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暴君

兄がいる。
暴君という呼び名がこれほどふさわしい人は居ないと私は思っている。

機嫌が損なわれると、様々な暴力に出る。
八つ当たり、物を壊す。人に怒鳴る。手が出る、足が出る、物が飛ぶ。
それを両親は許しているようだった。

かわいそうなのは、下の兄。暴君の兄を持つ弟だ。
成績さえ良ければ、父の暴力の対象にはならない事を兄弟たちは知っていた。
下の兄が勉強机に叩きつけられ、ノートに血を流しながら宿題を両親に見られているのを見るのが本当に辛かった。
父も母も、解答が正解ではないというだけで、殴りつけて居た。
兄は私に「勉強ができないからだ、アホや」と笑った。
何も笑えるような事はない。
私のトラウマの一つだ。

今ではこの暴君も、一介の社会人としてやっている。
外面だけはいいので、マナーや人からどう見えるのか、異常に神経を使って居る。
思い出せば、昔から自分の事が大好きな人だった。

あの暴君にだけは会いたくない。
そして、死を願わずにはいられない。
もし彼の体が動かなくなった時、私は間違いなく復習に出るだろう。

いじめる方は、自分がいじめていた事をすぐ忘れてしまうが、いじめられた方は、昔の出来事ではない。
精神をその時間に置き去りにされてしまっているのだ。
改めて、人として兄を尊敬できるかと問われれば、どんな社会的地位を持っていようと、お互い大人になった今も昔と同じくマウンティングしてくる兄を全く尊敬できないし、兄嫁を殴るところを見て居る限り、暴君でしかないと思う。

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