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映画の基礎知識・絵コンテは描くべきなのか?|DailyTalk 52

From 2020/2/24・#DailyTalk
おはようございます。今日は映画撮影の「絵コンテ」に関するお話です。話題の映画(パラサイト、Last Letter、カメラを止めるな!)を参考に「絵コンテは描くべきなのか?」を考えてみます。

絵コンテとは?

CM もそうですが、映画の撮影では、おもに出演者・スタッフ向けに、撮影カットのイメージを共有するための「絵コンテStoryboard)」が描かれることがあります。

最近では、アカデミー受賞作品『パラサイト 半地下の家族』の絵コンテ集が SNS で話題となっていますが、ざっくりまとめると、絵コンテにはこんなことが書かれています。

・撮影するカットのイメージ画
・場所の説明
・役者のセリフ / 動き
・カメラの動き
・照明・舞台装置・VFX の効果

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パラサイト 半地下の家族・絵コンテ集http://japan.hani.co.kr/arti/culture/35720.html

パラサイト 半地下の家族・絵コンテと本編の比較動画https://youtu.be/Qq36iIb8V8o

ちなみに日本の TVCM では、クライアント企業とイメージを共有する意味で、おそらく90%以上の案件で「絵コンテ」が描かれています。

絵コンテは描くべきなのか?

ご覧のとおり、絵コンテは監督の思い描くイメージを共有する上では、かなり有効な手段となりますが、実際のところはどうなんでしょうか?

映画『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督は Twitter で、こんな投稿をしています。

「パラサイト」絵コンテ集読み始めてるんだけど凄い。たぶん全シーン、カメラワーク含めて詳細に書かれてる。これだけ書かれてれば現場の負担はかなり減り、浮いた時間で新たなクリエイティブができる。ただ絵コンテは一長一短。プランは固まるが縛られる恐れもある。日本は書く人少ない印象。
 
僕もある時期から書かなくなった。カメ止めもスペアクも書いてない。基本的に現場で芝居を見た後に撮影監督と共にカット割りを考えてる。ただ絵コンテの有効性も改めて考えたいなって思った。あと日本は書きたくても「書く余裕ねえ!」って場合も多いと思う。準備に予算と時間がかけ辛いからだ。
引用元:https://twitter.com/shin0407/status/1227233069767151617?s=21&fbclid=IwAR3XdHYqOV6mSVaSYGS3JOPPLZj7yU9LrQTHpV89efIzTTHKLb7bqbgrGu0

個人的な感想としては「日本映画の“現実”をよく言語化してる」という感じがします。これは MV にも言えると思いますが、日本映画の撮影では、絵コンテが描かれることはすくない印象です。

そこには、制作予算の問題もあると思いますが、契約社会のアメリカと違って、出資者に対する「説明責任」がゆるい?という、日本の文化的な背景も個人的にはある気がします。

岩井俊二監督の最新作 『Last Letter』

よく一緒にやる撮影アシスタントが、岩井俊二監督の映画を担当していたんですが、岩井さんの撮影現場では「絵コンテ」はもとより、セリフもその場で決まったりするそうです。

最新作『Last Letter』の撮影現場でも、スタッフは台本を持ち歩かず、臨機応変に撮影を進める場面も多かったようです。そんなスタイルも実際にはある、ということです。

結論

結局、撮影に「絵コンテ」は必要なのか?
答えは2通りあるような気がします。

1. 映像制作のイメージを共有する上では「絵コンテ」は、あくまでオプションのひとつに過ぎないと言える。
2. 出資者やクライアント企業に対する「説明責任」として、また撮影現場をより効率的に動かす上では「絵コンテ」は、とても有効に機能する。

ではでは・・
みなさま明日もよい1日を!

UMU TOKYO 代表
Kaz Ohata|シネマトグラファー
https://vimeo.com/kazohata

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