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『舟に棲む』 つげ忠男

世の中には兄も偉けりゃ弟も偉いという「スゴイ兄弟」がままあります。

スポーツなんか特に多いですね、兄弟して横綱とか、ボクシングのチャンピオンとか、マラソンやスキーのオリンピック選手だとか。

マンガも例外ではないのです。てつや・あきお両先生の千葉兄弟(原作の七三太郎先生も)などは特に有名ですが。

この作者、つげ忠男先生は『ねじ式』『紅い花』で世のマンガキッズたちの頭を必ず一度は狂わせる(と私に言われている)あの、つげ義春先生の弟君です。

無題140

当方も例にもれず兄者・義春先生を先に知りました。たいへん変わった作風なのでその弟さんもマンガ家と知った時は「兄貴と比べられて大変だなろうなあ」と思いつつページをめくったのですが…。

弟のほうが更にどうかしていました。

当方が最初に読んだのは『無頼平野』。これはもうお兄様の言葉を借りれば「夢もチボーもない」スレッカラシの死にたがりばかりが出てくるマンガ。絵も迫力とかスピード感とかいうより一種のなげやりというかwヤケのヤンパチ感が漂っています。原稿の裏に「どうでもいいやないか…」と描いてあるんじゃないのかwと思うくらい。
初期作品は特にものすごい「毒の威力」に圧倒されます。

それが『舟に棲む』くらいになると…一転して穏やかな…お兄さんそっくりの絵柄になっているんですね。いったい忠男先生の頭の中はどうなっているのか、実に不思議ですwで、兄の絵に似ていたら内容はやっぱり比較されるのではないかと思うと、似ているようでこれが全然違うのです。
そのへん、読んで味わって頂くほうが説明するより早いんですがw。

…どうでもいいですがつげ義春先生『もっきり屋の少女』と井伏鱒二『言葉について』を合わせて読むと面白いのですが、『舟に棲む』を読むと山本周五郎作品が読みたくなるのは当方だけでしょうか。

渋い。

そして汗の描き方が兄弟一緒だ…(^^)

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