかけられるコストが限られているとか、だいたいはそんな所。

要するに、テキトーに出来上がったモノのデザインをしなければならない場面というのは多々あります。

さぁそこで「なんだよこんなもん」と思ってお仕事に取り掛かると、ロクな目に合わないことはお察しがつくでしょう。コンセプトが読み解けないまま手癖で始めたデザインは往々にして難航します。

気乗りしないものって素早く返事できませんよね。

待たされた挙句それを見たクライアントの表情も曇って、なんかちがうんだよなぁと言いつつアレやコレやと口を出し始める。結果、リテイク回数は重なり、納期は押せ押せの地獄絵図。

何より、デザインしているあなたのモチベーションが下がる。

そういうときは、いっそ直近のクライアントの為にデザインをすることにします。

だいたい、デザイナーのあなたに十分な情報がまわってきていないということは、クライアントの中でもぼんやりしているものです。なので、それをこちら側でハッキリさせてあげる。

・この商品のターゲットは?男性?女性?年齢層は?

・どんな色がいいのか?

・どんな雰囲気がいいのか?

一旦、そんなものは先方にないんだなと決めてしまいましょう。

そのうえで、こちらでよしなに作ってみる。そこで重要なことはクライアントの過去のテイストに合わせる必要はないという点。

あなたが正しいと思う、あなたが美しいと思う、あなたがやりたいと思うデザインをたたきつけてやりましょう。

目新しくて自信にあふれたデザインが出来上がったなら、前例がないからといって無下にされることはないでしょう。

あなたはただ、自分の思う正しいデザインをする必要があるだけです。

消費者に訴求できているかどうかではなくクライアントが消費者に訴求できるという自信を持つことが重要です。

実は、デザインが良くなるだけで売れる商品はそうありません。そこに至るまでの様々な努力や計算、そしてちょっとの運があって初めてヒットする商品・サービスが生まれます。

デザインの持つ力というのは、売れるはずのモノを正しく伝えるまたは売れそうにないモノに自信を持たせるという力の方が大きいように感じています。

要するに商品・サービスそのものやそれらを作る/売る人々のパワーの減退を取り除くのも、デザインが担う役割の1つであるということです。

よくデザインは見る人のためのものと言われますが、決して消費者・購入者だけを考えなければならない、というわけではないのです。

クライアントもあなたもデザインを見る人であることに変わりはありません。

それで消費者に伝わらなかったら売れないじゃないか、というお声が聞こえてきそうですが、販売者が自信を持てる商品ならば、扱いそのものが変わることもあり得ます。

なんでもないワクを埋めるだけの適当な企画だった商品が、今シーズンの目玉商品に化けることだってあり得ます。

少なくとも、あなたの仕事は信頼され、より多くの相談が舞い込むことになることは間違いありません。

まずは手の届く範囲から気持ちよくしていくということも、良いデザインを生み出す策として覚えていていただけたら幸いです。

なにより、楽しく自信を持ってお仕事ができる。それはとても素晴らしいことだと思います。

今回はこのへんで。

良いデザインライフを。

お目通しいただきありがとうございます。サポートも受け付けていますが、そんなことよりも自分の暮らしを豊かにしましょう。 そのうえで、私に施すことであなたの気持ちが幸福に傾くようであればぜひお願いします。