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もういない君と話したかった7つのこと #20

ちょっとだけ無責任になってみる

 こうしたことを考えていくと、
「大企業のほうが収入が安定している」
「起業したり、フリーになるなんてリスクが高いよ」
 と、思う人もいるかもしれません。
 大企業に入りたいという気持ちはわかります。確かに今は正社員が減り、非正規雇用が増え、世の中は不安定です。
 だけど、官僚とか、大企業にいる人たちを見ていると、僕には中学校や高校の延長線上にある世界に見えてしまいます。
 狭い世界で、人間関係が固まっていて、出世のラインも「この部署で活躍して、こういう昇進をして……」というコースがある。
 たとえば、出版業界でいえば、ヒット作ばかりを手掛けて業界に名前を轟かす「名物編集者」という人がいます。
 あるとき、そういう風に呼ばれる人とお話しする機会がありました。
 その際、それまでずっと疑問に思っていたことを思い切って聞いてみました。
「高校の頃はどんなキャラでしたか?」
 そうしたら、聞けば聞くほど今と同じような立場なんです。
 集団の中でも目立つタイプで、いろいろなことに対してやりたいことを実現していくタイプだったという。
 たしかに「大学デビュー」というのは、時折耳にする話です。けれども、「社会人デビュー」というのはあまり聞かない。
 それは、組織の中での立ち居振る舞いというのは大学までで完成されるため、働き始めたからといっていきなり変わることがないことを意味しています。
 だから、高校も、大学も、企業も、やっぱり集団って意味では同じで、自分が所属した集団の構成要員が、相当な変人ばかりでない限りは、そんなに変わらないはずです。
 オタクしかいない中で、ちょっとだけ体育会系だったやつが来たら、その人は、強く振る舞えるかもしれないけれども、みんな体育会系だった場合に、そういう所に行っても、その人のポジションは、全然、他の人と変わらないと思います。
 だから、人間関係に息苦しさを感じる。

 だから、今の仕事で息苦しさを感じているならば、一度アウトサイドに行ってみるのも手です。
 なにも会社を辞めろ、ということではありません。
 苦しい人間関係や仕事があるなら、できるだけ関わらないようにするとか、どうしても無理なら気分的に無責任になってもいいと思います。
 そうした「集団での立場の強要」に自分が適していないだけの話なのですから。
 ただ、そうした集団の中でうまく立ち回れる人たちは、「リア充」に見えることもしばしばあります。
 そうした群れの中に入れないと、うらやましく見えることもあるでしょう。
 けれども、それはまったく不必要な羨望です。
「人は人、自分は自分」と切り離して考えましょう。


「今はこうなんですよ」と上の世代に教える

 ブラック企業の問題がようやく叫ばれるようになりましたが、あなたの会社はどうですか。
「ブラック企業」とまではいかなくても、なにかしら会社の制度に対しての不満などは少なからずあると聞きます。
 ワークライフバランスについてもいろいろなことが言えますが、「自由な働き方」については、もっと幅の広い考え方があっていいと思います。
 ただ、問題は、その自由が認められないことです。
「仕事とプライベートのバランスを取りたいんで、15時に退社していいですか? 給料は半分でいいですから」とか、そういう交渉はなかなかできません。
 自分たちがどう思っても、会社が、さらに言えば、世の中がそういうふうになっていないんです。
 これはできれば、会社が対応してほしいですが、僕たちもなるべく声に出したほうがいいと思います。
 会社と相談して自由に決めていけるっていうのが、一番だと思います。
 社員だけがそんなことを主張しても、会社が許さないとどうしようもないですからね。
 給料が少し下がっても、そういう生活の質を選ぶ自由度をなんとかしてほしい。
 上の世代の人たちって、今の若者に対して、お金に対して夢や想像力がないとか、欲望がないとか言いますけど、それはそうです。お金を持ったことがないんだから。その「欲の大小」って「バブル世代から見てじゃないの?」と思います。
 なんでもかんでも、自分たちの世代の想像力で考えすぎるのです。

 自由もそうです。自由という概念は、常にアップデートされているので、かつての自由と今の自由では意味が違うということもありえます。
 40歳前後の僕たちの世代だと、自由な働き方といえば、フリーター(フリーアルバイター)で、当時は何にもしばられない自由な生き方としてもてはやされていました。
 けれど、今やそれは非正規雇用の使い捨てとして、あまりいい印象がありません。
 こういったことに上の世代というのは、なかなか気づかないものです。
 だから、若い人はなるべく教えてあげたほうがいい。
 教えたところで人は頑固なので絶対変わらないんですけれど、まともな大人なら、わからないなりに、余計なことはしなくなります。

 Kの働いていたマンガ喫茶は、社長が若かったこともあって、自由にやらせてくれていたようです。
「給料安いけど、けっこうユルくていいよ」と言っていました。
 そういう職場はお金以上のいい経験をくれたりします。
 とはいえ、今はツイッターの投稿ひとつで店が潰れかねない時代……。
 自由すぎるのも考え物です。


よりよい生活のために役立てます。