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始まりは、霧の中で

去年の大晦日、一緒に住んでいる恋人が打ち上げ花火を買ってきた。
スロバキアでは新しい年が始まるとき、花火を打ち上げる。
年末からスーパーの一角や街中に花火の屋台が現れ、打ち上げ型の中型の花火がどんどん買われていく。スロバキアで最も花火が売れる時期だ。
12月30日ごろから、待ちきれない人々が夜になるとポン、ポンと打ち上げて、大晦日の23:50ごろから急激に増え、新年を迎える瞬間は最高潮になり、新年の訪れを告げる。
一体どれだけ多くの人々が花火を上げているのか、その轟音はしばらく続き、それから30分はあちこちで花火が続く。

打ち上げ花火を持って、彼と二人で近所の丘に行くことにした。
2.3メートル先も霞むような濃い霧が立ち込めている。
この霧で見えるのかなあ、と心配しながら花火に着火。頭上にわたしたちの花火が輝き、散る。丘に来ていた何人かの他の人たちからも歓声が上がった。
綺麗ね、私たちの花火!と、二人で喜んだ。
その直後、光は見えないけれど一斉に鳴り響く花火の音に、新年をむかえたことがわかる。
その音の大きさに圧倒されるような、これからの一年を少し不安にもなって、彼の手を握った。
今年も一緒にいよう、と手を握り返してくれる。


今年は大学院を(順調にいけば)修了するし、夏にはわたしの両親に会いにいくのもかねて日本旅行をする予定で、今借りているアパートも引っ越すことになるし、、。一度日本に帰国するか、スロバキアで住み続けるか…
どうなるかなんて、いつもわからないのだけど今年も本当にわからない。去年よりも。
この気持ちを、状況を表しているかのような霧だと思った。
霧の中でも信じて進み、私たちの花火のように希望を見出せるように。
目の前に見えていることと、手の中にある温もりを大事にしながら。
心の中でそう願って、家に帰った。

去年の終わりから始めたnote。
日々の中でいろいろ感じていても、一瞬で通り過ぎ他のことに移り変わっていってしまいます。
言葉を綴ること、思いを形にすることの楽しさ・喜びを知りました。
感想をくださったり、スキを送ってくださってありがとうございます。
今年ここで出会える皆さま、どうぞよろしくおねがいします。


スロバキアのシンボル、タトラ山の冬のハイキングで描いた一枚

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