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ニュースアプリをグロースさせろ!NewsDigestの#マーケティングトレース

みなさんニュースアプリは何を使っていますでしょうか?
スマートニュース?グノシー?それともNewsPicks?
私は日経電子版を主に使っています。

GooglePlayで検索すると、めっちゃニュースアプリが出てきますが、その中でこの1ヶ月で100万DL増えたアプリがあります。
ニュース速報特化型アプリのNewsDigestです。

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こちらの新型コロナ感染状況マップでDL数を伸ばしました。

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今回はこの「NewsDigest」のマーケティングトレースを行い、グロースさせる施策を考えました。

こちら、マーケティングトレースのオンラインサロンのミートアップで、実際にマーケティングを担当している松本さんに見ていただきましたが、

「生き残るためのアプリ」

というコンセプトと、分析結果を褒めていただきました。うれしかったです(^^)

トレース企業の確認(JX通信社)

まずはトレース企業の確認から。
NewsDigestは株式会社JX通信社が提供しているサービスです。

JX通信社は「テクノロジーで『今起きていること』を明らかにする報道機関」をビジョンに掲げる報道ベンチャーです。

売上/利益は開示されていませんが、昨年7月に5億円を資金調達しており、売上規模は数億円程度と推測します。

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JX通信社のミッションを具体的にみていきます。
JX通信社のHPでは、報道産業の課題として3つの課題が書かれています。

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1つ目の課題は、「流通構造と収益の課題」です。
新聞やテレビなどの報道機関の収益が減少している課題です。

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この課題について、具体的に確認します。

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まず、新聞社とテレビ局のビジネスモデルの確認です。
ご存知のとおり、どちらも「広告主からの広告収入」を収益源としています。

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では、日本の広告市場は現在どのような状況なのでしょうか?

電通が「日本の広告費」として、詳細な情報を開示してくれていますので、そちらでみていきます。

まず日本の総広告費の推移です。
リーマンショック後に落ち込んでいますが、近年の総広告費は増加傾向にあります。

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次にメディア別の内訳をみます。
2008年との比較で、インターネット広告が3倍に増えている一方、TVや新聞、雑誌など、報道産業の広告収入は減少しています。
特に新聞、雑誌は2008年との比較で半減しています。

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広告収入の落ち込みの激しい新聞業界について掘り下げます。

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新聞社全体の売上高推移を確認すると、広告収入だけでなく、販売収入も減少しています。
インターネットの普及によって新聞を読む人が減った結果、広告媒体としての新聞の価値が下がり、広告収入の低下につながっていると考えられます。

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以下は新聞の発行部数ランキングです。
新聞社は法律の定めにより非上場ですが、朝日新聞社と日経新聞社は有価証券報告書を開示しているため、そちらで業績を確認します。

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まず発行部数2位の朝日新聞社です。

売上の大半を新聞、雑誌のメディア・コンテンツ事業で稼いでいますが、セグメント利益率は1%にとどまり、利益を稼いでいるのは不動産業です。

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次いで発行部数4位の日本経済新聞社です。

こちらは売上、利益ともにメディア・情報事業が一番ですが、利益率は3%にとどまっています。

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TV局は詳細を確認できていませんが、このように報道産業の収益環境は厳しい環境にあります。

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続いて2つ目、3つ目の課題として、「コスト構造と付加価値の課題」があります。
こちらも具体的に確認します。

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ニュースが報道されるまでのプロセスを図解してみました。

ニュース素材の発見、情報収集、編集といった作業は基本的に人手で行われています。
そのため、

・ニュースが配信されるまでに時間がかかる
・労働集約型なのでコストがかかる

という課題があり、その結果、報道の質の低下を招くおそれがあります。

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報道の質が低下すると、当然、TVや新聞離れが起こり、さらに収益が低下するという負のスパイラルが起きる可能性があります。

テクノロジーの力でこれらの課題解決に取り組み、この負のスパイラルを起こさないようにするのが、JX通信社のミッションです。

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そのために提供しているサービスが、

・リスク情報SaaSサービス「FASTALERT」
・ニュース速報アプリ「NewsDigest」

です。

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リスクSaaSサービス「FASTALERT」

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FASTALERTは、災害、事件・事故などのニュースをネット上で検知し、
どこよりも速く配信することのできるtoB向けのサービスです。

例えばFASTALERTを導入した報道機関は、災害、事件・事故などが発生した場合にFASTALERTから通知が届くため、報道にかかる時間とコストを削減することができます。

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HPでは、

全てのキー局と大半の地方局、新聞社などで導入されており、事実上業界標準の緊急情報サービスになっています。

と記載されています。
また、鉄道、建設業界、自治体、政府・省庁などにも導入されているようです。

FASTALERT導入が進んでいる背景としては、「情報戦」という言葉があるように、「優位に物事を進めるために必要な情報を早く手に入れたい」という顧客ニーズの本質に対し、解決策を提示しているためだと考えられます。

「ソーシャル情報の収集・分析・配信のスピードが一番」

というブランド・エクイティを磨き、市場のプレファレンス(好意)を獲得しています。

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ニュース速報アプリ「NewsDigest」

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前置きが長くなってしまいましたが、いよいよ本題のNewsDigestです。
NewsDigestは速報に特化したニュースアプリです。

NewsDigestをビジネスモデル図解しました。

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ビジネスモデルのポイントは、

・ユーザーは無料で使える
・広告主からの広告収入でマネタイズしている

点があげられます。

広告収入でマネタイズしているニュースアプリで有名なものは「スマートニュース」、「グノシー」ですが、この2つとDL数を比べると、まだまだ大きな差があります。

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また、ニュースアプリ自体がまだ情報収集の手段としてあまり使われておらず、広告媒体として稼ぐ力はそれほど高くないと考えられます。

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NewsDigestのグロース戦略を考えるため、PESTと5Forcesを使って外部環境を整理しました。

情報収集の手段のデジタルシフトは確実に進み、広告媒体として市場は拡大していく一方、既に競合が多数いるため、競争環境が厳しいことがわかります。

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ユーザー属性についても、最大手のスマートニュースと似通っており、このまま戦っていても勝ち目は薄いと考えられます。

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ではどのような戦略をとればいいのか?
3C分析とクロスSWOTをもとに戦略を考えます。

武器として考えられるのは、情報を早く手に入れたい「情報感度の高いユーザー」が多いことです。
昨年の台風やコロナウイルスによって、防災・防疫への意識が高まっているのも追い風です。

一方、いくら情報が早くても、それだけにお金を払うユーザーは少ないと考えられます。
そこで、速報アプリから、

「サバイブ(生き残る)」するためのアプリ

にターゲットを広げることを考えました。

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ちなみにこの「ターゲットを広げ、プレファレンスを拡大する」という考え方は、「確立嗜好の戦略論」という元USJのマーケター森岡さんの著書を参考にしています。

この本の図解をnoteで公開(PDF付き)していますので、よろしければご覧ください。
マーケティングを考える上で、めちゃくちゃ参考になります。

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もし自分がCMOだったら?

ミートアップではチームメンバーと考えた「月額課金」を打ち手として発表しました。

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生き残るためのアプリとして、

・情報を直感的に受け取り、かつ、行動につなげることのできるビジュアライズへのこだわり
・ユーザーの住むエリア、閲覧データに応じた最適な記事の配信

を有料コンテンツにするというアイデアです。

松本さんからは、

課金に対する障壁の高さ
ニュースは無料という考えが根強く、あの手この手を尽くしているNewsPicksでさえ有料会員が3.3%しかいないという事実
・「生き残るために必要な情報」に対し、はたして課金してよいのか?
という問いに対して答えはあるか?

というコメントをいただきました。
課金ってめちゃくちゃハードル高いんですね汗

他にもアドバイザーの長瀬さん(日本初のCDO)からの

・今あるエクイティを最大化するアイデアを出すのがCMO
・プラットフォーム自体の価値を上げるアイデアが大事

というアドバイスを踏まえ、改めて打ち手を考えました。

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どうしても目的地にたどり着かないといけないけど、タクシーしか移動手段がない。でもそのタクシーがつかまらない・・・
という経験をお持ちの方もいらっしゃると思います。

ビジネスの世界で生き残るには、なんとしても移動手段を確保しないといけない。
そんな方のために、「タクシー会社と連携し、配車の権利をオークション形式で提供」するサービスを考えました。

どのアプリよりも速く通知が来るという強みを活かし、そのまま移動手段(タクシー)が確保できる機会をつくる。

今も日本交通が「ビジーチケット利用料」という名前で優先配車サービスを提供していますが、それでもタクシーをつかまえられないことがあります。
どうしてもタクシーに乗りたい(乗らないといけない)人は、高い金額で入札し、タクシーを確保する。そんなサービスです。

首都圏のタクシー会社大手4社とタイアップし、保有台数の10%の950台で実施、平均落札額を3000円とした場合、JR山手線で30分以上の遅延が発生するのが年間5回程度なので、収益インパクトとして、年間で14百万円の売上増が見込めます。

が、この打ち手の本命は、このサービスを利用するユーザーを対象とした「ターゲティング広告」の実施です。
このサービスを利用する頻度、入札額、位置情報、支払い方法などから、年収や職業、地位の推定ができる可能性があります。

基本的に所得が高く、重要な地位についていると考えられますので、そうしたユーザーを獲得したい広告主にとって、魅力的な広告枠を提供することができます。

現在のNewsDigestの広告枠の最高額である500万円で、1週間の広告枠を週に1枠提供するとした時の収益インパクトは売上260百万円増となります。
配車権のオークションと合わせた収益インパクトは売上274百万円増です。

まとめ

いかがだったでしょうか?
ファクトを集め、「現在」の分析はできても、そこから「未来」の打ち手、グロース戦略を考えるのは難しい・・・
数値に落としていくところが、本当に難しいと思います。
だからこそ、マーケティングトレースに取り組むのですが・・・

最後に松本さんと長瀬さんの名言をご紹介して、noteを終わろうと思います。

松本さん

真面目⇔遊びの振れ幅を持つ
マーケティングトレースは正解を探すことではない選択肢の振れ幅を広げるのがマーケティングトレース

長瀬さん

どうすればコンテンツを面白くできるか?
コンテンツが面白くないと人は集まらない

引き続きアウトプットがんばります。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

いつも支えてくれている嫁と息子に、感謝の気持ちとして美味しいお菓子を買ってあげたいと思います^^