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227冊目:アルテ/大久保圭

こんばんは、Umenogummiです。


2021年になりましたね。
今年もこつこつおすすめの作品を紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。



今日は男社会に抗い、女性の自立を描いた作品です。



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アルテ/大久保圭 作





あらすじ



16世紀初頭、フィレンツェの貴族家に生まれたアルテは、幼いころから絵を描くことが大好き。淑女の嗜みとして習わせていたほかのことには死んだ魚のような目になって取り組んでいましたが、絵のレッスンは目を輝かせて積極的に学んでいました。

しかし父親が死に、大した持参金は持たせられないものの良い家柄に嫁いでほしいと願い母と、男性の庇護下で生きることを良しとせず自由に生きたいアルテは対立。
アルテは職人になるために画家工房への弟子入りを志願しますが、当時の画家工房は完全なる男社会で、工房に売り込みますが女性というだけで断られることが続いてしまいます。


しかし唯一、レオという変わり者の親方がアルテの絵を見、なぜ職人になりたいのかとアルテに問います。さらにレオはテンペラ画(卵と顔料を混ぜた絵の具で描いた技法。いったん乾燥すれば色が変わらないのが特徴)の画板20枚の下準備を一晩で終わらせるという課題を出します。

職人でも一人でこなすことが難しいとされる課題を、アルテは苦労しながらも終わらせます。そしてアルテはレオに「自分自身の力で生きられる道を目指したい」と語ります。レオはそんなアルテに、貧困にあえぎ、「泥水をすすることなく、まっとうに自分自身の力で生きられるようになる」ために工房に弟子入り志願した、かつての自分を重ねます。


アルテは無事にレオの弟子となり、厳しい道を自ら選択し、歩んでいくことになります。




感想


「女性の幸せは良い家に嫁ぐこと」が普通であった時代、アルテは貴族の娘という自分の立場に満足せず(むしろ不自由さに不満を覚えている)、自分の力で生きていこうとする強い女性です。

レオは女性ということに偏見を持たず、アルテを一人の人間として対等に接してくれるいい親方です。気難しい面はありますが、厳しく、時にやさしくアルテを指導します。


アルテの理想の女性像として登場する高級娼婦(コルティジャーナ)のヴェロニカは、女性がこの時代一人で生きていくことの難しさを説き、ふたりは良き理解者、良き友人となっていきます。


初めは「貴族」「女性」ということで様々な人たちから相手にされなかったり、嫉妬されたりするアルテ。しかし、持ち前の情熱と努力、負けん気、そして社会への怒りを糧に行動するアルテの姿に、レオ、ヴェロニカをはじめとする、彼女を認める人間が一人、また一人と増えていきます。

後先考えない無鉄砲な面もありますが、どうなるかわからない未来、人の選んだ道で後悔するより、自分の選んだ道で後悔したいという、当時としてはかなり前衛的な考え方を持つアルテはとても格好良いです。




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