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もういない君と話したかった7つのこと #07

2つめ 人とのつながりという「檻」から自由になるには


「歪んだ鏡」は本当の自分を映さない

 この章では、「自分は特別な人間だ」という自意識から自由になるにはどうすればいいのか、を考えましょう。
 ここでのキーワードは人間関係や社会とのつながり、つまりコミュニティです。

 自意識も、健全なものは自己肯定力の源や、自由を獲得する力になり得ます。
 ですが問題は、「不自由な自意識」です。
 これは、自分と世間がうまくかみ合っていないときに生まれます。
 他者の目や世間の評価を、自分の内面の声として受け取ってしまい、そのギャップに苦しむのです。
 これを寓話化した、みなさんも知っているお話があります。
 グリム童話にも収録されている『白雪姫』です。
 ある王妃が魔法の鏡に向かって「世界でいちばん美しいのはだあれ?」と問いかけたところ、娘である「白雪姫」という答えが返ってきます。王妃はそのことに怒って、白雪姫を殺そうとするのです。
 僕は、この王妃は、おそらくそれなりに美人だったのではないかと思います。なぜならそれまでは自分が「世界で一番美しい」なんて本気で信じていたわけですから。
 その幻想を壊したのが魔法の鏡です。
 これは一体なんなのでしょうか。僕は、魔法の鏡というのは王妃の自意識だと解釈しています。
 魔法の鏡は、つまり自分が認識している自分のことなのです。
 つまり、王妃は世間の評価を、自分の内面の声として聞いてしまったためにおかしくなってしまったのです。
 この鏡はだれの心の中にもあるものです。
 鏡を捨てよう、などとは言いません。そもそもそれは不可能です。
 だけど、できるだけ歪んだ鏡を使わないようにすることはできます。


人間嫌いな人でも、実は他人を求めている

 他者や世間が邪魔ならば関わらないのが最も自由になれそうです。
 しかしながら、それはハードです。
 Kも「人と会いたくない」と言いながら、人を求めていました。
 時折、「人の役に立ちたいんだ」と漏らすような純粋なところがあり、お酒を飲めば冗談も言いました。
 かの夏目漱石は『草枕』の冒頭でこう書いています。

〝智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。
(略)人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりも猶住みにくかろう。〟

 人は生きている限り他者と関わらずにはいられません。
 それを完全に断ち切るような強い精神力があれば、繊細なことに悩んだりしないのです。
 不自由な自意識は、世間の評価と自分の評価のギャップによって生まれます。
 逆に自由な自意識は、世間の評価と自分の評価にギャップが少ないことで生まれます。
 つまり、両方とも他者との摩擦で磨かれていくものであり、ともかく何らかのコミュニティが存在しないと始まりません。
 しかし僕もKも、そもそもそうした集団やコミュニティに属するのが苦手なんです。
 コミュニティに属すること自体が嫌な人は、どうやって生きていけば良いんでしょうか。





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