見出し画像

ブラジル ノヴァ・ウニオン オバタン; 酸味・苦味・渋味・香り、一つひとつがくっきりと見える

まず香りを嗅ぐ。上品でシャープな焙煎香。シャープに入って、ぐっと酸味とコクが上がるけれど、すぐに切れる。潔く切れる。一瞬、空白になって余韻が薄いと感じるも、あとからしっかりとした土を感じる香りと苦味がやってくる。そしてずっと佇む。全体的に引っ掛かりがない。

少し冷めると、入り口になめらかさが見えてきて、乾いた柑橘を思わせる酸味と丸い苦味引き立つ。それを含むコクが持続する。余韻の酸味と苦味もまろやかになって、より持続する。

きれいな酸味をはじめとするコーヒーの果実の魅力とともに、ブラジルで一般的に飲まれる強いコーヒーのニュアンスも感じられる。アーモンドの皮のようなナッティーで少し渋味のある感じがどこか懐かしい。開発した人や栽培する人の嗜好の奥深くが反映されているのだろうか?

画像1

奥に見える茶筒のような缶にコーヒーが収められている。かっこいい。創業100年以上の江東堂高橋製作所の製品で、全て手作りだという。

品種「オバタン」

ノヴァ・ウニオン(Nova União)はブラジル・サンパウロ州にある農園の名前、オバタン(Obatã)はサンパウロ州郊外のカンピーナスにあるIAC(カンピーナス農業経済機関)で交配によって開発された品種だ。病気に強いことが特徴で、2000年にリリースされたオバタン・ベルメーリョと、そこからさらに交配されたオバタン・アマレーロがある。

パルプト・ナチュラル

収穫されたコーヒーの果実から生豆を取り出す「精製」のプロセスにはいくつかあって、コーヒーの香味特性に影響すると言われている。果実を天日干しするドライプロセス(ナチュラル)と、器械で果肉などをだいたい取り除いてから水につけるウェットプロセス(ウオッシュト)があるけれど、今回いただいたコーヒーはその折衷スタイルの「パルプト・ナチュラル」(水槽につけるプロセスのあと、天日干しする)で精製されている。こちらも1980年代以降にブラジルで広まった方式だ。品種・産地・精製とブラジリアンスタイル盛りだくさんのコーヒーなのがうれしい。

2021年5月 Coffee Works Plus (滋賀県高島市)にて

画像2

参考資料




この記事が参加している募集

いただいたサポートは、本や資料を買い、酒と食の取材旅行に出かけ、地域で対話して知見を深めるために使わせていただきます! 何より応援していただくことが書くことのモチベーションになります。よろしくお願いいたします!