見出し画像

百名伽藍


百名伽藍という最高級の宿が沖縄南部に出来たことは、約10年前、テレビの取材番組を通して知った。
当時20歳の私はアルバイト生活だったため、沖縄に行くとしても、ファミリー向けのホテルに宿泊することが精一杯で、「いつかは泊まってみたい」と一つの夢として、心で温めていた。
そして月日は流れ、10年後、2023年の4月、その夢は叶った。
念願の百名伽藍で過ごした時間は、まさに自然と一体化するという感覚で、ただぼーっとすることの心地よさを実感し、本当の意味の黄昏れを体験出来た、素晴らしいひとときだった。


百名伽藍は沖縄の南部、南城市にある。
ナビを設定しても良いのだが、宿までの道のりで案内の看板が何度か出てくる。それを頼りに進むのも到着するまでわくわく感が込み上げるのでおすすめだ。

美しいブルーの海が見えてきた頃、高級宿のわりにこじんまりとした玄関の百名伽藍に到着。
レンタカーを駐車場に駐めたタイミングで、ホテルマンがお出迎えしてくださり、ロビーへ案内される。

ロビーの窓は開放されていて、心地の良い海風と波音が贅沢に味わえる。 
館内のBGMは沖縄の名曲(涙そうそう等)が、波音を掻き消さない程度に、ピアノのリラックスアレンジで、ほのかに流れている。有線を使っていないところがまた良い。
ウェルカムドリンクはほんのり酢の効いたドリンクだった。長旅で疲れた身体に染みた。


お待ちかねのお部屋に案内される。
お部屋の広さは約75平米。広い。

ベッドが2つにリビングスペース、
広いバルコニーと、海を眺められる開放的な浴室。
バストイレが別なのも嬉しいポイント。
冷蔵庫の中の飲み物はフリーで頂けて、さんぴん茶やオリオンビール、コーラやミネラルウォーターが常備されていた。
ミニバーが無料なのはやっぱり嬉しい。

道の駅で買ってきたサーターアンダギーを、お部屋にあったコーヒーとともに、バルコニーのテーブルでいただく。
目の前には、海しかない。
飛行機も飛んでおらず、ただ波音が聞こえるだけ。
今この瞬間、この景色は全部私だけのものだと思うと、贅沢すぎてここは天国なのかと錯覚をしてしまうほどだった。


お部屋にはそんな海を眺めながら湯船に浸かれるお風呂がある。
ガラス張りなので開放的ではあるものの、海から丸見えなので、もし船でも通ったら、、と思うと少しドキドキする。
もし母と一緒に宿泊したら、母は心配性なのでブラインドをしめて入りなさい、と言うだろうな、、と思った。

館内にはお部屋とは別に貸切風呂がある。
みなみにそちらは洗い場までもが海から丸見え。まるで外で入浴している感じ。ある意味、非現実的が味わえる。

ディナーの頃には、太陽が沈み、外は真っ暗になってしまったので、まだ太陽が沈みきる前の早い時間からの予約をおすすめする。
お料理は沖縄ならではの食材をふんだんに使っていた。お肉につける塩までが沖縄産で嬉しかった。
器がやちむんだったのも印象的。
お皿がちゃんとしてると、それだけで食事の気分が上がるものだ。


私は旅先では寝つきが悪く、3時、4時まで眠れないのだが、百名伽藍ではすぐに眠れた。
しっかりとした建物の造りから、上の階から足音もしないし、子供は宿泊出来ないので、他のお客さんの声が気になることもない。また枕はお願いすれば薄い厚さのもの取り替えてくれるので、ホテルの枕がふわふわすぎて眠れない!という方には枕の交換を心からおすすめしたい。

そんな宿の気の利いたおもてなしに感謝して、一日が終わる。


2日目。
朝日を感じたくて早起き。
バルコニーに出ると朝だからか、昨日よりも海水が増えていた。建物ギリギリのところまで来ていたので、まるで海に浮かぶお城のような気分だった。
「千と千尋の神隠し」の千が夜の湯屋でお饅頭を食べているシーンの広い広い海みたいなイメージで幻想的でもあった。
有難いことに百名伽藍では、日の入と日の出の時刻が分かるようになっていたため、ばっちりと日の出を堪能することが出来た。

さて、壮大な海を眺めながら頂く朝食。
ついつい食べ過ぎてしまう旅行での朝食に嬉しい、ジューシーのお粥、というのが身体に優しかった。そして朝も器が美しかった。


楽しい時間はあっという間で、チェックアウトのときがきた。
おばあちゃんの家から帰るときのような、なんとも言えない寂しさが込み上げた。
でもその寂しさは決してどんよりとしたものではなく、光を感じる温かな切なさだった。ここでチャージ出来た幸せのエネルギーを、大切に維持して、またこの地へ戻ってくる日まで、日々の生活を程よく頑張っていきたいと、前向きな気持ちにもさせてくれた。

ここへ来れたのは、今のお仕事、丈夫な身体、旅行を見送ってくれた家族、温かく迎えてくれた土地、従業員の方々のお陰様だと心の底から感謝をした。
またいつか、大切な人と来れたらいいな。

百名伽藍様、素敵なひとときを、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?