見出し画像

HOTERES EXPO 2021:食の選択肢ニュースタンダード:サステナビリティを語る

先日、UMITO Partners 代表の村上がパネリストとして登壇した「HOTERES EXPO 2021」パネルディスカションの様子についてご紹介したいと思います。

HOTERES EXPOとは

画像1

HOTERES EXPOとは、ホテル業界向けの製品やサービスの展示会&シンポジウム。昨年は新型コロナウイルスの影響で開催は見送られたましたが、今回はリアルとオンラインのハイブリッド展示会として開催されました。

今年のテーマは:

「近未来のホテル改革」
〜柔軟にそしてイノベーティブに。これからの「変える」と「変わる」〜

観光・サービス業界は、いまだに先の見通しがつかない新型コロナウイルスによる危機的状況を乗り越えるために「未来への改革」が早急に求められています。アフターコロナの新しい未来へ向かうため、ホテル業界として、パートナー企業とともに未来を協創することを目標としたシンポジウムが、1万2000坪の敷地内に素晴らしい庭園があるレストラン・結婚式場として有名な会場「八芳園」で開催されました。

画像3

画像4

食の選択肢ニュースタンダード:サステナビリティ

村上がパネリストとして登壇したのは、2日目の午前のパネルディスカッション:【食の選択肢ニュースタンダード「サステナビリティ」で食の多様化を一気に加速させる】

画像2

パネルコーディネーターを務められたのは、株式会社八芳園 取締役専務・総支配人の井上義則氏。

そして、もう一人のパネリストは、「フードマスター」料理人、菱江 隆氏。

フードマスターとは?

今回初めて耳にした方もいらっしゃると思いますが、「フードマスター」とは、アメリカ国務省が推進する、3ヵ国以上の料理に精通し厳しい試験を合格することで得られる料理人資格です。ライセンスの取得されたフードマスターは、世界のダイヤモンド、ミシュラン3つ星ホテル新規開業にあたり総料理長を含むシェフやスタッフへの指導・育成、オリンピック選手村の食事プロデュースなどを行うことができる食のエキスパートです。

菱江シェフご自身は、4ヵ国の料理に精通し、約20年間ほど海外で日本大使館やアメリカ・ニューヨークにて3ダイヤモンドのホテルで総料理長を勤められた経歴をお持ちの超一流シェフです。
なんと、100名ほどいる日本人フードマスターはたったの3名で、そのうち日本在住は菱江シェフのみです。

現在は熊本県阿蘇部南小国町で設立されたキングフーズ有限会社にて、「料理は愛情」という理念を掲げ、「無添加食材」「手造り」「フードロス削減」などにこだわりをもった食品製造工場及び直営店を営んでいらっしゃいます。

画像5

では、パネルでディスカッションされた内容について、パネル参加者の皆様がお話しされたことを紹介いたします。

海外から見て、日本ではどの点を改善すべきか

【フードマスター 菱江氏】
「まず、流通経路が全く違うことが一番問題視されている。海外では、ホテル自身が畜産・水産・野菜農家などの生産者と直契約をして、自社のホテルに合うようなものを育ててもらっているのが現状。そして、提供してもらった食材は全て使い切るシステムがある。日本では食材が豊富にあるけれど、過剰に買い過ぎているんじゃないかなと見受けられる。残った食材を使えればいいんですが、そのまま廃棄されてしまうことが現状。海外目線から見ると、その辺の見直しを深めることがベストだと思います。」
【八芳園 井上氏】
「サステナビリティに取り組んでいるところから見ると、サプライチェーンの概念では従来の調達と生産者から直接仕入れる、二通りがある。従来型のサプライチェーンだと生産現場の顔に届かない。生産者の方々と繋がって、我々が使いたいようなものを相談しながら一緒に買い取る責任をとって調達していく取り組みをしていくと考え方も変わる。往来方のサプライチェーンの食材調達と、生産者の方々のところに足を運んで、その時期に合ったものや、相手に無理ない方法で調達する、両方バランスよくできれば理想的。」

画像6

海のサステナビリティ分野で理想的なサプライチェーン

【UMITO Partners 村上氏】
「水産業では、既存の流通サプライチェーンと相対取引(漁業者による直接取引)が五分五分と言われている。簡素化されていくことで経済コストが下がって、収益幅が上がってみんなウィンウィンになっていく理想像があるけれど、生産地域の目線から見ると、これまでの既存のビジネス関係にあるような流通加工業者などの方々の経済性をどう担保しながら持続していくのか、その両立が非常に難しいところ。理想は両立だけれど、経済合理性だけでは地域社会が回っていけないので、末端の方もどう現場に歩み寄りながらあ解決していくことが非常に大事。」

水産食材のアピール・情報発信の役割

【菱江氏】
「いろんな食材を取り扱う者として、水産関係が一番難しい食材。年間を通して、獲れる季節や品質なども変わる。『この時期だから美味しい』というアピール度は日本では少なくなったと感じる。」
【井上氏】
「首都圏だと水産食材の旬・季節などのアピールは少ないのは確かにありますね。しかし、観光地・地方では地元の魚の旬などのアピールはよく行っている。実際、その時期に合わせてリピーターとして足を運ばれる観光者もいる。その面では食の可能性は感じる。」
【村上氏】
「地域に行けばそこでしか獲られない食材はある。そこを深掘りしていけば、実は資源に優しい漁法で漁獲されていることもある。それを発信していくことでポテンシャルは感じる。」

今後、漁業地域で取り組みたい事業

【村上氏】
「地域として考えると、異業種の方達と一緒に資源を有効活用して、地域のサステナビリティを盛り上げ、経済活動のサステナビリティに繋げていくことをプラットフォーム化をしたい。シェフの方々であったり、地域商社、金融機関などとプラットフォームを作って、地域を盛り上げていくような本質的な取り組みが今後できたらいいなと思っています。」
【井上氏】
「サステナビリティとは持続可能にしていこうという取り組みの一つだけれど、何をサステナブルにするのかと考えると、やっぱり『資源』。その資源というのは何かって言うのは、それぞれの事業者さんや地域によってしっかり認識しないとサステナビリティという活動隊には変わらない。『資源』を明確に認識して、守っていく取り組みや活動隊が生まれてくるのがサステナビリティをみなす根元になるのではないか。」
【菱江氏】
「資源は非常に難しいけれど、それを活かしきれる形を取り組めればと思う。自分たちで改善すべきところを見出して取り組むべき。例えば、完全に消費する。もったいないような廃棄をしない。逆にそういった廃棄されるものを食品加工に持っていければ変わっていくと思う。」
【井上氏】
「資源って食べるものが資源と思われがちだけれど、食べるものが育つシステムそのものも資源。資源を突き止めていくと自然の成り立ちを維持することに辿り着くんじゃないか。」
【村上氏】
「水産業界に関して言うと、自然資本の上に成り立つ産業だというところがどうしてもあるので、海に潤沢な資源がある状態をうまく利用する経済活動をサステナブルにしていく。そうすることで地域社会もサステナブルになっていく。ただ、地理的・空間的なスケールを考えると、資源は人であったり、モノであったり。そういうものを有効活用した、その地域にしかできない唯一無二のことが日本ではでき、世界でも差別化できると感じている。」

画像8

次世代に何を残したいこと

【菱江氏】
「和食の味、一般的に言う『お母さん・おふくろの味」と言うものを改めて広めたいと思っている。昔は添加物を使わず、時間をかけて料理を作っていたのに対して、今は添加物を入れることでおいしくできちゃうのが現状。このままだと子供達の舌・味覚が変わってしまうのではないかと思い、そこを改善したいと思っている。また、日本資源の多くは日本だけではなく海外にもいくべきだが、残念ながら日本の食材が入らない国々もある。その理由は、添加物の利用により許可が降りていないこと。特にヨーロッパだと、味を変えるような添加物は20種しか許可が降りていない。日本では1,000以上の添加物が許可されている。添加物が全て悪いわけでもないし、料理の手助けになっているけれど、せっかく日本で作った食材が海外に行き渡らないのが現状。日本の資源や食材をもっと世界に出せるように改善することは必要だと思う。」
【井上氏】
「海外のグローバルビジネスイベントをやろうとした時に、EU圏の人たちに八芳園の野菜は硝酸態窒素1000mg以下のものを用意してくれと言われた。それを探して低農薬や自然栽培農法にたどり着いて用意したが、収穫量がなかった。量を分かった上でどういう調理をしていくかなど組み合わせをしていかないといけない。次世代のことやもっとグローバルの視点になるといろんな課題があることが事業を通して明確に見えてくる。」
【村上氏】
「食育は知識だけではなく、小さい頃から体験・体感することが重要。大切なものを守りたい。おいしいから食べ続けたい。そういう自分に根付くことを体感していかないと知識だけではなかなか続かないと思う。そういう意味で、漁業現場を見にいくとか、体験できるような取り組みも関係するのではないかと思う。」

画像7

未来に向かってみんなと連携して取り組みたいこと

【菱江氏】
「1人の力は非常に少ないもの。色々な異業種の方達が同じ形で協賛できて、一つのモノを創りあげるようなプロジェクトを進めていければ非常にいいなと思う。」
【井上氏】
「幅広い多様な事業者の方達とか、場合によっては次の世代を含めて、みんなでディスカッションしていくことによって形成的になるんじゃないかなと感じる。食のこととか、日本の資源のこととか、幅広い人たちと話をしていく方が、一歩前に出ていく情報発信力も大きくなると思いますし、取り組み方もイノベーションが起きやすい状況になりやすいと思っている。」
【村上氏】
「1人の100歩より100人の1歩が大事だとすこく思っている。多様な専門家の方が一挙に集まる地域版サステナビリティプロジェクトをいろんな地域で点在して、いろんな方達に発信していけるようなプロジェクトをどんどん作っていきたい。プラットフォームにすることで、共通目標をもったシェフ、企業、金融機関、生産者が集まれるSDGsの取り組みとしてつながる。」
【井上氏】
「コロナで観光産業とか、人と食を提供しながら交流できる事業は大ダメージを受けているが、何か成長するエンジンは裏にあるんじゃないか。観光は観光地に依存して、その側にホテルや旅館を作って、人を集めていくだけでは違うんじゃないかと。地域サステナブルプロジェクトみたいなものを観光やホテルなどの産業が全員取り組むことになると、人の取り組みのエンジンがかかることになって、実はそういう取り組みのコミュニティに属したいということでその地域に訪れるきっかけになると感じる。」
【村上氏】
「国内でもそうだと思いますけど、海外の方はそういった活動を判断基準にしているので、地域・ホテルとして地域サステナブルプロジェクトなどに取り組んでいるから選ぶという、新しい判断基準の価値が生まれてくると思う。」
【井上氏】
「サステナビリティという大きな、世界的に言われているキーワードを活用することによってコミュニティ設計ということが根をついていくことに繋がる。」

パネリストの最後のメッセージ

【菱江氏】
「是非ともひとつ考えていただきたいのは、食の持続化。自分1人の力では何もできない、色々な方達と相談して、良いものを最終的に創りあげる形を常に忘れずに前に進みたい。」
【村上氏】
「私どもが『サステナブルな漁業をやろうよ』というよりは、『サステナブルな水産物が欲しい』という発信をしていただくことがすごく資源や漁業地域を良くしていくことに繋がると思うので、そういう発信が可能であれば、是非発信していただければと思う。行動の部分でもしご関心があれば、地域サステナブルプロジェクトであったり、そういう活動でも皆様が繋がりのある地域との接点でそういうことを作ったり、我々も繋がっている地域をご紹介させていただくこともできます。皆様で何かを作り上げていくことをやらせていただければと思います。」

以上、HOTERES EXPO 2021【食の選択肢ニュースタンダード「サステナビリティ」で食の多様化を一気に加速させる】パネルの内容をお伝えさせていただきました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?