89冊目:地球へ…/竹宮惠子

こんばんは、Umenogummiです。

今日はSF少女マンガの傑作です。


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地球へ…/竹宮惠子 作


スーパーコンピューターで生活の全てを統治されている遠い未来。
子供を教育する惑星アタクラシアで養父母と暮らす13歳のジョミー・マーキス・シンは、大人とされる14歳になる「目覚めの日」の数日前から不思議な夢をみていました。

そして目覚めの日当日、成人検査のさなか不適格者として処分されそうになったジョミーは、夢の中で見た青年に助けられます。
彼はソルジャー・ブルーという、ミュウ(ESP(エスパー)能力を持つ、スーパーコンピューターから成人検査で不適格者とされた新人類)の代表でした。

ブルーは地球への想い、ミュウの人権を認めさせることへの強い気持ちを語り、ジョミーに後を託し寿命(ミュウの寿命は長い)で力尽きます。


一方、成人検査を無事に終えた14歳たちは「エデュケーショナルステーション」と呼ばれる教育課程へと移ります。地球へ渡るにふさわしい人間となるべく2年間勉強をするそうです。それには以下の背景があります。

かつて人類は文明の発展とともに、地球の生命力を奪ってきました。人類の存在が地球を枯渇させるという結論に達し、すべての人類に地球から撤退せよという命が下され、人類は宇宙空間に建設されたコロニーやステーションで新しい生活を始めます。
人が去った地球は、自らの力で生命力を取り戻してゆきます。そして100年後、高等教育を受けた人類が、再び地球の子どもとして地球へと帰ってきました。

子どもたちは洗脳ともいえるスーパーコンピューターの教育を受けます。
その筆頭のエリート、キース・アニアンがもう一人の主人公です。


地球へ還りたいというブルーの思いを受け継ぐミュウのリーダー・ジョミーと、秩序を守らんとする人間の代表として出世コースをひた走る・キース。
互いに相容れず、やがて人類対ミュウの激しい争いが繰り広げられます。



文庫版で全3巻という短さですが、ジョミーがミュウの代表となってからの30年余りの闘いが濃密に描かれています。

元は同じ人間であるはずなのに、醜く争い、愚かに憎み合うさまは、人間てどこまでも傍若無人なんだなと思わずいられません。互いに傷つき、傷つけられ、失い、憎み、ジョミーとキースが選ぶ結末には、深く考えさせられます。

この作品の初出は1977年、およそ40年前の作品ですが、まったく古くささはなく、それどころか今こうしている間にも、確実に地球の命は失われていっている今この時こそ読むべき作品ではないでしょうか。
人間が合理性や利便性、資本主義を貫いてきて、それが継続されるのであれば、本当に地球を捨てなければいけない時が来るのかもしれません。

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