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妊婦もお寿司やお刺身食べられる! 魚食べる量を増やそう

最初に毒づかせてもらっていいですか……。
「妊婦は魚食べない方がいい」的なこと言ってるのって、間違いなく企業かWebメディアか妊婦向けアプリの記事なんです。厚生労働省や農林水産省、学会、病院、自治体、その他公的機関が出してる記事は必ず「魚も食べましょう、その上で少し注意しましょう」と書いてます。
妊婦はお寿司ダメだからとサーモン握り食べないのに、焼鮭食べてたら意味がありません。正しいのは「サーモン握りも焼鮭も食べていい」です。
Web記事やアプリ記事で間違った情報がなぜ妊婦さんにたくさん伝えられているのか。その裏側も本稿で解説します。

●妊婦が無限に食べていい魚とメニュー

妊婦がいくら食べても大丈夫な魚
鮭(サケ)、鯵(アジ)、鯖(サバ)、鰯(イワシ)、秋刀魚(サンマ)、鯛(タイ)、鰤(ブリ)、鰹(カツオ)、ツナ缶
■妊婦は週1回程度にした方がよい魚
鮪(マグロ)、金目鯛、カジキ、つぶ貝(バイガイ)
■妊婦は絶対ダメ
クジラ、イルカ

厚生労働省、これからママになるあなたへ、閲覧日:2022年3月5日

具体的なメニューで書いてみると以下のような感じです。私が思いつくのはこれくらいですが他にあるかな^^; クジラとイルカは調理法がわからなかったので書いてませんが、食べないでください(というかどこで売ってるんだ)。

妊婦がいくら食べても大丈夫な魚メニュー
寿司・刺身:サーモン、タイ、アジ、イワシ、鯖寿司、カツオのたたき
焼魚:焼鮭、鯖の塩焼き、鯛の塩焼き
煮付魚:鯖の味噌煮、鰤大根
缶詰:鯖水煮缶、ツナ缶

■妊婦は週1回程度にした方がよい魚メニュー
寿司・刺身:大トロ、中トロ、マグロ赤身、つぶ貝
煮付魚:金目鯛煮付、カジキ煮付

通常スーパーや魚屋さんで手に入る魚、普段の食卓や外食で出会うメニューは概ね大丈夫です。
マグロや金目鯛はそんなしょっちゅう食べないと思いますが、週1回程度なら大丈夫です。

出所の厚生労働省の資料(下図)では魚の種類が「キダイ」、「マカジキ」、「メカジキ」などと書かれているのですが、一般市民にはタイやカジキの細かい種類まではわかりません。魚のパックにもそこまで詳細に書かれていないことがあります。なので上記リストでは一般市民がわかる書き方で、安全寄りに編集しています。

厚生労働省、これからママになるあなたへ、閲覧日:2022年3月5日


なぜ魚の種類を気にするかというと、水銀が胎児に悪影響を及ぼすことが知られており、水銀は食物連鎖の上位にいる魚により蓄積するからです。例えば、マグロは大きいものだと100-700kgにもなるので水銀を溜めまくってる可能性があります。普段の食卓に並ぶ魚はそこまで大きくないので水銀含有量が少なく、食べても大丈夫です。青魚は小さいものが多いので、どれでも大丈夫な感じですね。

これくらいのサイズ感の魚なら生でも焼でも煮付でもなんでもok


●妊婦の食事の基本は「バランス良くしっかりと」魚も食べよう

母子手帳や副読本に書いてあったと思います。ここでいう「バランス良く」とは、五大栄養素である炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルをバランス良く摂取することで、主食・主菜・副菜のバランスを取っていたらだいたい実現できます。

味の素、五大栄養素 閲覧日:2022年3月5日

炭水化物:米、パン、芋、うどん、パスタ
タンパク質:肉、、卵、大豆
脂質:サラダ油、オリーブオイル、バター
ビタミン:野菜
ミネラル:牛乳、海藻

いずれの栄養素も1つの食材だけ食べるのではなく、まんべんなくいろいろ食べるのが大切です。なのでタンパク質も肉だけでなく、魚も卵も大豆も食べましょう

また、妊娠中摂取量を増やすべき栄養素がいくつかあり、特に以下の4つが有名です。

葉酸:胎児の神経管閉鎖障害の予防につながる
:妊娠中の血液量増加で赤血球(鉄を含む)が薄まるので増やす必要あり
タンパク質:胎児の身体をつくるのに必要
カルシウム:胎児の骨をつくるのに必要

葉酸は野菜に、鉄は乳製品などに多く含まれますが、なかなか食事から十分量摂取するのが難しいのでサプリを飲んでいる方も多いと思います。
タンパク質は、肉と魚100gあたりの含有量がほぼ同じです。献立レパートリーに鶏肉、豚肉、牛肉に加え、魚も入れてあげましょう。

一般財団法人 農林水産奨励会、2019年3月、農林水産叢書No.81、女子栄養大学、庄司久美子、お魚を食べて赤ちゃんへ贈り物を

カルシウムは、牛乳などに多く含まれますが、なんとビタミンDがないと吸収されないという厄介な性質があります。魚はビタミンDを多く含むので摂取するとカルシウムの吸収も良くなります。

一般財団法人 農林水産奨励会、2019年3月、農林水産叢書No.81、女子栄養大学、庄司久美子、お魚を食べて赤ちゃんへ贈り物を



コラム・魚に含まれるDHAで赤ちゃんの頭がよくなる?

DHAだけで頭がよくなるとは思えませんが、何か良い影響があるかも……? ということでよく研究されています。DHAが知能に影響するメカニズムは解明されていませんが、興味深いデータをいくつか貼っておきます。

DHAは肉になく、魚にだけある
DHAは胎児に積極的に移行している
DHAは出生前~出生後も子供の脳に蓄積する
n-3系脂肪酸はα-リノレン酸、EPA、DHAの総称
100gは1食あたりの摂取量(やや多め)

DHAが胎児に積極的に移行し、産後も脳に蓄積していることを見ると、摂ってあげたほうがいいのかなという気がしますね。繰り返しますが、メカニズムはまだよくわかっていません。


●魚に関するネガティブ情報が溢れる理由~ビジネスの裏側から~

冒頭に書きましたが、企業やWebメディアやアプリの記事(以下、Web記事)には妊婦に魚を食べさせないでおこうというような情報が溢れています。国や公的機関は必ず「魚食べてね」と言ったうえで「水銀や食中毒は気を付けてね」と説明するのですが、Web記事はリスクを大々的に取り上げています。

なぜWeb記事はリスクにフォーカスして書くのか、理由は簡単で
・妊婦向け記事数を増やせるから
・妊婦さんのPVを稼げるから

この2つに尽きます。

今、少子化が進み、高齢出産(=貯金がある妊婦)が増えていることもあり、1人の子を産むのにかけるお金は増えています

出産時赤ちゃんグッズ購入費用推移(2014年~2017年)、たまひよ赤ちゃんグッズ大賞調査、2018年2月15日

出産関連の製品、例えばサプリメントや妊娠線予防クリーム、マタニティウェア、出産準備品、ベビーグッズなどに妊婦とその家族はいくらでもお金を払うようになっているので、各製品メーカーはたくさん買ってもらうために妊婦との接点を増やしたい、つまり妊婦が広告を見る機会を増やしたいと考えています。
Web記事を掲載するサイトやアプリの妊婦認知度が高いと、広告をたくさん見てもらえて広告収入がたくさん入るので、サイトやアプリは毎日記事を更新し、妊婦に通知を出しています。
そして妊婦は人生で一番健康に気を遣っているので、安全な行動を取るために必要な情報=リスクを避けるために必要な情報を好んで読みます
各食材のリスクを大々的に取り上げたほうが読んでもらえるので、各食材を食べてもいいのか不安にさせるタイトルや内容に寄せて書かれています
今回は魚を例に解説しましたが、カフェインやハーブなども同じ構図でリスクを強調する手法がとられています。

私も妊娠確定直後は、ninaruやたまひよの記事を全部チェックして「お寿司ダメなのか……」とか思ってたのですが、よくよく調べてみるとお寿司がダメなんて公的機関はひと言も言ってないし、サーモン握り食べずに焼鮭食べるのは意味不明すぎるので、okと言われている魚は気にせず食べてます。なによりタンパク質を摂ることが大事。

注)本稿は日本の食中毒リスクは非常に低いという前提で、食中毒リスクにはあまり触れずに書いています。厚生労働省の妊婦の魚摂取に関する資料でもリスクについて触れているのは水銀のみで、食中毒は取り上げていません。
比較的食中毒リスクが高い、スモークサーモン(リステリア菌)、カキ(ノロウイルス)は控えた方が無難かと思います。
またアニサキスは-20℃で24時間以上の冷凍 or 70℃で1分以上の加熱で死滅するので、十分な処理がされていない可能性のある魚、特に内臓は食べないようにしましょう。
日本のスーパーや魚屋さん、飲食店など通常の流通ルートに乗っているものは、食中毒が発生すると業務継続に影響するため非常に気を遣っているので安心できると思います。


この記事が参考になった方がいらっしゃいましたら♡押してもらえると嬉しいです! ♡とPVでモチベーションが上がるのでよろしくお願いいたします。
《終わり》

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