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世のちり洗う四万温泉(中)

四万温泉についたのは、午後1時半ごろで、チェックインまで少し時間がある。少し温泉街をぶらついてみたが、平日のせいかあまり店が開いていない。仕方がないので、川沿いにあるベンチに腰掛け、ぼうっとする。川の音とたまに聞こえる鳥の声しかしない。こういう時間がすごく欲しかったので、この手持ち無沙汰な時間はむしろありがたかった。

午後2時を過ぎたころ、今回宿泊する四万温泉 積善館に入る。積善館の創業は、江戸時代中期、元禄の頃らしく、とても由緒ある宿だ。宿泊棟は、主に本館・山荘・佳松亭の3つから成る。このうち本館が最も古い建物で、山荘は昭和初期に建てられ国の登録有形文化財、佳松亭は最も新しい建物で設備面では一番いい。本館は湯治客向け、山荘・佳松亭は旅館並みのサービスを提供するらしい。今回、私は本館に泊まることにした。

玄関を入ると早速、雰囲気が最高だ。

本館の入口

少し建物に手を入れている最中なので、多少の不都合はあるが、そこまで気にならない。建物の随所を見ながら、部屋へ向かう。一人用の客室は、こんな感じで、ありがたいことにこたつがある。

今回泊まった客室

本館は、湯治客向けなので基本、自分ですべてやる必要がある。布団も自分で敷く。このシステムをどう捉えるかは人によるだろうが、気兼ねをせずに済むこのシステムのほうが私は好みだ。とりあえず、自分でお茶を入れ、置かれていた甘味を頬張った。
広縁からは、左から泊っている本館、前新、向新、前新と向新を結ぶ廊下橋がすべて見える。こりゃ見ていて飽きない。

客室からの眺め

せっかくなので早速、館内探索を兼ねて温泉に向かう。積善館の中にある温泉は計5つ。本館にある岩風呂と、本館に隣接する前新にある元禄の湯、山荘にある貸切風呂、佳松亭にある杜の湯と貸切風呂である。今回は貸切風呂以外の3つの温泉に入ることにした。
まず、最もアメニティが充実しているのが佳松亭にある杜の湯とのことだったので、杜の湯へ向かう。

本館から杜の湯がある佳松亭へは、渡り廊下を通り、山荘を経由し、再び渡り廊下を通ってたどり着く。しかも、高低差があるので、階段かエレベーターを利用する必要があり、結構迷路みたいなコースとなる。
ただ、この迷路の途中もなかなか面白い。例えば、本館と山荘を結ぶ渡り廊下、浪漫のトンネルと名付けられており、こんな感じ。

浪漫のトンネル

こういう非日常な空間は、やはり面白い。

少し迷いながらもたどり着いた杜の湯は、大きな内湯と露天風呂がある。洗い場の数も館内にある他の温泉と比べ、いちばん多い。ただ、利用した時間が早かったせいか、他にお客さんがおらず、始終ほぼ独り占めできた。
館内唯一の露天風呂に一人、ゆっくりと浸かる。お天道様がまだ高い時間の露天風呂は、なかなか贅沢な気持ちになる。

杜の湯(積善館HPより引用)

しっかりと温まった頃に、他のお客さんが来られたので、この贅沢な空間を譲ることにした。少し休憩し、続いて本館にある岩風呂に向かう。

岩風呂は、昔からある比較的小さな温泉だ。脱衣場と言える空間がほとんどないのも、昔からの造り故なのだろう。
もともと、ここは混浴になっているらしいが、今は時間帯で男女を入れ替えている。確かに、脱衣場から湯舟までちょっと距離がある造りなので混浴だと、利用のハードルが高い感じはする。こちらも独り占めできた。

さて、最後に大本命・元禄の湯に向かう。

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