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【実話】兄の生まれ変わり?前世の記憶を持つ息子


ハーニー

アメリカ・コロラド州に住むトレニーは4人の子供の母親である。第2子のノアは、小さな時からいつも笑っているようなやんちゃな男の子。生後9ヶ月で歩きはじめ、1歳半で四輪バイクを乗り回す一方で、頑固で怒ると頭を床に叩きつけたりもした。

言葉を話せるようになるとスピーチ障害が見られ、なかなか聞き取れないでいた。

ある日3歳のノアを乗せて運転していると、ノアがバックミラー越しに見ていて「ママ、ママ、ママ、ママ!」と何度も繰り返し呼ぶ。

子供が母親の注意を引くためにママと呼ぶのは良くあることだと、トレニーは何も反応せず運転を続ける。

するとノアはバックミラーをにらみながら

「畜生、聞けよ、ハーニー!」

と言った。

トレニーは幼い息子が悪い言葉を使ったことに加え、ハーニーと呼ばれたことに動揺し停車した。最後に誰かからハーニーと呼ばれたのは、兄が生きている時。よく親しい間柄で使われる「ハニー」ではなく「ハーニー」という、意味を持たないニックネームなため、両親も友達も、兄以外の誰からもハーニーと呼ばれることはなかったのだ。

トレニーの兄クレイグが亡くなったのは1993年で、ノアが生まれたのは1998年。トレニーのニックネームがハーニーだと3歳のノアが知る由はない。

しかも、その言葉を言った時の発音は明確で低音。到底スピーチ障害のある3歳の子には出せるような音ではなかったのだ。震えたトレニーは母マリーに泣きながら電話をかけていた。その間、後部座席の娘がノアに

「なんでママをハーニーって呼んだの?」

と聞くと、ノアは

「だって彼女はハーニーだから」

と答えていた。

そしてトレニーをバックミラー越しにまっすぐ見ると

「自分がハーニーだと知ってるよな」

と念を押すように言った。

母マリーは娘の話を聞いても、亡くなった息子クレイグと孫のノアに関連があるとは思っていなかった。

スパイプレーン

やがてノアは母をニックネームで呼んだことも忘れ、普通の発音障害のある子に戻っていた。するとまたある出来事が起こる。

テレビを観ていた時、何台ものヘリコプターが飛ぶシーンが映されると、ノアはそれを指差し、「スパイプレーンだ」と言った。この時も、どもりもなく発音が明確だった。

トレニーが「スパイプレーンを知らないわよね?」と聞くと、ノアは「知ってるよ、ダディと一緒に見に行ったから」と言う。そこでトレニーが夫に確認すると、そんな覚えはないと言う。

もしかしたら本やテレビで見たのかもしれない。想像力の豊かな子供なら珍しくはない。母マリーはそう言った。

トレニーの父は元マリーンで、ベトナム戦争時代に母と兄は一緒に沖縄に駐在していたことがある。トレニーが父にスパイプレーンについて聞いてみると父は、一度ベースに来たことがあり、兄クレイグを連れて見に行ったことがあると言う。色も黒でノアが言うものと一致していた。

トレニーの家には父が軍人だったことの写真もなければ、亡き兄が沖縄に住んでいた写真もない。父は州外に住んでいて、孫たちとの交流も数えるほどしかなかった。昔祖父が伯父を連れてスパイプレーンを見に行ったことなど、ノアには知る由もないのだ。

ノアはダディと一緒にスパイプレーンを見に行ったと言い張る。もはや想像で言っているようには思えなかった。トレニーは亡き兄とノアのつながりを否定できないでいた。

事故の記憶

ノアが4歳の時のこと。家族でレストランで食事中、ノアが突然椅子に立ち上がって言った。

「前にここにいた時、僕は死んだんだ」

こことはどこのことかと聞くと、「ここだよ、ママ、ここ」と繰り返す。そこで地球にいた時?と言うと、「そう、地球にいた時」と答えた。

そして手をクネクネさせ、「曲がりくねった道を運転していた時に事故に遭って、車が燃えて僕は死んだんだ」と言う。

それを聞いたトレニーは鳥肌が立った。まさにそれは兄クレイグが事故に遭った時の状況だったのだ。

兄クレイグは亡くなった日、友達とフェスティバルで行われたコンサートに行っていた。母マリーは夜中の3:20に目を覚ますが、外を見るとクレイグの車はない。
息子がまだ帰っていないことを知った彼女は眠れないでいた。

翌朝、別れた元夫から電話があり、クレイグが事故に遭い、亡くなったことを告げられる。単独事故で車は横転し、クレイグは車から投げ出され、車は燃えた。

あとで分かったことは、トレニー、トレニーの父、母の3人がそれぞれ違う場所で午前3:20に目を覚ましたことだった。おそらくそれがクレイグが亡くなった時間だったのだろう。

トレニーも他の家族も誰もノアにクレイグの話をしたことはない。クレイグは飲酒運転で、周りが止めようと車の鍵を取り上げようとしたにもかかわらず、運転して帰った結果の事故死だった。3歳の子に話すのは早すぎると判断していたため、ノアは伯父クレイグの存在さえ知らないはずである。

20年前に他界した兄の影響は大きく、兄のことは封印していたが、ノアが兄の生まれ変わりだという確信は日々強くなってくる。

フロッギー

マリーは生まれ変わりに関しては懐疑的だったが、あることを機会に一変した。孫のノアが泊まりにきた時、ベッドで寝かしつけているとノアが言う。

「おばあちゃん、フロッギーは?」

どういう意味か聞き返すと、ノアは言った。

「僕がいつも一緒に寝てるフロッギーだよ。分かるでしょ。」

マリーは信じられなかった。フロッギーの色を聞くと、黄色だと言う。

突然、息子クレイグのフラッシュバッックが始まった。ハンドメイドのフロッギーはマリーの妹が作ってくれたもの。6歳の頃にもらって以来、クレイグはいつもフロッギーと一緒に寝ていたのだ。

マリーは子供たちが大きくなってからも、お気に入りのおもちゃをいくつか保管していて、フロッギーもその中のひとつだった。フロッギーを孫たちに見せたり使わせたことは一度もない。

自分の耳を疑ったマリーは、クローゼットからフロッギーを取り出し、ノアのところへ持っていく。

「このフロッギーのことかしら?」

ノアの目はたちまち大きくなり、とびきりの笑顔でフロッギーを抱きしめ、「僕のフロッギーだ!」と喜んだ。

様々な思い出が蘇ったマリーは目を潤ませていた。クレイグはどこへ行くにもフロッギーと一緒で、フロッギーなしではどこにも行けなかった。

ノアにはフロッギーの話をしたこともなければ、見せたこともない。この子は何か特別なものを持っていると感じた瞬間だった。そしてこれまでに起こった不思議な出来事と合致する。もはやノアがクレイグの生まれ変わりである以外、他に説明のしようがなかった。

前世からのレッスン

マリーは、ノアは自分の息子ではないけれど、クレイグと魂を共有しているのだと安堵し、恵まれていると感じるようになった。

ノアが中学に入り、苛立ちを見せるようになると、トレニーには、息子が兄の中学時代の姿と重なって見えた。息子が兄の生まれ変わりであるならば、怒りと困難に立ち向かう人生になる。

クレイグは思春期に良くない決断をし、荒れた時期を過ごした。トレニーはノアに同じようことが起こることを恐れていた。

しかし幸運なことに良いセラピストに恵まれ、ノアの内なる怒りの感情は徐々に改善されていく。ノアの変化を見ながらトレニーは、同時に兄を救っているような気持ちにもなっていた。

ノアはバランスの取れた少年に育っていき、自身も自分が伯父の生まれ変わりだと信じている。前世で悪い決断をしたため、人生をやり直す機会を与えられているように感じていると言う。

車の運転をし始めるようになっても、ハンドルを握るからには、自分の決断がいかに自分や他人を傷つけるかを理解していた。伯父を通して、過去に犯した失敗を体験しているのだ。

母トレニーの息子として生まれ変わったのは、クレイグがトレニーを見守りたかったのではないかと感じ、自分がその役割を担うつもりでいる。

マリーは、クレイグは家族と再びやり直す機会がを与えられていると感じている。そしてノアが前世よりはるかに幸せな人生を送っていることでクレイグの魂も癒され、前向きに前進していると信じている。


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