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ジョブ型と日本の履歴書 #雇用差別禁止法のない国


これから日本はジョブ型になるといわれ、既に大手企業がジョブ型の・よ・う・な働き方を取り入れはじめている。

そんな変化が気になる。



日本の履歴書

日本のジョブ型ブームに潜む不気味さが気になっていると、yahoiさんが素敵な記事を書いて下さった。その記事で、わたしの不安が言葉にできそうな気がしてきた。

米国で育ったyahoiさんのお嬢さんにとって日本の履歴書は特別だったという。

これだ!と思った。

そこで、まずは日米の就活の違いを書いてみた。


ここで気になるのが履歴書の中身だ。なぜなら両者の中身が恐ろしく違うから。

欧米では、人を採用する際に「人としての基本的な自由や権利」が尊重される。だから、個人の力では変えることのできない属性を履歴書に記すことを求めたりはしない。

けれど、日本ではあらゆる企業がそれを求める。



ジョブ型の考え方

ジョブ型といえば欧米の働き方だ。その働き方に寄りそう労働法のベースには、働く側と使う側は対等でないという考えがある。

優位なのは企業側である、という動かぬ考えがあるのだ。

そうした見方がある国だからこそ、優位な立場である企業側の思い通りに人を働かせてはならないという強い縛りがある。それを表すのが労働法だ。

そして、それはアメリカと欧州でほぼ同じ。

雇用差別禁止法はそうした考えがベースにある。

企業に勤める入り口で差別があってはならない、そこを自由にさせておくことはできないそんな考えだ。



雇用の入り口で差別をさせない

米国

アメリカの労働法の中心は雇用差別禁止法。アメリカでは個人の働き方に法律が強く干渉はしないけれど、雇用の入り口に限っては厳しい。はじまりはあのキング牧師で、誰もが知る「公民権法」。ここで人種や皮膚の色、出身国などを理由にした差別が禁止され、その後、性別年齢による差別を禁止する法律が加わる。

欧州

ここでいう欧州はEUを意味するため、アメリカより出足は遅いけれど、それでも2000年以降雇用差別禁止法の整備が進んだ。EUでも、人種、出身民族、宗教、性別、年齢などが理由の差別は禁止さる。そのEU、つまり欧州では、採用から解雇まで幅広く差別の禁止が義務付けられている。


雇用差別禁止法のない国

ところが、日本には欧米のような雇用差別禁止法はない。

性別による差別の禁止などはあるものの、採用に限るなら、それを包括的に禁止する法律はまだない

ところがこの国では既にジョブ型の・よ・う・な働き方を導入する大企業がある。

それはいったいどういうことなのだろう。

そもそもジョブ型には、働く側と使う側は対等でないという考えがあるため、そのバランスをとるための労働法がある。

けれど、今この国で起こっているのは、そのアメリカの組合が労働者のために作り上げたジョブ型を、力を持つ方の企業側が取り込もうとしている。

そもそもジョブ型は「人としての基本的な自由や権利」が尊重される働き方なはずだ。

それなのにジョブ型を取り入れようとするこの国では、今も入口で人を選別し続けている。



雇用差別禁止法がない現実

この国の雇用の入り口問題を追いかけていくと突き当たるのが「採用の自由」。 

これは労働契約締結の自由のことだけれど、これがあることで特定の思想などを理由に人を採用しなくてもそれは違法にならない。

わからなくもない。ちゃんとした人を採用したい。けれど実はこれが雇用の入り口をブラックボックス化する。

それを企業側から説明すると、雇用の入り口で人を差別することを禁止するのは、「採用の自由」を制限するんだからね、といういい方になる。

だからわたしには、この国は労働法が働く人を守り切れず、企業が強い社会に見えて仕方ない。今でも個人の力では変えることのできない属性を求め、個人が職を手に入れる平等な機会を奪うことが普通にあるのだから。


平等な機会を奪う

日本には雇用差別禁止法もないし、法律が企業の肩をもつけれど、ただ厚生労働省の労働施策総合推進法では、募集・採用にあたって年齢制限を付けることを禁止している。

ところが、50代半ばで転職活動をしたわたしは驚いた。カナダの知人にカナダでは子育てが終わった女性が復職すると教えてもらい、これまでは自分の職の捜し方が悪かったのではないかと思っての就活だった。

ところが、数カ所のハローワークでわたしは年齢差別をされている。募集要項をみると自分のキャリアにぴったり。だからカウンターで希望の会社の面接を希望するのだけれど断られる。その会社が求めるのは30代だからというのがその理由だ。

ところが、思い出してほしい。

その年齢制限を付けることを禁止する厚生労働省が定めたものだ。それは中高年齢層にも均等な雇用の機会を与えるための省令。

そしてハローワークは、その厚生労働省の出先機関なのだ。

省令がまるで体をなしていない。


おわりに

個人の力では変えることのできない属性を求めることは企業側の差別である。入り口で差別をする、それは実に恐ろしいことだ。

もしもわたしの履歴書に性別も年齢もなければ、わたしは企業の面接を受けられたかもしれない。

もしも履歴書に性別も年齢も記載しなければ、子育て中の女性や、一度会社を辞めた女性や、子育てを終えた女性が自分のキャリアを無かったことにしなくてもすむかもしれない。

この国には「個人の尊厳」を大切にする欧米のような雇用差別禁止法がまだない。


参考図書・文献

『労働法』2015 浅倉むつ子・島田陽一・盛誠吾[著]有斐閣アルマ
『労働法入門』2016 水野勇一郎 岩波新書
『詳解 労働法』2021 東京大学出版会 水野勇一郎
「男女の雇用平等 ー法制の現状と課題」中窪裕也(一橋大学教)2020日本労働研究雑誌

つづく

※最後までお読みいただきありがとうございました。


※スタエフでもお話ししています。

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