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Netflix で話題の R18 韓国ドラマの技術解説 キングダム|Sweet Home|今、私たちの学校は...

2021 年に約 550 億円の出資を受けて、近年さらに勢いを増す韓国の Netflix  ドラマ作品。愛の不時着、梨泰院クラスなど “ヒューマンドラマ” の印象が強い韓国ドラマの常識を覆す、話題の R18 作品の撮影技術の解説をしていきます。

当記事は、動画制作のオンラインサロン 『UMU TOKYO』で公開されたものです。限定公開を目的に有料化しています。公開日:2022.2.15
https://community.camp-fire.jp/projects/view/231393

1. 韓国映画をとりまく環境の変化

Netflix は 2021 年までの 6 年間で、韓国の映画産業に対しておよそ 1,320 億円 もの投資をしています。また直近の 2021 年に韓国に投じられた約 550 億円($500M)は、Netflix が投資するアジア圏全体への投資額のおよそ半分にも及びます。

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こうした Netflix からの出資以外にも、韓国の映画産業は 2007 年に政府系機関『映像振興委員会KOFIC)』が 立ち上げた 400 億円 規模のファンドより、さまざまな支援を受けています。直近では、KOFIC は 2021 年にコロナ対策として、韓国の映画産業に対して約 20 億円 の支援を行っています。

また施設に関しては、2017 年に韓国政府は国内最大級となる撮影スタジオ(1136坪)を備えた放送映像制作センター『Studio Cube』を設立しています。そして 2021 年には、Netflix が総面積 2700 坪の『YCDSMC - Studio 139』、同じく 2100 坪の『Samsung Studio』を韓国ドラマ専用の撮影スタジオとするリース契約を結んでいます。

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韓国の Netflix ドラマといえば、2021 年に Netflix 史上最大級のヒットを記録した『イカゲーム』が記憶に新しいところですが、この 5 年間で Netflix で話題になったおもな韓国ドラマをまとめると、以下の感じになります。

愛の不時着、梨泰院クラスなど “ヒューマンドラマ” の印象が強い韓国ドラマですが、近年はグロテスクな表現が満載のホラー、サスペンス作品の人気が高まっています。とりわけ、怪物やゾンビを題材とした作品が多い印象ですが、この記事では、韓国ドラマを牽引する R18 作品の撮影技術の解説をしていきたいと思います。

Netflix で話題の韓国ドラマシリーズ
・愛の不時着(2019年)
・キングダム(2019年)
・梨泰院クラス(2020年)
・Sweet Home(2020年)
・人間レッスン(2020年)
・地獄が呼んでいる(2021年)
・イカゲーム(2021年)
・今、私たちの学校は(2022年)

2. 今、私たちの学校は...

2022 年 1 月に公開された JTBC Studios(Film Monster)製作の Netflix ドラマ『今、私たちの学校はAll of Us Are Dead)』は、学校に蔓延するゾンビウィルスにより、死に直面する高校生たちを描いたサスペンス作品です。

製作費に関する情報はまだありませんが、その視聴数は 10 日間で 3億6,000 万時間を超え、世界 94 ヶ国でトップ 10 入りを果たすなど、2021 年度の大ヒット作品『イカゲーム』にも迫る勢いとなっています。2月15日現在、日本でもランキング 1 位の状態が続いています。

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📷  All of Us Are Dead - IMDb

Behind The Scenes 映像を見ると、カメラは ARRI ALEXA Mini LF、レンズは Zeiss Supreme Prime とズームレンズ(型名不明)、グリップ機材に関しては GF 社の大型クレーン、ジンバルは MOVI PRO、サポートリグは Tilta Armor Man が使われているようです。

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📷  All of Us Are Dead|Meet the Cast|Netflix

撮影地は校庭や街中などのロケセット以外に、全長 100m におよぶ 4 階建ての巨大な学校の美術セット が使われており、校内や屋上などの場面は、クロマキースクリーンが貼られたスタジオ内で撮影されています。

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📷  Making Of ALL OF US ARE DEAD Part 3|Netflix

日中の屋外シーンに関しては、光にやや不自然さが感じられますが・・

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📷  All of Us Are Dead|Making Of|Netflix

実際に Behind The Scenes の映像を見てみると、空の明るさ(天空)の再現のためのスペースライトやバウンス光など、空間全体をやわらかく照らす照明装置がなく、天井に ARRI SkyPanel が 1 列だけ設置されており、このあたりが光の不自然さを感じさせるおもな要因となっているようです。

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またゾンビと格闘する場面では「ワイヤーアクションwirework)」を使った本格的なアクション撮影が行われています。こうした場面では、日本でよくある Easyrig ではなく、ハンドヘルドリグを使った手持ち撮影が多用されているようです。

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🏢  JTBC Studio とは?
作品を手がけた JTBC は、韓国で衛星放送やケーブルテレビ向けに放送をおこなう中央日報系(新聞社)のテレビ局で、傘下にある制作会社『JTBC Studios』は、人気の Netflix ドラマ『梨泰院クラス』をはじめとした映画・ドラマの制作を手がけています。2017 年から Netflix とパートナーシップを結んでおり、2021 年には米国進出が計画されています。
https://www.jtbcstudios.com/

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