見出し画像

四股を踏んで強みの視点を得てきました。

インフルエンザの病み上がりにもかかわらず、先日2日間、トータル17時間、軟禁状態でケアマネ実務者研修に参加してきました。長い。長かった。病み上がりの老体じゃなくても長くてつらかった。休憩のたびに外へ出て、冷たい空気を吸い込んでは、「わたしはまだ生きている・・・」とつぶやき、スカートが膝上まであがるのも気にせずに四股をふんで(もちろん人目にふれないように気をつけて)乗り切りました。長時間の講義には、合間のストレッチは必須です。

画像1

ケアマネとして働く気なんてさらさらないにもかかわらず、5万もする研修費用を出してまで研修を受けて、とほほなきもちですが、学びと刺激をたくさんもらいました。
アセスメント自体は、看護師や保健師がおこなう《 看護過程 》の『介護保険バージョン』だなという印象ですが、看護師に欠けがちな『ストレングス』という視点がとても新鮮でした。

看護師は、基本、いまの症状や病気の状況がどうなっているのか、そして、そのままでは今後どんなことが起こりうるのかという「悪いこと」「これから状況が悪くならないためにどうしたらいいか」という視点で見ることが多い。

だから、「加齢に伴う筋力低下による転倒のリスク状態」みたいに、リスク視点で患者さんを見ることが、とっても多い。

だけど、ケアマネ実務者研修では、「ストレングス」つまり、強みもそのひとの持つ資源としてしっかり見ていくことがたいせつなのだ、と。

「住み慣れたこの町で、この家で、お父さんといっしょに暮らしたい」
「近所に住むともだちの○○さんとまた、公園に散歩しに行きたい」
そんな気持ちは《 意欲 》であり、そんな《 意欲 》は痛いリハビリを乗り越えるためのおおきな力となる。それはとても、たいせつな強みであるという考えなのだ。

そう考えると、ふと、あるおばあちゃんが浮かんできた。

入居して間もないおばあちゃんは、夫の住む家や娘のはたらく場所へ会いに行こうといっしょうけんめい出口を探して歩くのだ。最初の頃は出入り口がひとつしかないと感じ、その扉を一生懸命見ては、車が通る度に近づいていって、「ここを開けて」と透明なガラスでできている扉の向こうを通るひとに話しかけていた。

職員も、最初のころはほんとうは杖歩行のはずのおばあちゃんが杖を持って、ええと、杖を、ぶら下げて持ち歩くおばあちゃんが転んではいけないとドキドキしながら見守っていた。

せっかくこんなふうに歩けているのに、転んでしまっては困る。せっかく元気で歩けているのに、転んでしまったら、そして、骨折でもして、そして手術なんてすることになってしまったら、一気に認知症はすすむだろうし、元気ももちろんなくなってしまうかもしれない。
《 高齢者が転倒する 》ということは、それくらい一気に状況を悪化させる可能性があるものだ。

だから、最初はみんな、なんとかなだめてソファに座らせていた。

画像2

しかし、それから次第に、介護職員がひとり、見守りとしてついて歩くようになった。

そのひとのために配置されたわけではなく、見守りの人数を増やすためにつくられたある時間の役割だった。
だけど、ある時期から、ひたすらそのおばあちゃんと一緒に歩くようになった。

そして、そのおばあちゃんは、今度は、施設中を出られる扉はなかろうか、と歩きまわるようになった。

あるときは、杖に荷物をふろしきで包んだものをぶらさげて、その隣に背の高い職員がついてまわる姿は、さながら鬼退治にむかうおばあちゃんとその弟子のようだった。

ときどき、「はぁはぁ」言っていることもあり、そういうときには廊下やフロアにあるソファへ誘導して休憩したり。職員のほうが疲れてしまって「もう休もうよ」というが、「あんたは休んでいていいよ」と、かまわずすたこらさっさと歩いていくのだ。

当初、「認知症の症状」「問題行動」として見られていたこのおばあちゃんの《 歩く 》行動が、そのおばあちゃんのそのままの行動を受け止めた職員のおかげで、《 おばあちゃんの個性 》となり、《 生活リハビリ 》となった。

おなじようなことが、先日読んだこの本にも書かれていた。

画像3

『症状がそのひとの《 個性 》になる』

最初のころ、出口をもとめてひたすら歩く様子は、職員からすると「帰りたいがための行動」に見えていて、制止するのもせつなくてつらいけれど、とにかく『なんとか対応しなければいけない症状』に見えていた。

見守ると決めたのは、介護職員さんだ。

ときどきしか接しない看護職のわたしは、ソファに座らせないと、とおもっていたけれど、「見守ってるからいいですよ」と言われた。
そうして、見守ったりつきそったりしているうちに、『なんとかしなければいけない症状』は、『個性』『リハビリ』になったのだ。

リハビリなんて、誘ってもなかなかしてもらえないことのほうが多いのに、進んで歩き回って、足の筋力を鍛えてくれるなんて最高じゃなかろうか!

結局、症状をどうみるかはそれに関わる職員におおきく関わっている。ケアマネの研修を経て、症状でめいわくなもののように見えるものを、どうやってそのひとの個性であり、強みに変えていくかという視点を身につけていきたいとおもったのだった。

画像4


いつもありがとうございます! いただいたお気持ちをパワーに変えて、どんどんまわしていきます!