見出し画像

OriHimeから考えるオンライン旅に必要な条件

 OriHimeというものをご存知だろうか。自らを対孤独の研究者として位置づけ日々研究と開発を行う吉藤オリィ氏が開発した分身ロボットだ。

OriHimeがどんなものであるかは調べればすぐに出てくるので詳しい説明はここでは割愛するが、簡単に言えば離れていてもその場に「いる」ことの実現を目指す小型の半人型ロボットだ。これを使えば、例えば離れた所から会議や結婚式、卒業式等に参加したりすることができる。操作する側は離れた所から景色を画面越しに見て、マイクを通して話したり、簡単なジェスチャーをすることもできる。一方でOriHimeが分身として参加している場では、そこに分身としてのOriHimeが存在し、それを通して主体と交流できるという相互交流性が生まれる。ただカメラを付けただけの中継とはここが異なる点であり、そこにカメラが「ある」だけではなく参加者が「いる」ということを可能にする。ここまでの説明ではOriHimeが個人の分身として使われているが、これが実際の対人には劣ると短絡的に考えてはいけない。オンラインだからこその利点もあり、例えば対面が苦手な顧客には受けるかもしれないし、無人レジでは感染対策として安心だという声もある。人には聞いてほしいが対面だと気が引けるというカウンセリング等にも使えるかもしれない。カウンセリングに使った例はまだない(知らないだけかもしれない)が、最近では某県庁が案内役として、モスバーガーが無人レジとしてOriHimeを導入したりと、重度障害等によって外出が困難だった人たち、今までサポートを受けるだけのことが多かった人たちが活躍する機会を創出している。

 ところで、コロナ渦のニューノーマルとしてオンライン旅等というものが出てきているらしい。OriHimeも旅する人が持っていってくれさえすればオンラインで旅に参加することができる。前置きが長くなったが、今回はこのオンライン旅について考えたい。個人的には現状オフライン旅の方が好きなので、オンライン旅がどのように進化すればそれでもいいかな、と思えるかをいくつかの側面から考えていきたい。

①費用: オフライン旅でかかるような費用、つまり交通費、宿泊費はかからない。だから格安になって欲しい、というか安くなければあまり魅力的には感じない。現状のオンライン旅がどうなっているかは詳しく知らないが、無駄を省けるという意味では資材さえ揃えてしまえば(あるいはレンタルすることによって)費用は抑えられるから、これはオンライン旅が勝るだろう。

②準備: ズボラな私にとって化粧をしなくていい、髪をセットしなくていい、着替えなくてもいいという観点ではオンライン旅が圧勝する。ただし写真は撮れないので、撮りたい場合には結局おめかししないといけない。家に帰るまでが遠足であるように、旅の醍醐味である(と思っている)余韻に浸れないのはマイナスポイントだ。

③体力: 歩いたり移動したり車を運転しなくてもよいので体力的にはこれもオンライン旅が勝つ。ただしこれに楽しみを見出す場合もあるため一概にいいとは言えない。あるいは山登りなどのアクテビィティをするにあたってはある程度身体を動かして疲労するという要素が重要かもしれない。

④食事: 現地ならではの食べ物を食べたいが家では食べられない。これはオフライン旅が勝つ。ただし事前に自宅で用意できるようなセットが家に届くようなシステムがあれば意外となんとかなるかもしれない。おしゃれな雰囲気を楽しんで、となるとこれは難しいのでオフライン旅に軍配が上がる。

⑤景色: 現状ではオフラインがよい。ただし匂いや何かに触れた時やそよ風の感触が感じられるのであれば、これも意外と何とかなるかもしれない。

⑥出会い: 何となく入った店、宿や美術館での予想できない出会いはオンラインだと難しい気がする。「レディ・プレイヤー1」のように仮想世界でアバター同士が認識し合えるような環境が整えられればここも克服できるかもしれない。

 いくつか考えてみると、現状ではオフライン旅の方が私には魅力的に感じる。どんなに視覚の部分が克服できたとしても五感のその他の要素を補うことができなければオンライン旅で同様に満足することは難しいと思う。もとより、オフライン旅と同様の満足感を求めることがナンセンスであり、オンライン旅はオンライン旅と価値観を転換させる必要も消費者側の宿命としてあるのかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?