「白湯が体にいい」っていってたわよ
母を美容院へ連れて行きたいと思いつつ動けなかった。そうしたら母の人相まで変わってきた。おおよそ全体に張りがない。ああああ、美容院に行かなきゃ、と思うことが都度ストレスだった。
けれど一昨日、思い切ってでかけることができた。
で、気のせいじゃなく、昨日から母が奇麗だ。母は朝から化粧をする。幾つになっても女性は髪が命笑。母がいつもよりきれいに見えるのは気のせいじゃない。よかった、よかった。
そして、もう一つのストレス。
それが白湯。
近頃忙しくて、母の好きな本を借りたり買ったりが出来ずにいた。で、ここ最近の母の情報収集の9割はテレビ。
あれは一月ほど前だっただろうか。
「鉄瓶で白湯を飲むと鉄分が摂れていいらしいわよ」
と母が言った。恐らく朝のNHKで紹介があったのだろう。めったに欲しいものを口にしない母が気に入った様子なのだ。これだけは買いに行かなきゃと思っていた。
けれど忙しすぎていけなかった。それもまたストレスだった。
その南部鐵器を本日無事購入した。
何とも美しい。1.2L入る。
それにしても重い。
蓋を開けると、中にしおりが入っていた。しかも志おりと書いてある。
900年も愛され続けた南部鐵器。こちらは手作りだそう。
そして、いきなり白湯なんて沸かしては駄目らしい。
まずは内側の錆び止めをする。
方法は、数回煎茶パックを煮出す。化学反応をおこさせる狙いがあるようだ。煎茶にはタンニンが含まれる。そのタンニンと鉄の反応で錆び止めになるのだという。
面白い。
それから、洗う時にスポンジも使っちゃいけない。これまた錆びの原因になるという。まあ、鉄だしね。
内側はこんな感じだ。
まだ使ってはいない。
忘れていたけれど、もっと大型の鉄瓶が実家にあったような。こんな時代遅れなもの、と思っていたのを思い出した。そんなものが実家には幾つもあったなぁと。
母は使っていたのだ。
白湯は家族でもう長い間毎朝飲んでいる。だから、これはきっとこれから我が家で大活躍することだろう。
ーーー
買い物に出たのは夕方。そしてあれやこれやと買い物を済ませ外に出たら大雨だった。まるで洪水のような雨だった。
暫く待ったけれど、やみそうもない。
仕方なく南部鉄瓶を右手に、大量の食品が詰まったリュックとエコバッグを下げて大雨の中を歩き出した。ここ数年で最も重たい荷物。それなのに、よりによって大雨だった。
明日の朝はまだ使えない。まずは、錆止めしなきゃ。
雨の中、ようやく連れ帰った大切な品。
それにしても美しい。
これはまさしく日本の美だと思う。
※最後までお読みいただきありがとうございました。
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