『ハジメテノオツカイ』【ショートストーリー】
「いってきまぁ〜す」
ボクは今日、初めて一人で買い物にいく。
一人で、だ。
すごいだろ?おつかいするんだ。
あーなんだっけな。何買うんだっけな。
落ち着こう。夕飯は何にするんだったかな?そこから考えれば思い出せるはず!
えーと・・・そう。
ハンバーグだ、ひき肉を買ってくるんだ!
あとは、玉ねぎとパン粉を頼まれた。
いいぞいいぞ。
あとなんだったかな・・・
付け合わせがどうとか言ってたな。
ポテトサラダだろ、ハンバーグといえば。
そんな話をしたような。
よしよし。
そんな感じで大丈夫だろ。
ボクの家から一番近いスーパーアオキ。
野菜は新鮮で安いし、だいたいなんだって揃ってるからよくくるんだ。
入ってすぐ、野菜コーナー。
玉ねぎ玉ねぎ・・・お。
なんだ?どっちだ?
三つ入りと、大ネットと、バラ売り???
でかいネットにしとこう。
さて次は?肉だ!
ひき肉ひき肉〜・・・お。
どれだ?
豚、鳥、合い挽き、あとこのゴロゴロしたやつもあるのか。
ん?牛だけのもあるなぁ〜せっかくだし、今日は牛さんで。
パン粉ってどこにあるんだ?
しばし店内を歩き回るぼく。
どこにもない。
パン粉がないならパンでもいいよな。
食パンっと。
最後は付け合わせだな。
お惣菜でいいだろ、助かるわって言ってくれるだろ。
ボクは手作りにこだわれとは言わないぜ。
優しいだろ?
ゴロゴロ野菜の燻製ポテサラ
いいじゃないか。これで。ついでにあれを買って・・・
ボクは店を出て、足取り軽く帰宅する。
「ただいま〜」
エコバックを忘れたことは叱られなかった。
牛肉の挽肉のことも叱られなかった。
パン粉が探せなかったことは言えなかったから、売り切れってことにしておいた。
玉ねぎはそうそうこれこれって。だろ?よしよし。
ポテサラは、こんなの見たことないって言われた。
まずかったのはこれだ。
ビールだ。
身重の彼女を怒らせた。
「私の前で、これ、飲むの?へえ〜
で、私にはないの?」
「お前は飲めないだろ」
そう言って笑ったのがいけなかった。
うーん。
わからんなぁ。あ、そうか。
「今度はノンアルも一緒に買うよ」
「ばか。あなたもノンアルにしてよ。いつ生まれるかわからないんだからさ、ね?」
ハンバーグは僕が作った。
ビールは、生まれるまでお預けだ。
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