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廃材ライフジャケットの次はバリアフリービーチ、山形の力が結集した異色の公益任意団体

(プロフィール)
公益任意団体ドリームやまがた里山プロジェクト 事務局長 高橋雅宣さん

山形県内22のNPO法人や公益団体が一丸となり、県内で社会貢献事業や地域振興、ベンチャー支援事業などを展開するドリームやまがた里山プロジェクトの事務局長。高橋さんご本人は、山形市で広告代理店、株式会社ハイスタッフの代表やNPO法人エコリンクやまがたの理事長を務める。

ドリームやまがた里山プロジェクトは、個々のNPO等が力を合わせ、大きな課題に立ち向かうという独自のスタイルで、さまざまな事業に取り組んでいる。今回は、プロジェクトの事務局長を務める高橋雅宣さんに、プロジェクト立ち上げの経緯やライフジャケット製作に懸ける想いについて、お話を伺いました。

公益とは繋がり……活動の芯にあるのは“人と地域とのつながり”です


―プロジェクトが始まったきっかけを教えてください。

高橋:
2015(平成27)年、山形県内には約200のNPO法人がありました。しかし、各団体がそれぞれの分野、専門内での活動しかしておらず、大きな活動になかなか結びつきづらかった。

そこで、互いに連携し協働事業として社会貢献活動をできないかと、菅原さん(現顧問)や小谷さん(現代表理事)とドリームやまがた里山プロジェクトを立ち上げました。

設立から5年目を迎えましたが、当初から一貫して大事にしてきたのは、“人と地域とのつながり”です。

会員同士がつながりを持って、課題に適切なソリューションを提供できる体制を組むこと。一過性のものではなく、事業として成り立つかどうか。この2点を重視しています。

社会や地域に貢献する活動は、決して一分野、一企業でできるものではありません。この点で、わたしたちは良い特徴を持っていると思っていますね。


ライフジャケット

環境保全と人命救助の想いが生んだ、“廃材”で作るライフジャケット

ドリームやまがた里山プロジェクトは、日本財団の助成を受け海と日本PROJECTの事業活動を開始。
海の安全・環境保全を目指し、2019(令和元)年には、使用済自動車の90%はリサイクルされるものの、10%は廃材となってしまう実情に着目し、廃棄物削減のため廃材を使ったライフジャケットを製作しました。

―いつからライフジャケットを作ろうと考えていたのですか?

高橋:
日本財団さんが提唱する海ゴミ削減・海の安全とライフジャケットが結びつき、その材料として車の廃材を活用する、それが事故から人命を守ってきて廃棄されるシートベルト・エアバッグに、新たに海で人命を守る使命を与える、そんな発想からです。

しかし、問題は浮力。最初はシートクッションを入れてみたのですが、水を含んで重くなってしまう。そこで思いついたのが、同じく廃棄される発泡スチロール箱。試してみたところ、浮力も十分に確保することができたんです。体重70kgの男性でも軽々でした。

―なぜライフジャケットにしたのでしょう?

高橋:
海や川での事故が多いですよね、海では離岸流。沖に長時間流されたままだと、低体温症などが起きてしまう。そんな時も、ライフジャケットをつけていればある程度は体温が保たれ、より多くの命を救える、ライフジャケット着用を推進するためにも現物がほしかったからです。


ライフジャケット着用向上イベント(自立支援創造事業舎)

「健常者と障がい者がともに楽しむ海水浴場をめざして!」バリアフリービーチ作りへの夢

廃材ライフジャケット製作で、ベルトの糸抜き作業をNPO法人山形自立支援創造事業舎の知的障害者が担当。完成時には「ライフジャケットができたのだから、海にいきたい!」という施設利用者からの要望で、みんなで海岸へ行って作ったライフジャケットを着てあそんだのだそうです。

その時に、施設の職員たちから「こんな表情は見たことがない」と驚かれるほどの笑顔であそぶ施設利用者を見て、「障害のある人が安心して海にこられる海水浴場がない」ことに気づかされたという高橋さん。

―その気づきがきっかけとなり、生まれた構想を教えてください。

高橋:
健常者と障がい者が一緒になって楽しめる、バリアフリービーチ作り
ですね。クルマ椅子で波打ち際近くまで行ける、乳母車も、介護者が同行すれば特老の方も潮風を感じて元気になれる海辺を作りたい。そう思いました。

現在は山形県や地元自治会の賛同もいただき、日本財団さんからの助成事業としてバリアフリービーチ建設を進めています。場所として選定したのが、波が静かで広すぎず狭すぎない、鼠ヶ関(ねずがせき)海水浴場です。

そのために今、廃棄物削減として車の廃材(窓ガラス・バンパー)をスロープ工事に使うコンクリートに混合するのですが、強度等試験のため試験体を製作しました。スロープ造成に必要な生コン総量に対しての混合率は、地域の企業や県工業技術センターに協力いただいています。

中学生時代の科学の授業を思い出しました(笑)。“雑学は身を助ける”という信条もあるので、楽しみながらやっていますよ。


チャレンジカッププレゼン

熱量が人をつなぎ、目の前の壁に挑戦する揺るぎない力になる

取材中、“人と地域のつながりの大切さ”について何度も口にしていた高橋さん。
今までも、そしてこれからも、人と地域とのつながりを軸にしてさまざまな活動を行っていきたいと、事業に懸ける想いを語ってくれました。

高橋:1人、1団体では、なかなかすべての課題を解決することはできません。それでも、こうして想いをともにする仲間がいて、仲間を広げる熱量が自分にあれば、いろんなことに挑戦できます。社会課題解決などの貢献活動を団体・企業の事業として行い、弱いところを助け合い、継続的に事業を発展させていく

すべては地域、つまりは山形県の発展のために、そして海や自然に親しめる環境を広げていくことにつながっていけばと思っています。

***

高橋さん、ありがとうございました!
実は昨年スタートした、ドリームやまがた里山プロジェクトのライフジャケット製作事業は今年度も継続が決定しました。今回は着心地アップのために、一部の廃材を変えるなどをして、機能面を向上させた新しいライフジャケットの製作を予定しているのだとか。

廃材を使ったライフジャケット。着眼点と発想力、そして多くの人々とのつながりによって作り上げているところが印象的でした。

多くの人が携わることで、活動に愛着を持つ方が増え、地域に根付き、長く続いていく。

新しいライフジャケット、そしてバリアフリービーチの完成が楽しみです!

ドリームやまがた里山プロジェクトについてはこちら!https://www.dysp.org/