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休職日記 #31 定時退社

復職前には慣らし勤務をするのが決まりらしく、仕事という訳ではないが定期的に出社して、事業所内にあるシェアスペース的な場所で時間を過ごしている。やっていることも単に自学自習なのだが2か月強、勝手気ままな生活を送っていた人間にとって9時~5時ですら拘束されるというのは、なかなかしんどいもので、帰宅後はひとまず横になるという状態が続いている。こんな状態で復職なんて本当に大丈夫なのかという不安は正直あるが、いつまでもこうしている訳にもいかないので、やはりある程度気張る必要はある。

さて、慣らし勤務は前述のとおり9時~5時(厳密にいうと昼休憩分も挟むのでもう少し後ろにずれ込む)で、もちろん時間外という概念も存在しないので定時にあがることになる。思えば、社会人になってから定時で退社するという経験は新人の本当に最初期だけだったので、身分上は休職中の身でありながらも「え、こんなに早く帰っていいんですか」という発想になる。我ながら、きちんと社畜化されているのだなと呆れる。加えて、新人の頃はオンラインでの研修がメインだったため、リアルで定時に退社するという経験が初めてに等しい。
午後5時過ぎ、荷物をまとめ、会社に帰宅する旨だけ伝えて、事業所を出る。存外、同じように帰っていく人も多いし、駅につけば「この時間のJRというのはこんなに混んでいるものなのか」「世の中の少なくない人はこうやって定時にあがるものなのか」と、いつもカルチャーショックを受けている。

欧米諸国に比べ、日本は労働時間が長いという話はよく聞いてきたが、数年前からの働き方改革の大号令の下で、大企業を中心に一定程度、労働時間の短縮が進んだのは事実ではあるのだろう。ただ、そういう「定時退社」という概念は、自分にとってはどこか他人事というか、一種の都市伝説のように思っていたので、帰宅ラッシュの中にもまれる自分というのがにわかに信じがたく、毎回「あ、本当に存在したんだ」という思考になる。

もちろん、残業が少ないというのは一長一短ある。ある友人は「残業できなくて家計がやばい」という話をよくして、あげく「残業できてうらやましい」などとのたまう。確かに、休職前の自分は残業代のおかげで経済的にはそんなに苦労せずに済んでいたが、流石に「いやいやいや」と応答せざるを得ない。まあ、互いに”ないものねだり”に過ぎないということなのだろうが。

6時前の人の流れを見て「こういう世界もあるのだな」と気づかされる。別に、今いる会社が社会のすべてではない。視野は広くありたいものだ。

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