書くための本を読む
無知であることは、悪いことばかりではない。
読むものすべてが新鮮で、ふれるたびに自分が更新されていくような感覚は、まっさらな状態でなければ得られない。
一〇代のころ、初めて小説を書くとき手に取った栗本薫の『小説道場』は、白紙の状態だった私に、多くの知識をもたらした。
例えば、小説執筆の初期につまずきがちな「人称」「視点」などの書き分け。栗本は、これらを投稿作品と比較しつつ、実際に自作で書くなら……という例文を用いて説明してくれた。当時の私は小説指南書に触れたことがなかったため、いたく感動したことを覚えている。
POV(視点)の問題はこの手の本でとりあげられる話題の定番で、最近ではル・グインの『文体の舵を取れ』でも一章割かれていたが、英文と和文はそもそも根本的に違いがある。
日本語で小説を書くなら、日本人の指南本を読んだほうが良い。その点でも、最初にこの小説道場に入門したのは正解だった。
しかし『小説道場』で感銘を受けたのは、技術的なことよりも、栗本の小説に対する熱量だった。技術はいくらでも教えられる。だが他人の心に火をつけることは、同じ火を持った創作者にしかできない。
私はこの本を読むことで、初めて短い投稿作品を書くことができた。それ以来、趣味のように小説執筆にまつわる本を読んでいる。
小説にまつわるハウツー本やマニュアル本は、大まかに、以下の4つのカテゴリに分類できると考えられる。
1)作家・創作論系
2)シナリオ・映画系
3)文法・基礎能力系
4)その他
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