前が何だったのか忘れている

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地元に帰ると、街並みが変わっていて
「ここに店がある」「ああ、マンションだ」と
目新しさを感じる
ただ、前が何だったのか忘れている

ずっと地元に住む母へ訊いても、忘れており
結局、弟や友達に訊くこととなる
「あれ、一軒家じゃなかった?」
「田んぼだったよね」
見慣れていたはずが記憶にない

教えてもらいながら、中島みゆきさんの
「地上の星」が浮かんできた

地上に住む生き物の大半は
無くなった家屋や田んぼのように
ひっそりと命が消えていく

ほんの一部に存在が残せたら、贅沢なぐらい
あっさりと人知れぬ「無限の世界」へ旅立つ

生き物や建立物などは「有限のいのち」
ノーベル賞で表彰され、世界遺産に登録されても
先は名前や功績以外、遺る保障がない

電話しながら、夜空を見上げた
消滅したであろう星から、安らぐ光を受ける
遠い遠い場所から届いた「ひかり」
雲で見えずとも、確実に地球へ来た「ひかり」

時間の中で存在したものは「ひかり」のように
せめて次世代へ些細なことでも
安寧の生活を送る重要性を示し繋ぎ
「無限の世界」へ旅立ちたいものだ