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「あなたがしてくれなくても」は器用で賢い夫婦の仲を、場当たり的で不器用な夫婦が壊すお話

ちょっとひねくれすぎた見方ですが、結果そうなってしまいました。
うーん、納得いかん。でも、ドラマの終点としてはありだし、予想のつく着地点でしたね。
しかし、このドラマ、周りで見ていると言う人は少なかった。
「あれ見てる?」
「どれ?」(友人)
「アナ〇でしてくれなくても」
「そりゃ、しないべ(笑)」
こんなやりとりを繰り返しても、見てる人が見つからず(そんなに親しくない人が見てたりしたが、関係の薄い人と話したいドラマじゃない)。
ぶつくさ言える相手もおらず、こうやって文章書いてます。
みんな見てないというわりには、TVerは回りまくりのようです。
見てても見てると言いづらいドラマなのか?
Hと思われるとかじゃなくて(そんなにHじゃないし。そこは期待外れ)、こんな昼ドラみたいなのを見ているのが恥ずかしいと、いい大人は言えないのでしょう。
とくに会社とかでは。
K-POPとかと一緒。ほんとはみんな結構聞いたりしている。
ということで、キャラクターにいちいちいちゃもんをつけていきます。

①楓(田中みな実)
最終回、唯一泣いたシーンは、楓と新名(がんちゃん)のお別れシーン。
楓は元旦那に「”また”はあるの?」と未練もにじませながら、しかし、今後は「戦友」でと、自ら二人の間に線引きします。
とことん自分発信の女です。それがわがままにも見えてしまいますが、ほんとにさっぱりしていて、人がいい。
この切り替えの早さは仕事のしすぎがもたらしたものかも。仕事は大小の判断の連続なので。
しかし、目の前でほかの女(自分の家庭を壊した女)に愛の告白をした元旦那を「かっこよかった」と言える楓はほんとにいい女。
ちょっと振り切れすぎです。
がんちゃんと田中みな実ですが、二人のやりとりが結構な確率でかみ合わず、必要以上にぎこちない(これは演出ではなくて、たぶん偶然の産物)。
これが距離ができてしまった、妙に都会的な夫婦の雰囲気を作り上げていて、おかしな説得力があった(うーん、プラスチックラブ)。

これがダメだったら、ハイ次!と頑張る(ハイファッションの雑誌から育児雑誌に異動しても前向き)姿を見ていると、こいつ絶対に地方出身だなと勘ぐってしまいます。
根性がどっか浪花節。
東京生まれ東京育ちの女だったら、「おまえたちだけ幸せにしてなるものか」と離婚を拒み、仮面夫婦へとまっしぐらだったのではないかと思います。
そーゆーところ、首都圏の金持ちはウェットなので。世間体もあるし。そして、育児雑誌への異動で退職・・・みたいなコースを進みそう。
地方のそこそこ金持ちの家に生まれ、勉強を頑張り、有名大学進学とともに上京。
憧れの職業に就き、見た目も性格もいい彼氏(のちに旦那)をゲットし、今回の離婚騒動まで無敵だった・・・楓はそんな女だったのではと勝手に想像しました。
しかも、地方出身だから、どこか最後の最後で人が良い。とり合いになった駒を人に譲ってしまう。
それゆえに幸せになれないのだから、東京はほんとに無情なコンクリートジャングルです。

楓は、メインの四人のなかで唯一「浮気」に縁のない人です。
まったくおイタをしてないのに、一番しっぺ返しをくらうというとんでもない役どころですね。
しかし、四人の中でもっとも家庭(配偶者)を蔑ろにもしています。仕事を言い訳にして。
これってどうなんでしょうね。
仕事に走るか、浮気に走るか。そばにいる人間として、どっちが耐えられないか。
それは人によるでしょうが、大半のひとは浮気のほうが許せないのではないでしょうか。
楓夫婦は裕福なので、お金の問題はまったく表現されてませんでしたが、仕事にしゃかりきなら、家庭にお金ももたらすわけですしね。
反面、浮気はロスしかない。
楓は忙しさにかまけてはいましたが、入院した姑に雑誌を差し入れるなど、良き嫁でもありました。
あれを見てて、「できた嫁じゃん。がんちゃんも高校生みたくセックス、セックス言ってんなよ~」と思った人も多かったに違いない。

楓はほんとの頭が良くて、自分も夫も、そして二人の相性とか今後もきっちり分析、考えたうえで別れを選びます(答えを出したら動きも早い)。
「あの旦那は私には優しすぎた」と言って。
優しくされたら、これでいいのかと仕事に突っ走ってしまった。
その過失を認めつつも、そんな自分を変えるつもりはない、変わらないだろうとわかっているのでしょう。
悪いとは思いつつ、仕方なかった、後悔はないと思っているのかも。
このあたりをこねくり回さずに(いつまでもいじいじいじくりまわす人のが多い)、人のせいにせず(みちを訴えることもできた)、前に進む力はすごい。
男前豆腐。

②新名(がんちゃん)
自分がほんとに求める女性、自分と合う女性がちゃんとわかってなかったのが、スマートでやさしいがんちゃん。
がんちゃんは実はみちのような献身的な女性を求めているのに、男をサポーターのように扱ってしまう楓のような女性と結婚してしまう。
それはどうしてか?
自分の両親の関係に嫌悪感があるから、という考察であっているのかな?

母親(大塚寧々)は父親に献身的で、父親はそれを当たり前としているような家庭で、がんちゃんはそれに嫌悪感を抱いています(父親に反発)。
しかし、がんちゃんの心の奥底で求めている女性は、母のような妻。
それを認めたくないのか、母とは真逆の働く女を選んで、失敗してしまいます。

母が死んだときの父の様子で、両親の夫婦愛を確認したがんちゃんでしたが、このあたりのセルフイメージのずれを修正し、新たなパートナー探しができるか。
こーゆーずれって修正しがたいから、難しいでしょうね。

③みち(奈緒)
みちがあざといとかいらつくといった意見があるようですが、みちはごくごく平均的な女性。
あれぐらいキレが悪いのが普通です(楓とかキレキレすぎる)。
その尿もれ感が視聴者をいらつかせたのでしょう。なんとなく、じっとりしてて湿度高いし。
奈緒はさばさばからしっとりまでうまいですね。

みちを見てて思ったのが、おとなしそうに見えて、結構直情的。抑えてるようで、結局走っちゃうし、場当たり的です。
だから、最後、元旦那に戻ってしまった。
「そこに愛があっても!」と大騒ぎして別れ、「ここに愛がありますから!」と元さやに戻る。ザ・感情の赴くまま。
優しさもあり常識的ですが、理性的とはいえない。
だから、一番の問題となった「子供どうする問題」が解決しないまま、元さや突入。
瑛太は離婚した姉の甥っ子をかわいがりはじめ(それにしても影絵って・・・癖強な甥っ子)、将来子供をつくるのか・・・みたいな含みももたせましたが、たぶんあのザ・ピーターパン症候群みたいな男は、最後の最後には子供をもつことを拒否するに違いない。
でも、あーゆー変わった父親の元に生まれても、子供が苦労したり(父親が理解できなかったりする。嫁でも理解できないんだから)、嫁が子育てを二倍頑張ることになるので、それはそれでいいと思う。

子供問題が流れても(嫁の年齢的に無理となって曖昧なまま流しそう)、他にも問題は出てきます。
こういった夫婦は五年とか十年に一度は別れる別れないの悶着を起こし、その都度戸籍を汚したり汚さなかったりして、結局は元さや。
「よっぽどあっちの相性がいいのね」と実態とは真逆なことを陰で言われたりして、周囲に話題を提供し続けるのでしょう。
あれ?なんかいい夫婦じゃん。本人たちはしんどいだろうが、周りから見てるとドラマティックでおもしろい。

一度はすべて失うとか思ってみちですが、旦那は取り戻すし、キャリアへの道は手に入れるし、ちゃっかりしすぎです。
悪意がなくても人騒がせな女。
結果論ですが、こーゆータイプが幸せになると、ちょっともやっとはしてしまいます(楓とかどないすんねん)。

④吉野(瑛太)
みちがあまりにも楓にへこへこするので(キャリアに差があるにしても、旦那にちょっかいをかけたにしても、ちょっと卑屈すぎ)、相関図で改めて年齢を確認したら、みち32歳、楓36歳でした。
思ってたよりも離れてたんですね。
新名も36、吉野が37。これを見ると、物語の見方もまた変わってきます。
男、37、性欲バリバリとはいかなくても(個人差あるが)、この年なら性欲バリぐらいはあるでしょう(だから外の女にはふらっとした)。
でも、新鮮味のない嫁とのセックスを定期的に求めるかといえば・・・ないでしょうね。

嫁、みちが32、旦那、吉野が37、この年齢差も付き合ったり結婚したりするにはまったく障害になりませんが(男が年上だし)、セックスを考えると問題になるのかも。
嫁が大好きで嫁を抱きまくる37も珍しくないですが、それは一部。
たいていの37♂は、欲求的には一段落しています。
他方、32♀は、セックスが楽しくなってくる頃。
それに、37はセックスは愛のしるしと思ってなくても、32なら、まだそんな考えも持っていそう。
こういった感覚的なずれは相手に気持ちがあっても、なかなか修正できそうもありません。
でも、同い年夫婦の新名家も壊れたので、年齢差は関係ないのか。

結婚どころか、付き合っても一年も経てばレスになっていてもまったく珍しくない日本で、このテーマがなぜこんなに受けたのか。
みんなレスを自然に受け入れていると思っていたのですが、そうでもないみたいですね。
外で器用に遊べる人はいいけど、Hは配偶者とだけ!という真っ当な人ほど悩んでしまうという、謎のループが発生するのがこの問題。
結婚前に契約書を作るなんてことも一部ではやっているようですが、この問題は必ず織り込んだほうがよさそうです。

⑤華(武田玲奈)
このドラマで最も賢く大人なふるまいができたのが、華ちゃん。
しっかりしすぎです。
まだ結婚を焦る年でもないし、かっこいい上司と不倫もいいかもなあという感じで新名に目をつけますが、先輩、みちとねんごろとわかると、即みちのサポートに回ります。
「あ、私じゃなかったんだ。ま、いっか、私がほんとにほしいのは結婚できる彼氏だし」
このへんの切り替えが早かった。
「なんで先輩なのよ」と意地悪や邪魔をするわけではなく、合コンに励みながら、みちをサポートします。

しかも、みちのみならず、吉野や新名のサポートまで。
「おもしろいからかき回しちゃおう。新名さんには振られたし」などという薄汚い根性は持たず、必要な橋渡しやサポートを的確にやってのけます。
パワーが空回りして、若い時はなんでもかんでも妬みがち、余計なことをしがち。
しかし、華ちゃんにはそんな愚かさがありません。

華って相関図で確認すると、まだ23歳なんです。それなのに大人すぎる。
このドラマの最も賢い人は華ちゃんだったと思います。

⑥まとめ
このドラマ、見るつもりなかったけど(テーマにもキャストにも惹かれなかった)、昼顔のスタッフが作るということで見たのです。
たしかに演出は抜群にうまかった(素人が見ても)。
ドラマは脚本、キャスト、演出で決まると思っているのですが(素人論)、このドラマ、脚本(原作がいまいちなの?脚色がいまいちなの?)とキャストはいまいち(個人的には。これは好みの問題)。
でも、ありがちなキャラにありがちな展開なのに、見続けるほどの牽引力はあるものになってました。
どんな材料でも、長所・短所をつかんで料理(演出)する上手さはすごいですね。これぞクリエイティブ力。
でも、この「ありがち」を多く含むために、見てるほうには想像がつきやすく、入り込みやすかったのかもしれません(最近の視聴者は”共感”を最重要視するので)。

昼顔とあなして(この略し方、どうなんだろう。穴して?)、この二つのドラマ、下世話さとか平凡さとかではどちらも変わりません。予想のつく展開とか。
そんなに時流に乗ったものでもない。
でも、クオリティには結構差が出ている。その一番大きな点は、やはり脚本だと思います。
構成や展開ではなく、台詞やモノローグの力が全く違います。昼顔はすごかった。
だから、何度も再放送されたり、映画化までされたのでしょう。
映画はいまいちでしたが(そりゃあドラマには劣る)、ハンドルを握る正妻が「どうして私(正妻)じゃダメなの?どうしてあの人(愛人、彩ちゃん)なの?」とか言いながら(そんな感じじゃなかったっけ?)事故を起こすシーンは見ごたえがあった(助手席の旦那は死亡)。
正妻の思いがひとことにすべて詰まってますね。えぐみのある濃縮果汁還元。
あれぐらい闘争心のあるキャラが、やはり一人は必要だったのかもしれません。

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