お菓子の家の夢
いつになったら醒めるのか
このお菓子の家の夢は
甘い香りが漂い
カラフルな色彩に溢れた
幸福の表象
緑の森の中で
青い小鳥の囀りの中で
私はあなたが来るのを待っている
夢は現実の裏返しでしょう
夢は叶えられない希望の写し絵でしょう
お菓子の家の前に佇みながら
私は夢から醒めるのを怖がっている
現実の私はきっと酷い目に合っている
夢が幸福に満ち溢れている分
目が覚めたら私はきっと冷たい場所に寝かされている
饐えた匂いが漂い
荒んだ光景が広がる
絶望の中に私はいるに違いないのだ
お菓子の家の前に佇みながら
私はバスケットの中のツヤツヤしたバナナを見つめて考える
うっとりとした気持ちで発色のいいバナナをさすっている私は
現実の中ではどんな目に合っているのだろう
バナナは尖った刃物を意味しているのか
はたまた男根の象徴なのか
たっぷりととぐろを巻くように絞り出された生クリームも
ところどころに飛沫のように散りまかれた苺ジャムも
現実では何を象徴したものなのか
結局のところ私は幽閉されているのだ
このお菓子の家に
甘い香りに包まれたまま
メルヘンの中から抜け出せない
目が覚めたところで
囚われたまま閉じ込められているなら同じことだ
お菓子の家の夢よ
このまま醒めないで欲しい
いや
もう醒めかかっているのかも知れない
緑の森の中で
青い小鳥の囀りの中で
私はあなたが来るのを
絶望とともに待っている
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