指圧のこころと東洋哲学

梅村高史 1975年生まれ。 日本の指圧師。鍼灸師。 うめむら指圧院長 名古屋伝統指圧…

指圧のこころと東洋哲学

梅村高史 1975年生まれ。 日本の指圧師。鍼灸師。 うめむら指圧院長 名古屋伝統指圧普及会会長 ははのて指圧スクール代表

最近の記事

巡らない水〜水滞〜

“先生、最近胃がおかしいの。 歩くとチャポチャポと音がするんです。” と患者様。 確かめてみると東洋医学でいう “胃内停水(いないていすい)”の症状のようでした。 それは、水滞(すいたい)という現象の一つで、 胃の機能が失調し、内容物を腸に送り出すことができず、胃の中で水分や空気が貯溜してしまうことをそう呼びます。 その患者様は、頭痛、食欲不振、胃の不快感、腰の重だるさ、心の不安も抱えていました。 私は次のことを患者様にお願いしました。 適切な水分摂取(摂りすぎ

    • 有酸素の世界 無酸素の世界

      私達が体を動かす時。 その用途に応じてエネルギー生成の方法が異なるのをご存知でしょうか。 今回のテーマは “有酸素の世界、無酸素の世界” よろしければお付き合い下さい。 さて、 例えば、ヨガをする時。 ヨガをされる方は、呼吸をとても大切にします。 息を吸うのは交感神経支配。 息を吐くのは副交感神経支配。 そんな自律神経の法則を見事に使い分け、筋肉を伸びやかにしたり、筋緊張を保持させたりします。 そう、ヨガをしている時は持続力を発揮する、言わば有酸素の世界です。

      • ばあちゃんの畑と最先端医療

        ジブリ作品「となりのトトロ」にはこんなシーンがあります。 「おばあちゃんの畑って宝の山みたいね」 「そうかい、お天道さんいっぱい浴びてっから身体にもいいんだ」 「おかあさんの病気にも?」 「もちろんさ、ばあちゃんの畑のもん食べればすぐ元気になっちゃうよ」 私はこれを見る度にハッとさせられます。 これって基本中の基本だよなあ、と。 といいますのは、 サツキのおかあさんは病院で最先端の医療を受けているはずなのです。 こんな病気が疑われるからこんな検査をしましょう。こんな

        • ははのて指圧スクール2期生説明会を終えて

          指圧スクール説明会にご参加頂きました方、ありがとうございました。 お近くからいらっしゃる方が多いのかなと思いきや市外、県外の方がほとんどだったことにまず驚きました。 参加者様は皆、鍼灸マッサージ師やそれを目指している方で、ここへきて人に触れることの大切さを痛感され、これはなんとかしなければ、という共通の思いをお持ちのようでした。 皆様の生のお声をお聞きできたことに感謝しています。 そして、現在、おかげさまで1期生さんに引き続き2期生さんも決まり、すでに授業がスタートし

          目には見えないもの

          大正時代や昭和初期の古い指圧の本を読むと、“霊”という文字がたくさん出てきます。 “霊力”をもっておこなう、とか。 “霊感”を発揮して、とか。 “霊療術”とか。 そういえば、レイキヒーリングのレイキも、“霊氣”と書きますね。 “霊”というとなんだか怪しい感じがします。 でも、これらを読み進めていくと、 “目には見えないけれど大切なもの” という意味でこの文字が使われていることがわかってきます。 陰は見えていない根っこの部分。 陽は見えている枝葉の部分。 これを踏

          バセドウ病

          “更年期症状だと思っていたら実は、、、” そう、今回はバセドウ病についてです。 よろしければお付き合いください。 当院の問診票に「甲状腺機能亢進症」という文字を時々見かけます。 「バセドウですか?」と訊ねると、 そうです、と患者様。 貴重な情報です。 まずは教えて頂けたことに感謝です。 そして、私は伝えます。 大変でしたね、大丈夫ですよ。 どうか気を楽に指圧をお楽しみください、と。 バセドウ病は、20代〜40代の女性に多いと言われています。 ですが、男性の方も

          指圧私塾 第三回

          7月に福田真奈美先生とともに指圧の講習&体験会を行います。 会場は名古屋、うめむら指圧です。 うめむら指圧は、私が普段一人で治療を行っているマット一つ、ベッド一つのミニマムな空間です。 その限られた空間ならではの互いの距離感、アットホームな空気感を感じて頂けたらと思います。 そして、どの参加者様におかれましても臆せず気になったことを発言したり、質問したりしやすい雰囲気を作ること。 その場にいる全員で一つの物語をつくっていくような心あたたかな会にすること。 そんなコ

          これからの治療院論

          これから求められる治療院とは。 一つ言えるのは、治療は治りさえすればいいというものではなくなるだろうということです。 もちろん、これは一つの考え方であり、 すべてではありません。 でも、これが今の私がひっそりと考えている本当のこと。日々、治療をしていてひしひしと感じていることです。 よろしければお付き合いください。 さて、 利用者は、結果よりもむしろどんな人にどんなふうに治療され、どんな気持ちになるのかに意識を向けるようになっていきます。 昔は、レストランでも美

          実家にある2つの穴

          「これはタカシ(私)があけた穴。 あれはコウジ(私の弟)があけた穴。」 家族で実家に行った時のこと。 私の母が娘に何やら話していました。 よくよく聞いてみると、穴とはつまり私達兄弟が中学生だった頃に開けてしまった壁の穴のこと。 当時は反抗期真っ盛り。 若さゆえの行き場のない気持ちをそのままに、勢いあまってできたもので、それを母は楽しそうに娘に説明していたのです。 「あなたのパパにもこんな頃があったのよ。 男の子の成長期ってこういうものなんだね。」 母はその壁をあえ

          ふれる体温 はかる体温

          先日、娘(8歳)がインフルエンザになりました。 その時のこと。 「熱を測ってごらん、おそらく38.7°ってとこかな」と私。 しばらくすると表示が出る。 「本当だ。ピッタリ当たってる」と娘。 抱っこした時の感覚、手足、おでこに触れた時の感覚でにだいたいの体温がわかるのです。 きっとこれは私だけでなく、小さなお子様といつも接している人であれば誰しも持ち合わせている感覚ではないでしょうか。 私の場合は以前、妻が出産後体調を崩し、生まれたばかりの娘と私との二人暮らしの時間が

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          腰がつらいと嘆くあなたへ

          辛いお気持ちわかります。 私も同じでしたから。 あなたは歩けないほど腰が痛くなった。 でも、だからこそ会社を休んででもここへ来れたのです。 つまり、あなたは腰に助けられた。 もしも腰がまだ何も言わずに黙っていたのなら。 あなたはさらに無理を続けていたことでしょう。 これも何かのご縁です。 私の話をふーん、そんな考えもあるのかね、というくらいで聞いて頂けたら幸いです。 よろしければお付き合い下さい。 “この悪い腰さえなければ”と嘆くあなたへ。 お伝えしたいのは、

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          陰を補う〜がんばれよりリラックス〜

          私はこの言葉に深い親しみを抱いてやみません。 今回は「陰を補う」について。 よろしければお付き合いください。 さて、 現代医学では、検査をし異常とあればその処置をします。その際に行われるのはおおよそ次のうちのどちらかです。 要るものを足す(プラスする) 要らないものを引く(マイナスする) 例えば、 前者は、糖尿病のインスリン投与であったり、炎症時のステロイドであったり。 後者は、ウィルスや菌の除去であったり、膝の水を抜くであったり。悪性腫瘍を手術で切除したりもそれ

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