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【「うみとさち」とは? Vol.3】完璧で無くていい、小さな一歩のきっかけ

魚をはじめとする海産物は「海の幸」と呼ばれています。古事記で語られる「海幸彦・山幸彦」の神話にそのルーツを見ることからも、日本では古来より海産物を海からいただく「幸=恵み」と考えていたことがわかりますね。広大な海は豊かで懐が深く、その資源はまるで尽きることがないように感じられます。しかし近年、漁獲量の低下や自然環境の汚染など、多くの問題が明らかになってきました。さすがに懐の深い海も疲弊してきているようです。私たちはこれまで海からの「幸」に甘えるばかりで、じつは海にとっての「幸」から目をそらし続けてきたのかもしれません。

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海を疲れさせないためにも、幸を享受する私たちが天然資源の自然回復を待てることが大事です。無理のない漁獲で天然資源を守るためには、それを補う養殖の魚が欠かせなくなってきています。しかし、単に養殖の魚を選ぶことが完璧な答えではなく、餌となる天然魚の過剰利用や海の水質悪化等の、まだ解決すべき問題もあります。ウミトロンは、水産養殖に対してさまざまなテクノロジーやデータ解析を活用したサービスを提供することで、環境と労働の負荷を軽減しながら生産者をサポートしています。「海の匠」である生産者の方々と緊密に仕事をする中で、彼らの試行錯誤と地道な努力、安全と環境に配慮し、愛情を注いで美味しい魚を育てる様子を見てきました。魚を育てるには時間と手間がかかります。例えば真鯛であれば、稚魚から育てて市場に出荷できるようになるまで約2年。魚種によっては5年ほどかかることも。その間、魚の状態に合わせて吟味した餌を適切なタイミングで与え、安全性や海洋環境を考慮し、手をかけ目を配り続けて、やっと美味しい魚へと成長するわけです。

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本来であれば2020年は、オリンピックイヤーとして海外から多くの旅行者が訪れ、国内外の人々の往来も通常より多い年となるはずでした。そのため、いまや世界中で大人気の寿司や新鮮な魚介料理を観光客に楽しんでもらおうと、2020年に照準を合わせて多くの魚が育てられたのです。そこに起こったのが、青天の霹靂ともいえるコロナ禍。その結果、美味しく育った沢山の魚たちは出荷することもままならず、生け簀が空かないことで今後の魚の育成にも支障が出る事態となってしまいました。

そんな中でも水産養殖の生産者の方々は明日へ希望をつなぎ、くじけることなく今日も魚を育てています。その様子を知るだけに、彼らの熱意と努力、それぞれに誠実で独創的な試みや海洋環境への想いを消費者に知ってもらいたい、彼らが育てたこだわりの美味しい魚を食べてもらいたい――そう考えたことが、シーフードアクション「うみとさち」を始めるきっかけとなりました。コロナ禍は水産業界だけの災難ではなく、現在、世界中で私たち全員が等しく抱える困難です。こんな時代だからこそ、人の命と最も近いところにある「食」、そして私たちウミトロンのフィールドである「海」や「魚」をテーマに、生産者や流通、小売業、シェフ…さまざまな人と手を携えて行動を起こしていきたいと思います。

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魚食文化に携わるすべての人が協力して、未来に美味しい魚ときれいな海を残していこう、新鮮な"海の幸"を一方的に享受するだけではなく、「海とその幸せも考える」シーフードアクション、その行動の輪を広げていこう。そんな想いを込めて「うみとさち」と名付けられています。また、「うみとさち」をアルファベットで表記すると「UMI to SACHI」海からはじまる幸せという意味になります。私たちに幸を与え続けてくれた海に、今こそ恩返しをする時、「海を幸せにする」時かもしれません。最初から完璧で無くていい、一人ひとりが自分にできる形で参加する――シーフードアクション「うみとさち」がそのきっかけになれば幸いです。


■うみとさちウェブサイト

■「うみとさち」第一弾企画:クラウドファンディングプロジェクトサイト



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